初めての恋(?)
三題噺もどきーごこめ。
ある女の子の初恋?の話。
お題:キャンディ・チョコレート・スカート
恋を、した。
桜の舞う春―ではなくて、蝉の鳴く暑い夏。
目の前に現れた彼に、一瞬で心を奪われた。
いわゆる一目惚れと言うやつ。
曲がり角でぶつかったとか、夏の日差しで立ち眩みになって倒れたとか―そういう少女漫画的な出会いでは無かったが。
「あっづい……」
ド田舎に住む私は、夏のジリジリと焼けるような暑さにバス停で、項垂れていた。
休みの日に、朝から部活に励み、今日は解散ということになり―帰るためのバスを待っていた。
田舎だからなのか(だからだろう)バス停には、私以外誰もいない。
(バスの中も暑いんだけどねー)
バスに乗れば涼しいという訳では無い―むしろ暑かったりする。
うがーと、バス停のベンチで、スカートをばさばさとしながら、涼をとる。
中に短パン履いてるから、平気。
その上、こんな田舎のバス停に、こんな間昼間に来る人なんていない。
それでも、風は太陽で温められているものだから、微妙に生ぬるい。
「お姉さん、それやめた方がいいよ。」
私以外誰もいないバス停に、知らない声が聞こえた。
(え、この時間は誰も来ないはずなのに……!?)
田舎とはいえ、油断しすぎた
「おねーさん。」
「え!?あ、ごめんなさい」
そう言いながら、声がしたような気がした方に顔を向ける。
そこには、綺麗に整った目鼻立ちで、少し長めの黒髪がサラサラと揺れる、同い年ぐらいの男の子が立っていた。
(うわ、ちょー綺麗。どこの人だろ?)
ついつい、ガン見してしまった。
こんな美形生まれて初めて生で見たものだから…。
「こんにちは。僕の顔に何か付いてますか?」
ニコリと微笑む。
まるで天使のよう―というのか、なぜこんな美形に微笑まれているのか全く分からない。
「あ、いえ、ごめんなさい。」
それ以降同言葉を繋げたらいいものか、全く分からず、気まずい空気が流れる。
そこに、タイミングよく、バスが、やってきた。
(うあ、ありがとぅ)
今まで感謝したことなんてなかったけど、今回ばかりは。
バスが来たことを確認し、男の子が歩き出す。
「お姉さん、そんなことしてたら、男子にモテないよ?」
そんな、天使みたいな顔で、悪魔みたいなセリフを残して。
クスクスと、笑いを漏らしながらバスに乗る彼。
「んな―////」
プシュー
バスの扉がしまる。
まるで、馬鹿にしてきたように。
さっきの感謝は撤回だ。
ヒラヒラと、バスの中から手を振る。
そんな男の子を乗せ、バスは過ぎて行く。
「うるっさいわ〜!!!」
イライラしながらも、ドキドキと心臓がうるさかった。
あんなにうるさかった蝉の声が掻き消されるくらいに。
(なんなの、何なの、何なのよ!!!!)
自分の気持ちが分からず、イライラ、ドキドキしてた。
初めは、それが恋だなんて分からなかった。
だって、そんな感情、理解できなかったから。
初めての感情に、心が追い付いてこなかった。
それから、家に帰って、友達と今日あったことを話していると、
「それ、好きってことでしょ!」
と言われた。
「はぁ?何言ってんの?んな訳ないじゃん。」
あんなことを言われて、馬鹿にされて、イライラしていただけじゃないのか?
けれど、友達のその言葉が、自分の中で、やけにスッキリと、飲み込めた。
(これが、恋?)
恋なんて、一生関わることはないと思っていたから。
よく分からない。
恋とはこういうものなのか。
檸檬味のキャンディを食べてるみたいに胸がキューっとして。
甘いチョコレートを食べてるみたいにフワフワして。
新しくて可愛いスカートをはいたときみたいに、心がおどって。
(けれど、これが恋かどうかなんて、私には分かんない…)
それでも、やっぱり彼の事が頭から離れないのは何故だろう。
また、明日会えるかなとか、もう少しお話したいなとか、そんなふうに考えるのは、恋をしているからなのだろうか。
誰か、私に教えてくれないだろうか。
これが、本当に恋なのか。