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6-4

「ほいっ、と!」

 フーゴが剣を払う。軽やかに振った剣が飛んできた矢を落とす。落ちた矢はその辺に転がる。

「ほい、ほい!」

 飛んでくる矢がカランカランと落ちていく。それをユリシーズは拾っていく。

 ささっと素早く地に向かうのを端から見るとどんな様だろうか。ユリシーズは想像しつつ、健気に全部拾った。

 時々、矢はユリシーズに向かってくるが、それもフーゴが防ぐ。


「そろそろいい?」

「ああ」

 フーゴの問いにユリシーズは頷く。持つのに重いと感じるくらいには集まった。

 小人は矢を切らすことなく撃ってくるが、集中力が切れたのか大幅に狙いを外すことも増えてきた。

 矢が外れたところで、フーゴは一足飛びに距離を詰めて剣をなぎ払った。


「あっ! 矢筒! 矢筒を寄越せよ!」

 ユリシーズが叫ぶが、切られた小人の姿はあっという間に消えていった。

「純粋なダンジョン産の魔物は回収されやすいのかな」

 ユリシーズが悔しがる横で、フーゴは呟いていた。



 鞄の一番上、フラップを開けたところに矢を入れる。フラップを閉じると、矢羽根が横から飛び出た形になる。鞄を背に回して、その位置から矢羽根がつかめるか確認する。

「使えそう?」

「まあ、なんとか」

「その状態で杖とか取り出せる?」

 指摘されて、ユリシーズはうっとなる。


「杖……杖なあ。どう持ち運ぶのが正解なんだ」

「物語の魔法使いはずっと手に持ってるよな」

「ずっと手に持つのは無理だし」

 ユリシーズはもう一度、鞄を開けてああでもないこうでもないと思案する。考えた結果、杖も矢と同じように並べてフラップの横から飛び出させた格好に落ち着く。



「ねー。結構順調じゃない?」

「……うん」

 フーゴが問いかけてくる。ユリシーズは逡巡しつつうなずく。

 ユリシーズはこれでいいのかなあ、と悩んでいる。フーゴのおかげでダンジョン探索は確かに順調なのだ。ユリシーズに圧倒的に足りていない戦闘力をフーゴは補って余りある。完全にフーゴに頼っている状態だ。

 本当は倒さないといけない相手なのに。


 フーゴはニコニコとしているが、本心はどうなんだろうか。何か狙いがあるのだろうか。


「なんか、でかめの部屋じゃない。ここ」

「本当だ」

「じゃあ、さくっと探索しますかぁー」

 フーゴは意気揚々と部屋を開ける。



 ギラギラと光る無数の目玉が、一斉にこちらを見てくる。それぞれが息を吐き、えも言われぬ臭気に満ちた空気が充満する。体温と呼気がむっとした熱気を作り出し、出口に向かって流れてくる。


「おわあああああ!」

「うわあああああ!」

 室内にいたのは、無数の魔物。その総数は混乱した頭では数えられない。


 魔物の巣窟――モンスターハウスだ。

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