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7-2


「ちょっと薄暗くなった?」

「なんだか一部屋当たりの大きさが小さくなったような」

「この辺は部屋の内装とか見る限り、居住スペースのようだね」

 ほの明るかったダンジョン内部は次第に薄暗さを増している。より深部へと進んだ証でもある。廊下には最小限のわずかな灯りが点る。

「この灯りってあれかな? 市で売ってるって言うダンジョン産の魔道具の灯り……」

「こういうのを勝手に盗って売ってるんですかね?」

「それで暗いの⁉」



 薄暗い天井の一角から、小さな蝙蝠が飛来し、こちらに向かってくる。

「これくらいなら!」

 カミロ達が剣を構える。

「速い!」

 振られる剣をすり抜け、蝙蝠は滑空する。ギラッとその小さな口から牙が見える。その鋭さは中々のものだ。


 ユリシーズは弓を構えたが、どうにも狙いが上手く定められない。

「こんなとこまで弱くなってんのか。引く力も見込めないな」

 弓を引くことはできる。だが、狙った位置に届かせられない。本来の体でできることとの差が埋められないのだ。

「せっかく用意したのにな」

 こうなっては弓矢はただの荷物だった。

「お貸し願えますか」

 ケントが申し出てくれたので、ユリシーズは素直に弓矢を渡す。

 二人がそんなやり取りをしている間に、蝙蝠はフーゴの手で倒された。



 フーゴが加入したことにより、戦闘は一気に楽になった。

「あっ! そこは踏むな!」

「あ、あーー!」

 相変わらずうっかりの罠作動はあったが。

「うわあ、また装備錆びさせられてんじゃ……あれ?」

 怪しげな霧状の液を浴びせられたフーゴは、存外平気な顔をしている。そして、その鎧に変色などは見られない。ユリシーズはまじまじと観察する。

「この錆化の罠を無効化するアイテムを手に入れたのだ!」

「へえ~~」

 フーゴは得意げに自慢をする。グイッと寄ってこられてユリシーズは一歩後ずさる。

 ユリシーズはフーゴに対してある程度気を許してはいるのだが、急にグイッと来られると思わずびくっとしてしまうのだった。

 虎がするんと間に入ってくる。ユリシーズは近くに出てきた毛皮の背中を思わず撫でた。そのまま撫でながら歩いていて、ふと顔を上げるとフーゴとの間に更にケントがいた。



 しばらく休もう、と居住区の一角の一室に入る。食事を終えて寝ることにする。

 ユリシーズは虎と寄り添って眠りについた。


「かわいいなああ~~~」

 フーゴがその寝顔を見て脂下がった顔を晒す。カミロは我がごとを見ているようで一人で決まりが悪い思いをしている。

 寝ているユリシーズをケントが横に座り、その逆隣にはトニアが座る。その横にカミロ。フーゴはケントを間に挟んでその位置からユリシーズを覗き込んでいる。


「今日はとてもがんばってましたよね……この子」

 トニアはユリシーズのことをどう呼んでいいものかと思っている。ユリシーズの身分がわからないのだ。

「君ら彼らとどういう知り合い?」

 フーゴがカミロとトニアの二人に問う。

「我々は、このダンジョンで偶然出会ってそのまま行動を共にしてます」

 カミロはフーゴに対して叱られてはならないと、どうにか敬語を思い出して話す。

「あ、気を遣わなくていいよ。話しやすいようにしてくれていいから。じゃあ、前回の俺と彼と似たような感じだ」

「嘘八百を……」

 フーゴの適当な説明に、ケントが苦虫をつぶしたような顔で言う。


「あなた、ダンジョンに入る前から、この人と出会ってますよね」

「まあ、いいじゃん。ちょっとくらい話が前後しても」

「適当なことを……」

「えーと、ではこの方とあなたはともにどこかのダンジョンを攻略されたということで」

「そうそう」

 カミロは恐る恐る二人の話に割って入り、話をまとめる。それにフーゴがにこにこと相づちを打つ。


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