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「通路がカーブを描いていて、元に戻ってくるってことは円形の形になってるんでしょう」
「でも、なんか下に向かって下がっていってたのに元に戻るって普通じゃないよね?」
「あと、カーブしてる方向も途中で変わって見えてた」
「……魔法がかかってるんなら、理屈で考えてもしょうがないのでは」
「……」
みんなが論議する中、ケントが指摘すると妙な沈黙が生まれてしまった。
「いや、本当そうだよな。この現象の理屈を考えるんじゃなくて、この状況を打破する方法を考えなきゃなんだ」
ユリシーズがそう言うと、みんながああと納得し、思考を変える。
「壁とかにヒントがないか見ていこう」
一行は壁の模様などを観察しながらまた歩き出す。
「これ、実際に曲がってる方向に沿ってる模様じゃないんだ。壁とか天井の模様が実際の方向とは違う方向にねじれてる」
「こうやって目をだましてくるのね」
ユリシーズがダンジョンを歩く人の方向感覚を狂わせる原理を見つける。
「……でも、これは関係ないよね」
「ギミック自体が見つけづらく隠されてるとか?」
肝心の出口に向かうためのギミックがまだ見つけられていない。それからしばらく歩き続けたが、なかなか見つけることができず、徒に体力が消耗される。
ギョロロロ!
辺りに響いたのは、あの小鳥の鳴き声だ。
「えっ! どこ?」
彼らは声の主の姿を探す。そして、見つけた。壁の装飾に混じって小鳥がその中にとまっている。
「あっ、これ! ただの絵じゃない! 凸凹してる!」
小鳥の周辺はただの絵に見えていたが、それは絵に見せかけた彫刻であった。小鳥はその中のでっぱりにとまっていたのだった。
「あれ……これ、触ったら動く……」
ユリシーズ達が壁の彫刻を触って探っていると、小鳥はまたどこかへ飛んでいった。
「おおー!」
壁の彫刻に隠されたスイッチを触ると、通路の照明の当たり方が変わった。すると、先ほどまで見えていたカーブを描いていた下り坂の通路が、上り坂の通路に変じた。
「ええ! 登ってたの、これ!」
「あ、こっちに別な通路が」
壁の一角の絵に見えていた部分に、別方向に伸びる通路が存在した。
ケントが上を見上げると、あの小鳥と目が合った。あれは、なんなんだ? とケントは疑問に思い、その小鳥の姿はいつまでも心に残った。
そして、彼らの前に現れたのは、荘厳な装飾の大きな扉だ。
「え、これってもしかして、もしかしなくても」
「ボス部屋⁉」
カミロ達は初めて到達した階層ボス戦を前に、悲喜こもごもの様相を見せる。
「ここまでこれたのは嬉しいけど……」
「俺達の実力でどうにかなるのか⁉」
不安の方が大きく、どうすればと怖気づいている。
「あの手が使えるかなあ……」
ユリシーズがカバンをごそごそと探っている。彼は反対に落ち着き払っている。
「ボスに関しての情報は何か持ってますか?」
「えーと、蛇がどうとか……」
「巨大な女性だとも聞いたわ」
ケントがカミロ達に尋ねると、そんな答えが返ってきた。
「蛇かー。夜帳の巻物は使えないか……」
ユリシーズがカバンの中の巻物を整理しながらつぶやく。フーゴはぐっぐっと腕や足を曲げ伸ばしたりして、体をほぐしていた。
「使える手は何でも使うつもりでいこう! アイテムは惜しまない。生き延びるのが、最大の目標だ」
ユリシーズの言葉に、カミロとトニアはうなずく。
「よし。じゃあ、行こう!」
彼らは扉を開けた。




