10 いざ行かん
「リンゴぉ~~~リンゴ、ありがたいですわぁ~~」
狩りができていないグレーテにとって、リンゴは貴重な食糧である。それが複数手に入った。ひとつは早速食べて、ひとつは保存しておく。食べながら思わず涙が出るグレーテだった。
「杖、これは吹き飛ばすやつでー、これは火が出るやつ、これは一時しのぎ……大体、見たことあるやつですわね」
杖は複数本手に入った。
「あら……これは見たことないデザイン。きっと違う効果のある杖ですわね」
新たに手に入った杖に、グレーテは期待を持つ。
「ええっと、巻物がいくつか……心強いですわ」
広範囲に確実に効果が出る巻物が複数手に入り、グレーテはにっこりと笑みがこぼれる。
「迅雷、なんか凄そうな響きですわ。爆風、これも使えますわね。爆睡、使い方がいまいちよくわかんないんですけど、敵に囲まれたときとか……うう~ん、それも危なそう……どう使おうかしら」
グレーテは巻物をどう使おうかと思案する。目下の目標はあのえらく強そうな牛の怪物を倒すことだ。これら手に入ったアイテムで倒せるのか……グレーテは考えていく。
「これは、なんでしょう。強くなる……? 使った方が、いいでしょうね」
初めて見る巻物だが、呪文の印象からこれは使うべきと判断する。
「草ー、この毒はないけど効果がよくわかんないやつ、毒のやつとー、ドクバミとー、火が吹けるやつ……令嬢がやることじゃないですわ、口から火を吹くとか……」
グレーテはぼやきつつも、その効果を実感していたので、その草を大事にしまう。
「なんですか、この、虹色……? 変な色の草……凄そうなのはわかりますけど、食べて大丈夫ですの?」
きらきらと光る葉をくるくると回しながら眺める。明らかに不思議な見た目の葉にグレーテは目を細めながら、近づけたり遠ざけたりを繰り返す。
「これは、う~~ん……」
効果を知りたいが、口にする勇気がどうしても出ない。グレーテはそっと鞄の中に仕舞った。
「これは、金貨ですね。では、早速」
グレーテはポイッと投げつける。床に着弾するとカッと閃光が放たれて視界が奪われた。
「……理解しましたわ」
しぱしぱと目を瞬かせて視界の回復を待った。心なしか、目だけでなく体力も持っていかれた気がする。
「あとは、カップがいくつかですねー」
カップは何かを入れるものという認識があるグレーテは、ぽいぽいと細々としたものを放り込んでいく。
「あれ⁉ これ、物を入れられませんわ!」
カップの口に杖がつっかえている。それ自体はごく当たり前の光景だが、グレーテはそれまでできていたことができなくて、戸惑った。
「デザインが違ってますわ。そうですの、これは収納のカップではないんですね……」
カップを眺めて、グレーテはへえーと感心する。覗き込むが、底はすでに見えていて、ただの何も入っていないカップだ。
「わからないんですけど、敵に向けて使うタイプのものなんでしょうか? 試さないとですわね」
とりあえず、グレーテはその正体のわからないカップを仕舞った。
「……よし」
回収したアイテムを鞄に仕舞ってグレーテは一旦落ち着く。これから、次の階層へ向かうか――
「一回、寝まーす!」
グレーテはベッドを出して、探索を一時休止した。