6 剣のダンジョン
「あんた。金貨全然使わないね?」
「え?」
バネサによる指摘にユリシーズはきょとんとなる。
バネサによるユリシーズ達への指南は続いていた。彼女の指南を受けながら、ユリシーズ達は自分達の領地のダンジョンへの理解を深めていっている。その過程で得た気付きをダンジョン運営に活かすのだ。
「金貨? 金貨ってこれ、アイテムなの⁉」
「気づいてなかったのかい?」
ユリシーズは見つけたものの回収する気も起きなかったそれを改めて手に取り、まじまじと見つめる。
「あんた、アイテム使うの好きだろう。試す気にならなかったのかい?」
「ただの骨董品だと思ってた……」
ユリシーズはこれまですべての金貨をスルーし続けたことを思い返し、うわーっと頭を抱える。
「最序盤から出てたじゃん! もう、本当に一番最初から……!」
ユリシーズはもったいないことをした! と心から悔やむ。
「使う! 絶対使う! ケント、鑑定!」
「はい。えー。小爆裂? の金貨だそうで」
「爆裂? 攻撃に使えんの!」
ダンジョンに初めて挑んだ時を思い出す。あれだけ戦闘に苦労していたのに、その戦闘を確実に助けてくれるアイテムがすでに出ていた……己のうかつさを痛感する。
「ダンジョンによって出やすいアイテムに偏りがあってねえ」
バネサの解説をユリシーズは粛々と聞く。
「ここは今のところ、杖がよく出るように感じるね。グーダルのダンジョンは、カップが出やすいんだ。出やすいアイテムの名でダンジョンを呼ぶこともあるね。杖が出やすければ、杖のダンジョン。カップが出やすければカップのダンジョン、金貨ならば金貨のダンジョン」
「巻物が出やすいと巻物のダンジョン?」
「巻物は、どこのダンジョンでも出るからねえ。巻物や草はそれを冠する名で呼んだりすることはないね。出やすいアイテムでダンジョンを分けると4種類に分かれる。その4種類の中で探索者の間で特に重視されるのが、剣のダンジョンだ」
「剣。剣が出やすいダンジョンがあるの」
「そう。やはり、攻撃力はいくらあっても足りないってことはないからね」
「おいおいおい! なんだここ!」
「多い……」
フーゴ達は早速危機に陥っていた。ダンジョンに入り、部屋を1、2個見て回った後、次に入った部屋が魔物の巣窟モンスターハウスだった。
いきなりこれか~。前途多難だな。
フーゴは数度経験しているので、比較的落ち着いていた。淡々と魔物を倒しながら、床を見る。
「げっ!」
カシアの悲鳴のような声が聞こえた。カランカランと落下音が次いで聞こえた。
装備外しの罠を踏んだのだろう。自分も踏まないように気をつけないと、とカシアの位置を確認する。
敵の強さは今のところそう強くもない。荒くれた山羊に狼のような獣、猫を大きくしたような獣、鷹のような猛禽の鳥……
獣はまだ倒しやすい。とフーゴは思う。困るのは、幽霊などの実体のない敵である。あれは剣がなかなか通らないのだ。そういうのが出ないといいと彼は考えている。だが、ここは恐らく元は墓所だ。先を進めば、きっとそういうのが出てくる。
フーゴはそう考えて、人知れず悩んでいた。
フーゴとしては、さっさとここを切り抜けたい。そこで、フーゴは巻物を探した。
見つけた。早速拾って、読もうとしたが『鑑定』の文字が出て、開きかけた口を閉じる。さっと巻物を仕舞い、迫ってきた敵を斬り捨て、つい側にあった草を手に取ってしまってそれを投げつける。
投げつけた草が発火し、敵を燃やす。
ああ、そういうのもあるのか。
フーゴはそれを見て特に動じることもなかったが、その斜め後ろにいたニームは声もなく驚いていた。




