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7-3

「えっ! プラウドの王族⁉」

「プラウドって、ええとあの」

 戦争ばっかりしてる国だと最初に浮かんだが、その言葉は直接言いづらく、トニアは口を濁す。

 やはり高い身分の人だったとカミロは内心焦る。

「ここまで失礼があったかとは思いますが」

「あーあーあー! そういうのいいから! 本当に敬語なしでいいから!」

 カミロが謝罪を口にし出したところでフーゴが慌てて遮る。

「王族って言っても、庶子だし、継承権はなし。そこらの下位貴族より扱いは軽いんだ」

 カミロとトニアは視線を交わす。彼らの知る貴族は居丈高で話しかけるどころか近寄ることも許されない。こんな風に目線を合わせて気軽に話しかけてくること自体がまずない。

 半信半疑ではあるが、いい人なのか? と思い出す。


「プラウドっていう国は、貴族と庶民の距離が近いんですか?」

「そんなことはないけどね。まあ、俺はこうやって外に出されてるからさあ」

「普通の貴族の方は護衛の人やお付きの人がいたりして一人で行動されませんよね」

「うん。だから、俺に対してはそういう敬語とか本当にいらないから」

「本当に……?」

 フーゴの言葉にカミロ達は警戒を恐れを徐々に解いていった。


「でも、あなたを監視する人はいるんでしょう」

 ケントがそこへ反論するようなことを言ってくる。ケントは未だとげとげしい態度を崩してはいなかった。

「……ダンジョンの中までは入ってきてないけどね」

 フーゴはケントの言葉を否定しなかった。


「俺は今はどこかのダンジョンを攻略して来いと言われてるんだ」

「それが今あなたに課された使命ですか」

「そうそう。こないだダンジョンに入ったって話をしたら、そういうことになって」

「……前回は攻略できなかったことを何か言われたのですか」

「まあ、自分達が一番でないとって思考回路の人達だからねえ。どこかのダンジョンを攻略するまで戻ってくるなって言われちゃって」

「そうですか」

 前回、ユリシーズが攻略した後、全員でメディナの村に戻った。だが、無事に戻ったと思ったらフーゴはいつの間にか消えていた。

 フーゴの話から、彼はその後プラウドに帰ってメディナのダンジョンについてプラウド王家に報告をしたのだということがわかる。彼が報告をしなくとも、彼についていた監視人も報告をしていたであろう。

 この男はメディナのダンジョンを直接見て体験して得た生きた情報を持っている。プラウドに余計な情報を与えてしまった。やはりこの男は逃がすべきではないとケントは思う。だが、彼と行動を共にして仲間意識を持ってしまったユリシーズは彼を殺すことを良しとはしないだろう。


 ケントはユリシーズを見る。穏やかな寝顔だ。あまりこの顔を曇らせたくはない。できれば、ユリシーズが知らないところで片を付けたいが、そんな余裕はあるだろうか。


 フーゴに視線を戻せば、ゆったりと鷹揚な態度の中にある視線にケントを探るような色を感じた。フーゴの中に油断はないと感じさせられた。



 ケントは次にカミロ達を気にした。彼らにはある程度話をしなければいけないと感じていた。

 ケントはユリシーズの正体を話すことを独断で決めた。責めは負うつもりである。

「この方についてお話しします」

 ケントは切り出した。


「この方はさる国の領地の領主の御子息であられます」

「やっぱりお貴族様だったんですか」

「この方も、堅苦しさは好まないので、敬語のあるなしは気にしなくて結構です。そのようなことで怒る方ではありません」

「はあ……」

 ケントはメディナという国名をなんとなく伏せた。彼らがその地を知っているか不明だからだ。メディナは元はプラウドの一領地である。プラウドは大国ゆえ、名を知っていてもおかしくないがメディナの名はそこまで知られていないだろう、と考えたのだ。



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