表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/20

第6話【弾丸開発】

 

 僕が【魔改造デリンジャー】の開発に成功した翌日――、

 えっと、つまり僕が朝寝坊して、親方に怒鳴られた日の夜ですね……。


 僕は、昼日中の丁稚奉公を終えて、自分の部屋に戻ると――、

 わくわくしながら『弾丸の設計図』を書き上げちゃいました。わーい。

 という事で、まずは基本的な『弾丸(タマ)』の構造を確認してみましょう。


 銃の弾丸(タマ)――正式名称『弾薬筒(カートリッジ)』は、下記の四つで構成されます。

 ①弾頭(ブレット) :射出される弾丸部分。硬質だと貫通力UP、軟質だと殺傷力UP。

 ②薬莢(ケース) :発射薬を収納・保護する容器。頭部に弾丸、底部に雷管が装着される。

 ③発射薬(ガンパウダー):爆燃反応によって弾丸を射出する推進用の火薬。雷管で着火される。

 ④雷管(プライマー) :薬莢底部に装着される着火装置。撃鉄先端が衝突する事で発火する。


 ずばり【弾丸開発】の課題は――『代替素材』を見つける事ですね。

 高価な【黒銀鋼】を、使い捨ての『弾頭』や『薬莢』素材にしたくありませんし、原始的な黒色火薬すら発明されていないこの異世界で『発射薬(ガンパウダー)』や『雷管』を製造しなくてはいけません。がんばって調達するぞー。おー。

 でも今夜はもう寝ます。寝坊ダメ、絶対。おやすみなさい…すやぁ…。



  ◆◇ ◆◇◆ ◇◆



「――よしっ。いい感じで『素材』が集まりました!」

 あれから三日後。僕の眼前には、机上に置かれた三つの『紙包み』が――、

 はい。これが今回の【弾丸開発】のために用意した『素材』たちになります!


 まずは『弾頭(ブレット)』の素材として――『銅貨』百枚を用意しました。

 【石工ギルド】の帳簿係さんにお願いして、銀貨一枚を両替したものです。

 今回、弾頭部分は【魔術工房(マギクラフト)】で『銅貨』を鋳潰して――【銅弾】――を生成しようかと思います。前世では安価で軟質な【鉛弾】が主流でしたが、今回は狩猟目的なので、野生動物の鉛中毒を考慮して『銅製弾頭』にしようと思います。


 次に『薬莢』の素材として、新たな魔鉱石――【黄道鋼】――を購入しました。

 これは銅鉱石に【魔素(マナ)】が蓄積したもので、前世の『真鍮』と似た性質をもつ謎の金ピカ鉱物です。日本の五円硬貨そっくりの素材ですね。

 この【黄道鋼】は硬度と靭度のバランスが良く、何より安価です。銀貨五十枚した【黒銀鋼】と同量でも、お値段は銀貨十五枚。【黒銀鋼】の半額以下ですよ。それにやっぱり…金ピカ真鍮製の方が『薬莢』っぽくてカッコイイですよねぇ…えへへ…。


 そして最後に『発射薬(ガンパウダー)』及び『雷管』の素材として――、

 異世界定番の――【魔石】――を購入しました。あるんですよ。お約束ですよね。

 こちらの異世界で流通する【魔石】とは、魔獣の心臓部から剥ぎ取れる『結晶石(クリスタル)』の事です。魔獣の血液を巡る【魔素(マナ)】の供給源とされ、使い捨ての『魔素(マナ)電池』として【魔術工房(マギクラフト)】で術式制御(プログラミング)すると、いろんな道具の動力源に変換できます。例えば、この部屋にある角灯(ランタン)も『小さなクズ魔石』を燃料に使っています。異世界生活の必需品ですね。未加工の【魔石】は、主に【冒険者(ハンター)ギルド】の販売所で購入できます。

 今回は一番安価な【Fランク魔石】を、三十個ほど購入しました。一個あたり銅貨一枚ですね。これを【魔術工房(マギクラフト)】で術式制御(プログラミング)して――【魔石火薬(マナパウダー)】と【魔石雷管(マナプライマー)】を製造したいと思います。


 ちなみに、今日は丁稚奉公がお休みなので――、

 午前は【弾丸製造】、午後は【試し撃ち】の予定です。えいえいおー。



  ◆◇ ◆◇◆ ◇◆



「――というわけで、さっそく【弾丸製造】を始めましょう!」

 僕は腕まくりをして、机の上に『弾丸の設計図』と『素材』を並べると――、

 ゆっくりと深呼吸しながら、体内の【魔素(マナ)】を練り上げていきます。

 指先に灯る魔光で、幾何学模様の羅列を紡ぎ、魔法陣を編めば……。

 いざ【魔術工房(マギクラフト)】の時間です――!!


