2.目覚め
運ばれて3日後、覚ますはずの無い本体の俺は目を覚ました。ちょうどサル初め、大学の親友たち、友達たちがお見舞いに来てくれていた。
「スミレ!?!」
「良かった、、、、」
「心配したぞ、マジで」
少し涙目のショウとシアが話かけてきた。
「みんな、ごめん。有り難う」
「帰り道で別れてからすぐ鈍い衝撃音がして、戻ってみたらスミレだったから、本当に焦ったよ」
「ごめんよ。てことはサルが救急車を呼んでくれたの?」
「いや、俺じゃないよ。たまたま、その場にいたモネちゃんだ」
サルはモネちゃんを誘導する。
「スミレくん、無事でよかった」
「モネちゃん、本当に有り難う。おかげで助かったよ。。今度お礼をさせてくれないかな?」
「いいよ、お礼なんて。当たり前のことしただけだから」
モネちゃんは大学の同級生であまり口数は多くないが、その優しさから友達は多い。大学ではちょくちょく話す程度だが、趣味が合うから俺としては話していて楽しい。まさか、帰り道が一緒だったとは気づかなかったけど。。
「いやー、本当に良かったよ。目覚めて早々悪いけど俺たちもう行かなくちゃ。来てない大学のみんなにも伝えておくよ」
「有り難う。宜しく言っといてくれ」
「ああ、また来るよ」
サルたちは部屋を後にした。
そうだ!一緒に学校に行こう!久しぶりに学校に行って皆と過ごそう。俺は会話には参加出来ないが良いアイデアではなかろうか。
早速、本体の俺の元を離れ、親友達、友達達を追いかけた。
見つけた!と言っても既に学校についている。何と運ばれたのは学校の隣の病院だった。道理で学校がある日の昼の時間帯で、見舞いに来てくれると思った。こんな事ならもっと早く学校に行けば良かった。
「皆、スミレが目を覚ました!!」
スノーが教室中に轟くような大声で報告する。
「それは本当に良かった」
「スミレ。よく耐えたな」
「スミレ君、良かったー」
普段接している人から余り接しない人まで、俺の無事を喜んでくれた。
「スミレの復帰を祝って鶴を折るからみんな手伝って!」
「幾つ折るの」
「んー、千羽はちょっとキツイから百羽で」
「よっしゃ、やろー」
「こっちも手伝うよー」
折角なら千羽鶴をと一瞬思ったが、無事を喜んでくれる仲間がいるだけでとても嬉しかった。本当は兄を裏切り、友達の声にも一生返事ができなくなってしまうのだけれど、、、。
でも、今はそんな事いい。みんなからもらった恩を返すつもりで、この未来を過ごそう。そう心に決めた。
〜数日後〜
………ガラガラガラ
「せーの、スミレ(君)、復帰おめでとう!!」
「あ、ありがとう」
「はい!これ!千羽鶴ならぬ百羽鶴。みんなで協力して折ったんだ」
「みんな、本当にありがとう。これからも宜しくね」
本体の俺が本当に嬉しそうな笑顔を浮かべている。上から見ている俺も同じように笑顔が溢れてしまうほど幸せな気持ちだ。
さぁ感動の再会に幽霊ながら立ち会えたところでどういう未来へ飛ぼうか。
折角なら90歳くらいに跳んで俺の人生をすべて知りたいところだけど、同一化してもやる事がない。
「・・・よし、決めた!35歳にしよう。家族と楽しく暮らしてるだろうし、仕事も上手く出来ている事だろうし」
「ふっ、、、行く未来が決まったようだな」
「この声は、、、レグルスさん」
「伝えるのを忘れていた。本体の自分と同一化したい時はこのカードに願えば同一化できる」
「カードですか」
「有無」
「ところで一回の同一化の期間はどのくらいあるのですか?」
「いい質問であるな。その答えは自分で見つけるといい」
「あの、、答えになってないです、、、」
「答えてしまうと面白みが減ってしまうであろうが。お前も知らない方がワクワクするであろう」
「それは、、、まぁ確かに」
「だろう!精々楽しみたまえよ」
念話が切れてしまった。
仕方ないか、、、。まぁこんな最後の悪あがきが出来るとは思わなかったし、楽しもう。
俺はカードにむかって願いを送った。
だが、後に後悔する。13年後の未来へ飛んだこと。いや、この未来を見るという決断をしたことを。