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206/207

6-2

 数が多いと言っても、4人がかりとなるとその処理も速かった。あれだけいた敵がもう少なくなっている。そのことにフーゴは驚き、多人数での攻略の利点を改めて認識する。

 爆風の巻物が手に入ればと思っていたが、それを使うまでもなかった。

 まだ戦闘が終わったわけではないが、この後は床に落ちているアイテムの回収だなとフーゴはすでに次の段階へと思考を飛ばしていた。


「うおっ! なんだこいつ!」

 そこへ、カシアの声が聞こえてきて思考は中断される。彼の声に、何事かとフーゴはそちらを見る。


「え……」

 そこにいたのは、獅子だ。血も流し、すでに戦う力はなさそうに見えた。だが、その体が変化していく。

「俺、こいつ倒したよなあ……?」

 その獅子にとどめを刺したはずのカシアが戸惑っている。


 死んだはずの獅子が苦悶の声を上げながら、再び立ち上がる。その体が不自然に脈打つ。全身が振動というより、蠕動している。その生物にしては妙な動きのまま、その身体が時に白く時に黒く明滅して見える。


 4人はそれぞれその奇妙な動きを見せる獅子を見守ってしまっていたが、一人がいち早く我に返った。

 獅子と直接対峙していたカシアが、再び剣を振りかぶり獅子に斬りかかる。


「え……?」

 だが、その攻撃は当たることはなかった。獅子に向かって下ろしたはずの剣は獅子の体を素通りする。剣が獅子に当たらず、攻撃の勢いそのままにカシアの体は獅子の体に衝突する。だが、その衝撃がカシアの体に来ることはない。カシアの体は獅子の体をすり抜け、その向こう側に出る。

 カシアはたたらを踏んで体勢を整え、振り返る。


「これは、獅子の亡霊……?」

「死体がないぞ」

「どういう……?」

 4人は獅子の亡霊を囲むように立つ。


「ただの幽霊なら、放置するか?」

「いや、なんかあるだろ」

 その通り、獅子の亡霊が咆哮するとそれが衝撃となって彼らを襲ってきた。

「うわ……鬱陶しい」

「めちゃくちゃ痛いわけでもないが、連発されると困るな」

 その困った予想通り、獅子は咆哮による衝撃波を連発してくる。


「お前、その嫌な予言やめろ!」

「こうなると思わなかったんだよ!」

 カシアがヒースが口げんかしている中、フーゴもまた自分の嫌な予感が当たったことにゲンナリしていた。


 幽霊系の実体のない攻撃がしづらい敵が出てきてしまった。しかも、対処法がまだ何にもない状態だ。


「こいつ、剣が通らなかったんだよなあ」

 カシアがぼやいている。フーゴは未回収の床のアイテムに目を走らせる。4人は走り回って、獅子の攻撃を避ける。


「だーっ!」

 またカシアの叫び声が聞こえた。転び石の罠を踏んだらしい。すっころんだカシアが文句を言いながら起き上がっている。

 そこへ、獅子がカシアに向かってくる。


 転んだカシアは自分の持っていた剣が手から離れてしまっていた。カシアは咄嗟に床にあった何かをつかんで獅子に向かって振る。


「グアアァァァ……」

「ん⁉」

 獅子の亡霊が再び苦悶の声を上げた。そして、亡霊の体が消えていく。



「お⁉ この剣、幽霊が切れるのか!」

 カシアが咄嗟につかんだのは、亡霊をも切れる剣であった。



「いやあ。助かったな」

「運がいいんじゃないか。都合よく、幽霊が切れる剣が手に入るなんて」

 無事に難局を乗り越えられて、4人それぞれの顔に安堵の表情が浮かぶ。

 だが、それもつかの間のことだった。


「なんか変だ」

 カシアが呟く。

「どうした?」

「手から剣が外れねえ」

「え?」


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