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序章 3の法則


 

 20XX年11月22日


 その日は冬を迎えようとするかのように、風に寂しさを感じる日だった。



………「ストラーイク!バッターアウト!!さぁ4対3で迎えた9回裏1アウト1.3塁、りんご高校の攻撃です。次のバッターは今大会絶好調のスミレ選手だ〜!!」………


 …「スカッ」

 ……「スカッ 」

 ………「スカッ、カッキーン」……… 「ファウル!」



「スミレ、打てー!」「負けるな!」



「頑張って、、」


 チームメイトが応援してくれている声とは他に大人の女性の声が鮮明に聞こえた。何処かで聞いたことのあるような、優しい声。


「カキーン!」


「おっと打った!さぁ打球はどうなる」




「センター。取りました。試合終了!」


 俺はグラウンドに蹲る。



「…………お疲れ様」



 姿が見えない。振り返っても誰もいない。それでもその人がずっと見守ってくれている気がした。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「ジリリリリリリリン・・・」


 携帯のアラームが鳴る。


 はっ!


 今日も謎の夢を見ていた。


「よし、いつも通りか。おやすみー」


 俺はスミレ。22歳の大学4年生。起きないといけない時間の5分前に敢えてアラームをセットし、5分間の二度寝タイムに幸せを感じる普通の男子だ。


 当たり前の様に起きて、当たり前の様に大学に行く。友達と面白おかしく話して、帰って寝る。来年には就職を控え、この平凡な生活が終わりに近づくと思うと考える。


「どこで間違ったんだろう」


 何故かはわからない。これまでの生活は楽しかったし、これからも頑張ろうとも思う。

 朝から深く考えすぎかな?よし、学校へ行こう。


 ガラガラガラ.....

「………お、おはよー」

「スミレ、おっはー」

「スミレくんおはよー」 


 今日も平和に一日がスタートした様だ。。笑

 クラスの友達と挨拶する時ってちょっと緊張するよね? そう、俺は小心者なのだ!!


「スミレ~、今日の就職説明会どこの病院にした?」

「一緒に回ろーぜー」


 聞いてきたのは俺の親友5人組。

 サル、スノー、フジ、ユウ、ショウ。

 性格は誰一人として似てないけど気が合う親友たち。

 大学戻りたくない派、戻りたい派いるらしいけど俺は断然戻りたい派になるね!


「○○病院と△△病院かな」 

「お、一緒だ」 

「俺今日はスカだなー」


 俺たちは医療系を目指す大学に通っている。リハビリ職を目指し、あとは、面接と国家試験を残すのみだ。


「うちの病院の長所は~~~」

「君たちにはこういう人材になってほしい」


 病院の職員さんがわざわざ学校に来てくれて熱弁している。


 再び俺は考えていた。


「何してるんだろう。どこで間違ったのかな」


 リハビリ職がやりたくて今此処にいるのではなかった。ただ、なんとなくこの道を選び、何となく勉強をしていた。



 小学生の頃、やけに覚えている言葉がある。少年野球のコーチの言葉。


「試合では必ず3回はチャンスが回ってくる。そのチャンスを掴んだ方が勝つ!」


 そういや、人生でも3回のチャンスが来るだとか、運命の人は3人出会うとか、モテ期は3回来るだとか聞いたことあるな。俺は全てのチャンスを逃しちゃったのか。それにしても、3って運命の数字なんかな??


「おーーい、スミレ」


「もしもし〜、スミレ?」


 一緒に回っていたサルと唯一大学の女子で気負いなく話せるシアが話しかけてきた。


「あれ、説明会は?」

「終わったよ。最近スミレボーッとしてるね。大丈夫?」

「あぁうん、大丈夫。教室行こっか」


 俺は運命に負けたのかもしれない。そんな風に悲観していたら、就職説明会が終わっていた。


 ラウンジには、サルを除いた親友たちとシアの友達ユリがいた。


「おーい、今からみんなで飲み行くっしょ?」


 飲み会担当ユウがほぼ強制参加で誘ってくる。

 いいけどね、、楽しいから。でも今日は、、


「ごめん、俺はパスで、また今度」

「え、パスとか無理よ」


 フジがさらに圧をかける。だが、俺は知っている。あと1.2回濁せば帰してくれることを、、。


「ごめん、ごめん。今日は予定があってさ」

「そっかー、分かった。でも彼女だったらブッ飛ばす」

「んなわけないじゃん」

「なら許す」


 ほらね!最後の会話は少し悍しいけどもう一回言おう。フジは優しいのだ!


 俺に同調してサル、シアもパスとなり、スノーはバイトで帰る予定のようだ。


 結果ユウら3人で飲みに行くことになり、それぞれ解散となった。


「スミレ、今日はお姉さんの命日だったっけ」

「うん。もう2年も経ったんだって感じだな。あの時はみんなに助けられたよ。本当に有り難う、サル」

「いいってことよ。フジとかはすっかり忘れてるけどな。あ、今日俺こっちだから」

「おう、またね」


 それが最後の挨拶になった。


「あ、危ない!!」



「ガッシャン!!!」


 物騒な音が響き渡る。俺は車に撥ねられた。


「ありがとう、楽しかった。でも、叶うなら……」


 この言葉を最後に俺は息を引き取ったらしい。

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