 まずは『弾頭(ブレット)』の錬成ですね――。

 弾頭重量一〇グラムの設計に対して、銅貨一枚およそ五グラムなので――、

 銅貨二枚を【魔術工房(マギクラフト)】の魔法陣に取り込み、じわりと鋳造していきます。

 弾頭の形状は、先端が山なりのドングリ型に造形して――、

 弾丸の口径サイズは『9mm弾(.38スペシャル)』で調整します――おぉ~いい感じです。


 次は『薬莢』の錬成です――。

 硬度と靭度を保てるように【黄道鋼】を圧縮成形しながら、筒状に造形して――、

 薬莢サイズは、発砲時の反動を制御しやすい『9×29mm(.38スペシャル)』仕様で調整します。

 薬莢底部には、銃弾の固定や、空薬莢の取り出しが容易になるように――、

 『抽筒板(リム)』という出っ張り部分も再現しておきます。うふふ…かっこいい…。


 さて、次は『雷管』の錬成です――。

 小指の爪サイズの【Fランク魔石】を一粒、魔法陣に取り込みまして――、

 暴発防止付き着火機能『起爆・凹』を術式制御(プログラミング)で刻印します……よしよし。

 すでに【魔改造デリンジャー】の撃鉄(ハンマー)先端は『魔石撃針』(ファイアリング・ピン)に換装済みで――、

 その『魔石撃針』(ファイアリング・ピン)には、術式制御(プログラミング)で『起爆・凸衝突限定』を刻印してあります。

 これで撃針と雷管の衝突時のみ『起爆』術式が発動する【魔石雷管(マナプライマー)】の完成です。

 あとは【魔石雷管(マナプライマー)】を薬莢底部に装着すれば――これでバッチリです。


 さあ…最後に『発射薬(ガンパウダー)』の錬成ですね――。

 まずは【Fランク魔石】を、術式制御(プログラミング)で丁寧に『爆燃火薬』に性質変化させます。

 それを粉粒状にすれば【魔石火薬(マナパウダー)】の完成ですが……問題は『量』の調節ですね。

 薬莢に詰める【魔石火薬(マナパウダー)】を少量ずつ変えて、【試し撃ち】で確認しましょう。

 さて、あとは出来上がった【魔石火薬(マナパウダー)】を薬莢内部に収納して――、

 先ほど錬成した『弾頭(ブレット)』で蓋をすれば――【弾丸】の完成です!!



 ――――――コトン。



「……わあっ。ちゃんと見た目は【弾丸】ですね!」

 僕は錬成された【弾丸】を指先で摘まむと、眼前に掲げて見つめます。

 でへへ…かっこいいです…。思わず頬が緩んじゃいますねぇ…にやにや……。


 その後は【魔石火薬(マナパウダー)】を少量ずつ変えた『試作弾丸』を数個製造したところで――

 正午を告げる教会の鐘音が聞こえてきました。


 あぁ~お腹ぺこぺこです。工房の食堂で昼食を貰いましょう。

 そして午後は、いよいよ【試し撃ち】ですよー!!



  ◆◇ ◆◇◆ ◇◆



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【稼ぎ】

 ・なし

【出費】

 ▲銀貨一枚 (銅貨百枚に両替後、弾丸素材へ)

 ▲銀貨十五枚(黄道鋼を購入)

 ▲銅貨三十枚(Fランク魔石・三十個を購入)

【残金】

 ・銀貨二十二枚、銅板七枚(日本円で二十二万・七千円)

【備品】

 ◆魔改造デリンジャー銃(一丁)

 ・黒銀鋼 (残り半分ほど…)

 ・魔獣骨 (バネ素材の余り)

 ・ネジ回し(一本)

 ◆弾丸  (試作品・四発)

 ・銅材  (銅貨二十二枚分)

 ・黄道鋼 (ひと握り)

 ・魔石  (Fランク。残り二十個ほど…)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


■おまけ■

 ちなみに【黒銀鋼】は1kg=50万円なので、

 重量10gの弾頭を【黒銀鋼】で製造すると、

 「銃弾1発5000円」になります。うひゃー。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