未来編 1.衝撃の知らせ
・・・・・・・・「心肺低下!!急げ!!」・・・・・・・・・・
どうやら病院へ運ばれているようだ。
一度死んだ俺は今の状況を上から見ている。どうやら誰にも見られないらしい。透明人間、いや幽霊と言ったところかな。
どうやら生きている世界線での俺を上で見守るらしい。そして同化できるチャンスは1回ということか。同化できる時間は希望が叶えられるまでか、、それとも期限付きか、、、慎重に状況を見計らわないとな。。
ん??待てよ!!誰にも見られない!!という事はお決まりでしないといけない事があるだろ!
だが、しかしそこに行ってしまえば希望が叶えられたとなってしまうかもしれない!それはゴメンだ!!
本体の俺はどうせ何日かは目を覚まさないだろうから少し探索するか。先ずは本体とどこまで離れられるかだ。
「ふむふむ。成程。どうやら誰にも見られない。そして、誰にも俺の声は聞こえないらしい」
意外と使い勝手が良いかもしれない。勿論変なことをしようとしているわけではない。情報を集めたり、友達がどのような生活をしているのか見てみたりと色々出来そうだ。親友達の生活を覗いて悪戯してやろうという気持ちが昂ってくる。
いかんいかん。これは俺の人生を知るために生かされているんだった。けど一回くらいなら良いよね。
結果、幽霊の割には自由に行動出来るようだ。行動限界はざっと本体の半径2km程といったところ。本体の状態は常に把握できるようだ。これはあの地に行ける機会はありそうだな。
「ふっふっふっ」
笑みが溢れる。
おっとどうやら本体の俺に会いに誰かが来たみたいだ。戻ってみよう。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ガラガラガラ!」
激しく本体が寝ている部屋の扉が開かれた。兄のユウキが血相を変えて入ってきた。
「スミレ!おい!!冗談はよしてくれ!返事をしてくれよ、、、」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「頼むよ。神様。こいつは誰よりも優しい奴なんだ。生きる資格がある奴なんだよ、、」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「お兄さん。お気持ちはお察ししますが、良い状況ではありません。今は意識不明の状態です。まだ数日は目を覚まさないでしょう。数日後、目が覚めるかどうかはスミレ君の気持ち次第です」
医師が精一杯の気配りをしている。
「そう、、ですか」
俺は兄が泣いている所を初めて見た。両親を亡くした時ですら、我慢してたのだろうか泣いていなかったのに、、。
「俺次第っか、、、、、、」
俺は生きたい以外の選択肢はない。と思う。でも実際は死ぬんだ。テレビで流れていたかのようなカッコいいセリフを並べてもそれは、兄への励ましにはなっていない。その言葉は半分諦めてくださいと言っているようなものだ。
・・・・沈黙が続いた後
「スミレ、俺はもう家族を失いたくないんだ。だから俺よりも早く死なないでくれよ」
「信じてるぞ、スミレ」
兄はそう言うとゆっくりと医者と部屋を後にした。
「ごめん、ユウキ、、、」
込み上げてくるものがある。下の兄弟の為に沢山のことを迷いなく犠牲にしてくれた。これまで、俺たち兄弟を導いてくれた。感謝してもしきれない。俺はまたユウキに辛い思いをさせてしまうんだ、、、、。
未来で同一化したらユウキに何かしてあげようと心に決め、その事を考えながら一夜を過ごすのだった。
翌日、親友のスミレ達、シアやユリなど大学のクラスの友達が見舞いに来てくれた。俺の包帯ぐるぐる巻きの本体を見て、若干引かれながらも、皆が泣いてくれていた。
「スミレいきなりさよならなんて急すぎるよ」
「まだ、、、わからないだろ」
親友達はまだ信じてくれているみたいだ。
「スミレ。またしょうもない話をできることを楽しみにしているよ」
数十分滞在した後、最後の言葉を残して病室から去っていった。病室は嵐が過ぎ去ったかのように静寂だった。
俺は1人になってから、これからどうしたものかと考えるのであった。