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5 入り口前

「おい。あそこ、降りられないか?」

 取り残された彼ら4人は悪態をつくのも無駄と目の前に広がる崖の景色を目を皿にして探した。そして、一人が階段らしきものを見つける。

「あー……階段になってる」

「階段だ」

 近づいて確認して、見たままの感想を述べる。彼らはとりあえず確認して、しばらく無言で見ていた。


 あまりに細く頼りない階段。崖を削って作られたそれは風化したのだろうか。人一人がやっと通れそうな幅に足一つ乗せるのも危ういような踏面で、滑りそうな急角度の勾配で下に向かっている。


 フーゴは、みんな降りて行かないな? と思いながら状況を見ていたが、じっと待っていても何も変わらないので、自分から降りて行った。


「おいおいおい! なんだこの階段!」

「踏むとこが下に向かって斜めってる……」

「いや、滑る。これ」

「絶対! 滑んなよ!」

 しばらくすると、文句を言いながら兄弟達も降りてきていた。


 降りられるだけ降りた先に踊り場のようなスペースがあった。そこにあったのは大きな石扉だ。

 フーゴは改めて降りてきた階段を見返す。頼りなげな階段と比較してこの石扉は随分と重厚だ。

 この石扉だけ見れば王家の墓と言われても納得できるが、その墓に遺体を運ぶにはこの階段は頼りなさ過ぎる。

 本当にここから遺体の運搬をしていたのだろうか?

 他にも入り口があって、ここは便宜上作られた別の入り口では?

 などと疑問が浮かぶが、答えは出せない。


「いらねえよ。こんなスリル……」

 カシアがぼやいている。一番文句が多い癖に、逃げずにやる度胸はある。やるからこそ文句も出るのか。ヒースもニームもやれやれといった風情で辿り着く。

 体のでかい男達には、この階段の上り下りは酷であった。



 中にいよいよ入るという段階で、彼らは改めて互いに顔を見合わせた。

「俺達はこれから相争うわけだが」

 カシアが切り出す。

「……最終的に誰か一人が攻略できればいいんだろ」

 フーゴが答える。

「ダンジョンを単独攻略するのは難しいと思う」

 その答えに、カシアが眉間にしわを寄せた。

「俺達の実力を侮っているのか? 俺達には単独攻略する力がないと? 魔物に苦戦すると?」

「そうじゃない」

 フーゴの言葉にカシア達が剣呑な態度に変わるが、フーゴは首を振る。


「ダンジョンではあらゆる変わった道具を手に入れて、それを活用しながら進む。だけど、一人だと大した量の道具を持てない。それが4人となると結構な量の道具が持ち運べる。それだけのことだ」

「……道具?」

「敵を倒すだけじゃダメなのか?」

「入ってみればわかるけど、剣じゃ倒すのが難しいような敵も出てくる」

 フーゴの言葉に彼らは眉間のしわをそのままに顔を見合わせる。


「とりあえず、ダンジョンに慣れるまでの間だけでも協力しよう。先に進んでみて、その後の協力が必要かどうか判断してくれ」

 フーゴはそう提案した。



「じゃあ、入ろうか」

 フーゴは石扉に向き直った。この扉は、どうすれば開くのか。とりあえず、押してみるか、と扉に手を触れる。


 その時、扉から白煙が漏れ出てくる。

「なんだ⁉」

「煙幕?」

「毒じゃないよな⁉」

 勢いよく出てきたそれに彼らは一様に慌て、吸わないようにと口を覆う。


『中に入ろうとする者か?』

 不思議な響きの声が聞こえた。それは人の声にしてはやけに通った。洞穴に向かって大声を出した時のようにぐわんとした響きに聞こえた。


 吹き出てきた白煙は巨大な人の形になり、彼らを見下ろした。たくましげな上半身に下半身は白煙のままのアンバランスな存在は人より上位の存在だと言わんばかりに彼らを睥睨する。


『この先は王の末裔しか入れない』

「へえ~。これが例の魔法か」

「本当に魔術をかけてあるんだ」

「凄いなあ」

 カシア達は感心の声を上げる。魔人は魔人で彼らの言葉には特に反応しない。互いにマイペースに状況が進んでいく。


 魔人は彼らを順に眺め

『プラウド王の子達か』

 と一言残し、そのまま姿を消した。そして、扉がひとりでに動き、開かれた。


「おお。開いた」

「へえ~……外れの場合どうなるか見たかったな」

 兄弟達が感想を言いながら中に入っていくのにフーゴはついていった。


 もしかして。別の王の末裔でも、中に入れるんじゃ……


 などと思ったが、心の中に留めておいた。


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