位置特定ガジェット一斉ハック事件
これを書いたのは、2021/04/25
ちょうどこんなガジェットが出るよって、発表を取り上げた番組を見たのがきっかけ。
タイトルがすべて。
機能としてこんなのを使って、ここまで便利だよって紹介されたんです。
けどさ、こうなるんじゃね?
とか思ってしまった訳で。
世界に衝撃をもたらした怪物。
現実のものに架空の札付けをし、その付けたタグがどこに有るかを特定する、対となった携帯端末のアプリケーションと小物。
カギや財布などの無くしては困る物に、そのガジェットをキーホルダー感覚で吊るしてタグ付けし、アプリケーションで連動させて場所を特定する。
その有効範囲はとても広く、自身の持つ携帯端末でカバー出来ない範囲は、他者の同じメーカーの端末にも協力させてタグを発見する仕組みである。
こんな物が発売された。
最初は、電池が1年しかもたず、電池交換等のメンテナンスの手間かかる。
特定精度の甘さ。
機能の悪用でストーカー専用アプリと呼ばれる。
それらの要因からあまり売れず、キワモノ扱いしかされなかった。
確かに便利かもしれない。
だが今まで無かったものだし、無いなら無いで構わない物である。
そのぐらいの物なのに、ガジェットを購入したり電池交換して機能を維持するのに、金を払う価値が有るのだろうか?
そう思ってしまえば、消費者などは見向きもしなくなるだろう。
実際、販売・サービスが開始されても、低調続きであった。
このままではガジェットの販売も、サービスも終わってしまう。
それを否とする声が、ネットであがった。
どこの誰かは知らないが、滅多矢鱈にこのガジェットを持ち上げる、SNSアカウントが立ち上がったのだ。
《このガジェットが凄い!》
《なくし癖のある人の救世主!》
《実質的な、紛失保険!》
《こうなればこのガジェットはもっと便利になる!》
《神ガジェット!》
《もっと便利なガジェットの使い方!》
ビックリするほど有能なガジェットである。
だから流行れ。 もっと普及しろ。
その暑すぎる熱を放出するSNS。
これには閲覧者ドン引き。
テレビ局でも、キワモノに熱をあげすぎる変人として取り上げる程だった。
しかし、それをきっかけとして、事態は動く。
企業が目を付けたのだ。
営業の者が、外へ持ち出す会社のノートPC。
これを紛失する騒ぎが、時折起こる。
会社のPCには、地味ながらも重要な社内データが入っていたりする。
クラウドで繋げたPCならば、被害は最小限で済む?
それはそうだ。
しかし、しかしだ。
その営業が独自に組み上げた、営業成績に直結する秘密のノウハウを入れていたら?
クラウドに繋ぎっぱなしの状態で紛失していたら、対策されるまでの間、情報が盗まれ放題ではないのか?
素早く対策がなされたとして、ただのノートPC扱いだとして、買い直す手間や被害額の補てんは?
紛失したそのPCに社名があったら、PCを拾った者がその社員だと身分を偽って、悪さをして会社の信用が落ちる危険性は?
そう考え出したら、止まらなくなった。
熱心なSNSのそいつも、それを指摘していた。
そこからは早かった。
様々な企業が位置特定ガジェットを大量発注を始めた。
するとガジェットも改良が始まり機能が充実し、電池交換までの期間が延び、値段も企業努力で下がる。
安くなれば、試しに買ってみようかと思う個人が増えて、その便利さに驚く。
最終的には、安価な電池不要のガジェットとなった。
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ここまで行くと、生活に無くてはならないガジェットとして、定着する。
使い方も洗練され、より便利に。
より生活に密着して行く。
そしてある日、その事件は起きた。
ガジェットの基本機能。
多数の携帯端末を使って、探したいタグの位置を特定する。
これが狙われた。
そう。 これはアプリケーションを通じて、他人の端末を操れるのと同義である。
各端末に、位置特定用の捜索電波を出させる。
ただそれだけであるが、これは詰まる所、端末の乗っ取りだ。
そこに目を付けたのだろう。
命令を拡大し、端末を乗っ取れる様に書き換えるだけ。
それだけで同メーカーの端末は全て操作不能になり、大規模な個人情報流出事件となる。
もちろん位置特定ガジェットは緊急で、一時サービス終了。
同メーカー端末も全て対策のために、一斉回収と改修に追われる。
使えない間は、このガジェットに慣れきっていた人達は、物の紛失を繰り返す。
あのSNSはいつの間にか削除されていて、キナ臭い残り香しか残さず消えていた。
乗っ取りをしかけた端末らしき物は見つかったが、用意周到なのか、犯人につながりそうな痕跡は見つからず。
犯人も結局特定できぬまま、藪の中に消えた。
幸いだったのは、流出したと思われる個人情報が、一切世に出なかった事だろうか。
この事件は、ネットワーク環境がある限り語られ続けるだろう。
位置特定ガジェット一斉ハック事件として。
ここまで普及するか分かりませんが、結果ありきの雑なシミュレーションとして。
対策がなければ、あり得る予測として。
実際にどんな仕組みで、位置特定用の電波をキャッチしているか知らないけど。
その情報を他者の端末を通じてやり取りさせるのは、ゾンビ化した端末を使ってのDDoS攻撃を連想しちゃって、どうにも心配になっちゃったんですよね。
なお、この作品は犯罪を推奨したり、正当化をする意図はございません。
こんな事件が起きなければ良いな。 と心配し、願うものです。