15 奇跡に触れて
「これさあ、さすがに急いで来過ぎたかなあ」
ユリシーズが呟く。目の前には巨大な女神像。それは立像だった。羽を有し、足元にはサンダル。腕は青銅を思わせる色をしている。ダンジョンの入り口にあった女神像をそっくりそのまま大きくしたような姿だった。。その姿はこれまでのようなどこか欠けた姿ではない。
「もっといろんなとこ探索して、アイテムとかしっかり充実させてから来るべきだったのかも。これさあ、全身がしっかりあるってことはだよ。それも、羽があるってことは……」
ユリシーズが全部言い終わる前に、女神像がずずっと動き始める。
目を開けた女神像は、すぐにこちらを見てきた。
「石化、最初からー!」
その目が怪しく光っている。
「効いてる効いてる!」
ユリシーズ達は盾の効果のおかげで石化を免れる。
「……これ、盾ひとつしかないから、全員一斉に動く必要があるよね」
フーゴが盾を持ち、その盾の陰に収まるようにユリシーズとケントは身を屈めている。
「飛んだ!」
女神像がその巨体を浮かせた。一旦真上に飛んだ後、ぐん、とこちらに向かって滑空してくる。
「やばやばやば!」
三人は走ってその追撃を避ける。
「めちゃくちゃ怖い!」
ダン! ダン! と女神の拳が上から降ってくる。それを三人は走って必死に避ける。
フーゴが片手に構えた剣を振る。しかし、片手では強い攻撃が繰り出せないのか、女神像に剣が掠めても大した傷も入らない。
三人が逃げ惑う中、さらに動く影が現れた。女神像の髪から蛇が出てくるのはもちろん、羽の陰から女の顔をした半人半鳥の怪物が現れる。
「あれ、ハーピーって言うんだっけ⁉」
ユリシーズは半ば怒り混じりに言う。いちいち相手をしていられない、とユリシーズはアイテムを取り出す。
「挑発のカップ!」
まずは魔物を一斉に引き付ける。その上で、巻物を読んだ。
「猛き風よ、わが敵を打ち払い給え。唸れ、爆風!」
蛇やハーピーはそれで退けられたが、女神像は大して効いてもいないのか、相も変わらず猛然と向かってくる。
ケントはクロスボウで女神像を狙う。がつっと矢が女神の体に刺さる。
「石でも貫くって言ってたっけ」
「大して効いてないみたいですけどね」
女神は矢が刺さったことなどお構いなしに動いている。
「どこか、弱点になりそうなところに当たればいいんだけど……」
そうこうしている内に、また蛇とハーピーが現れて多数溜まりだす。
「これ、あんまり使いたくないんだけど……」
ユリシーズは二人にごめんと言いながら、巻物を取り出す。そしてケントに頼んでなるべく遠くへと投げてもらう。
巻物が床に落ちて、その上を蛇が通る。瞬間、爆音爆風が巻き起こり、強烈な火と熱が辺りに満ちる。
「うわああああ!」
こうなるとわかっていながら、ユリシーズは思わず声を上げた。三人は盾の陰に隠れて、爆熱をやり過ごす。
「この盾、すごいな!」
盾はしっかりと爆熱を防いでくれた。
爆熱が収まった。盾の陰からそっと身を乗り出す。焦土と化した中、女神像はまだしっかりとそこに立っていた。
「強すぎんでしょ……」
ユリシーズは呆れ混じりに呟いた。
再び、女神像が動き出す。その静から動へと移る一瞬の隙を突いて、ケントは女神像の目を射抜いた。
女神像の口から、異音混じりの叫び声が放たれる。
「効いたーーー!」
初めて有効な攻撃が通り、ユリシーズは歓喜の声を上げる。
「俺も一太刀入れたい!」
フーゴが叫ぶ。しかし、盾を構えていてはそれも難しかった。




