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4-2

「これで受付完了?」

「はい。では、ダンジョン入場料500ドラクいただきます!」

「あっ!」

 契約より先に言えよ! とユリシーズは強く思う。


 払える。全然払えるけど、なんか腹立つ。と強く思う。


 二人分の入場料を払い、受付から離れる。なるほどねと考えながらユリシーズは歩き出す。

「入場料は、まあ必要だろうな」

「管理に使うんでしょうね」

「それに、丁度いいハードルになる。入場料を払える。武器や防具を自前で揃えられる。そして、それらを扱えるだけの技量がある。その辺をクリアするのが、ダンジョンに挑むための最低限の基準だ」

「まったく何もできない人にダンジョンに入られても死体を増やすだけですもんねえ」

「あと、名前を書けるってことを確認するのもありだ」

「字の読み書きができることも条件の一つですか」

「ああ。ダンジョンのアイテムの一つに巻物がある。あれに書いてある字は俺達が普段使ってる字とは違ってるはずだが、不思議と読める。だが、まったく字を読む経験がない人があの巻物を使うことができるだろうか」

「そもそも読むという発想が出ないかもしれないですね」

 二人は話しながら、考えを詰めていく。


 そんなことをしていたので、少し前方への注意を怠っていた。



「おっと! 失礼!」

 ユリシーズはうっかり人にぶつかりかける。慌てて避けたが、それでも相手を驚かせた。

 勢いよく避け過ぎたせいで、被っていたフードがずれる。


 ユリシーズはフードを直しながら、すれ違おうとした。それが腕を取られて足止めされる。

「何か?」

 ぶつかりかけた男が、何か言いたそうなので、ユリシーズは促す。視界の端でケントが剣の柄に手をやっているのが見える。



「ユリアンナ……!」

 男が絞り出すように言ったのは、人の名前だ。どこかで聞いた名前だなあ、とユリシーズは呑気に思う。

「き、昨日、一緒に飲んだだろう……?」

「あ、あ~~……」

 彼の言葉から、昨晩に酒を奢ると寄ってきた男の内の一人だと気づく。気づくが、彼個人のことをそこまではっきり覚えていたわけでもなかった。


「妹とお酒を飲まれたのですか」

「妹……⁉」

 ユリシーズはしらばっくれることにした。なにせ、ユリアンナという女はすでにこの世にいないのだ。


「え? あれ、あんた、もしかして男……? 本人じゃない?」

「似てるとはよく言われます。妹とは昨日、口喧嘩をしまして、それから姿を見てないんですよ」

 口から出まかせで適当なことを並べていく。


「え? 昨日から会ってない?」

「はい。ですから、彼女が行きそうなところを探しに行こうかと」

 ユリシーズがそう発言したところ、目の前の男が血相を変える。


「た、大変じゃないか!」

「さすがに異国の地で家出まがいのことをされると困りますよね」

「あんた! 何を呑気にしてるんだ! あんな美人が一人でどこかに行ったなんて!」

「彼女が勝手をするのはいつものことで」

「そんなことを言ってる場合か! あんな美人、悪い奴らに目をつけられたら、ひどい目に遭いかねない!」

 男はぱっと身を翻すと、受付に猛然と向かっていった。


「なあ、ものすごい美女が来なかったか⁉ 銀髪に紫の目の女だ!」

「え? さあ、そのような方は来られてないと思います。少なくとも、私が受付した範囲ではいらっしゃらなかったかと」

 銀髪でもないし、紫の目でもないよーとユリシーズは思ったが、黙っておいた。所詮、ほんの一時過ごした相手だ。そのくらいの記憶違いは起こってしかるべきだとも思う。


 男は案内所内にいた他の人にも聞いていく。女が一人、行方不明だという話がどんどん広がっていってしまう。


 そんな女、この世にいないんだよなあ~~。


 ユリシーズは思うが、口に出せない。



「俺は、街の人間にも聞き込みをしてくる!」

 男はそう言って案内所を飛び出していった。


 え? 街中に言いふらすの……?


 思うが、止めることができない。

「どうしよう……適当言い過ぎたかな」

「きっと見つかりませんよね」

「きっとどころか、絶対見つかんないって!」

 改めて話を聞かれたらどうしよう、とユリシーズは悩む。


「もうちょっと設定を考えるべきかな……ユリアンヌのこと」

「そんな名前でしたか?」

「え? ユリアンヌじゃない? ユリアンナ? ユリエンヌ? ユーリエンヌ? ユリアン? あれ、なんだっけ?」

「さすがに偽名の管理はご自分でしていただかないと……」

「えー! なんだっけ……」


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