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    4.違和感

 

情報を整理しよう。まずは俺について、、13年前のあの時から昨日までの記憶がない。だから親友たちやシア、ユリがどうなったのか、兄は実際に今どこにいるのか分からない。


 ちょっと3神さん!話が違うじゃん!!!

 

「何を言うとる。きちんと話したではないか」


 レグルスさんがつっこみを入れるようなテンションで語りかけてくる。


「未来に行ったらそこまでの記憶も見せてくれるのじゃないんですか??」

「そんな事は言うておらんぞ。当たり前よ。お前はもう死ぬんだ。 

 そこから未来へ飛ぶということはそういうことなのだ。それに、この時代で調べれば、過去の記憶が無かろうとも、感じ、味わうことは出来るだろう?」


 そうだった。皆と会えたことで少し浮かれてしまっていたのかもしれない。これは3神が与えてくれたチャンスなんだ。与えられた微かな希望をもらえただけでも感謝しないと。


「そうですよね。すみません。少し知りたいという欲が出てしまいました」

「分かったのなら、よし。スミレの人生全てを見せたいものだが、此方も守るべき定めがあるのでな。許せ」

「いいえ。このチャンスを貰えただけでも幸運です。頑張ります」


 プッツリと念話が途切れた。



 それにしてもこの世界に来てもレグルスさん達と会話する事は可能なんだな。でもなるべく頼らずに自分の力で運命を変えていこう。


「よし、やるぞ!」


 昨日の時点で職場と家の距離は2km以内ということは把握しており、まずは自宅を漁る事にした。


「忘れ物ない?ヒナ?」

「ないよー」

「じゃー出ようか」

「はーい。おうちさん、いってきまーす」


 可愛らしい妻と子のやりとりを微笑ましく見送った後、家の隅々を漁っていた。


 先ずは見つけることが容易そうなユウキからだな。


 どうやら兄は変わらず、隣の市で働いているようだ。連絡先はあるだろうから何とかなるだろう。次は親友達についてだな。俺は物置きなど家中を隈なく探した。するとモネ専用のクローゼットにいかにも大切に置かれている箱を見つけた。


「この箱だな。でもとても新品で開けたような形跡がない。開けない方がいい気がするな」


 何故かは分からない。ただそう感じた。



 その場を後にし、共通の物置き部屋に長年置いているであろう段ボールを見つけた。その段ボールを取り出し開けてみる。


「この写真は、、」


 そこから出てきたのは、卒業式の写真、その後のクラス会の写真だった。


 親友達、そしてモネと撮った写真だ。俺は笑顔でその写真に写っている。良い写真だ。この状況を実際に体験できないことはとても残念だが、この時代に来なかったらこんな幸せそうな写真を見ることが出来なかった。


 他にも結婚式の写真や卒業のメッセージカードが出てきた。


「本当はこの写真に俺は居ないんだな、、みんなと生きたかったな」


 沢山の思い出の物があった。その都度、物思いに耽っているともうモネとヒナが帰って来る時間だ。結局得た情報はあの事故から卒業する前にはモネと付き合っていたこと。結婚したのが25歳と言うことだけだった。

 サルたちとはまだ連絡を取ってるみたいだし、なんとか会えそうだな。今日の夜には同一化してみんなにまた会いに行こう!そして全てを聞こう!そう決めた。


「おうちさん、ただいま~」

「おかえりー」


 おうちさんっぽく返事をしてみたけど聞こえるはずないか、、、。


「え、、ママ!今おかえりって聞こえた!!」

「良かったねぇ、おうちさんが返事をしてくれたんだよ」


 !!!!聴こえてる????


 マジか。なんでだろうか??とりあえずバレたら不味い。話さないでおこう。


「・・・・・・・。ママ~キャベツ次郎食べる~」

「はいはい。手洗いうがいしてからねー。いつものところ置いてるわよー」


 数時間後、、、、


「ただいま~」


 本体の俺が帰宅した。


「パパー!今日ね。おうちさんにただいまーって言ったら返事が来たの!!」

「むむ、それは怪しいぞ。なんて返ってきたんだい」

「おかえりーって」

「それは不味い。ヒナを狙っている誰かの声だ。安心しろ、ヒナ。パパが退治してやる!」

「絶対だよ」

「当たり前だー!ヒナを怯えさせる奴は俺が許さん」


「怯えさせてはないのだけど、、」


 幽霊である俺の冷静なつっこみが入る。


 その幽霊と君は同一人物だよ。


 それにしても過保護か!!良いのか、悪いのか分からないけど、俺らしいな。

 さて、そろそろ同一化するか、、、、。


「ところで、モネ、ヒナ今週の土日家を開けて良いかな??」

「急ね、まぁいいけど」

「実はさ、5年ぶりくらいに大学のメンバーで遊ぼうってなってさ」

「あー確かサルくん、ショウくん、スノー、フジくん、ユウくんか。懐かしいなー。行ってらっしゃいよ。お土産話聞かせてね」


「有り難う、モネ。ヒナもいいかな?」

「嫌だ、、、。パパ行かないで、、」


 ヒナが少し震えている。


「大丈夫だよ。ヒナ。日曜の夕方には帰るから。帰ったら一緒にゲームしよう。ね?」

「うん。分かった、、、」


「・・・・・・・・・・・・・。」


 モネは無言でその様子を見ていた。


 同一化する前に聞けて良かった。集まる日まで3日あるし、もうちょっとこのままでいよう。何かと便利だし。

 それにしても、ヒナは震えてどうしたのか?そんなにパパのことが好きだったのか!それとも、、、


 その後も俺はできるだけ多くの情報を、沢山の手段を使って集めた。家族、友達、兄。やはり13年の年月の早さ、違いに驚くばかりであった。



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