表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
職業、仕立屋。淡々と、VRMMO実況。  作者: わだくちろ
Main

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

96/473

65日目 お任せデート(3)

 場所は変わって、現在私達はレスティンの中央市街にいる。すぐそばに王立学院の校門が見える位置だ。

 こんなことして使用人のひととかに怒られないのかなあと思いきや、シエルちゃんは御者のお兄さんにしっかりお駄賃を握らせていた。『与えられた権力とお金は活用させてもらってる』……、あの台詞に嘘はなかったらしい。


 で、現地調達するだとか何とか言ってたから、制服を扱っているお店にでも行くのかと思ってたら――――――。


「あ、ティルダだわ。うふ、こうもグッドタイミングで現れるだなんて、何ていい()なんでしょう。ティルダ! ちょっと! こっち来なさいよ!」


 ――――――シエルちゃんは悪い笑みを浮かべて、同じ学院生と思しき制服姿の女の子に声をかけた。ティルダと呼ばれたその女の子は、何だか怯えたような顔をしながらもこちらへやって来る。


「こっち。ビビアの隣に立って」

「あ、いいわね。体型そっくり。サイズもぴったりに違いないわ」

「ひゃ、ひゃい? あの、何でしょうか……」


 まさか……? と、私は背中に冷や汗を流す。


「じゃ、それ、脱いできて」

「へ?」

「あなたのその学生服一式が必要なの。だから今から寮戻って、私服に着替えて、それ持ってきて」

「あなた貧乏な奨学生だから、どうせ代えのドレスとか持ってないんでしょ?」

「え、えええ!?」

「後でちゃんと返すから大丈夫よ。早くして。ほら、ダッシュ!」


 ツインズに強いられ急かされ、ティルダちゃんは顔を青くしながら慌てて校門の奥に駆けて行った。そしてすぐ私服姿で舞い戻ってきて、いかにも渋々といった様子で学生服を献上する。


「ちゃんと返してくださいね! お願いですよ!」と繰り返す彼女を置いて、次に案内されたのは学院に程近いアパルトマンである。

 シャンタちゃんがそこの一室の扉を遠慮なく叩くと、何と出てきたのは、口のきけない少女ヴィティちゃんであった。

 そこ、繋がりあったんだ! という驚きに浸る余裕もなく、双子はずかずかと開かれた扉の奥へ侵入していく。


「はろーヴィティ。ちょっと部屋貸してね。着替えるだけですぐ行くから」


 とても横暴な態度だが、でもティルダ嬢のときと違ってヴィティちゃんのほうは、特に嫌そうな顔はしなかった。慣れているのだろうか大人しく道を空けて、私と目が合ったときにはにこっと微笑む余裕さえある。

 パーティを組んだのは結局あの一回きりだったけど、覚えててくれたのかな?


 そうして私は女船長から、レスティーナ王立学院の学生に大変身したのだった。

 経緯(いきさつ)はちょっとアレだったけど、ツインズとお揃いで女学生コスができるのはなかなか嬉しい。落ち着いた青色のドレスと赤いリボンタイの組み合わせが可愛いんだよね~。

 で、これで準備が整い、校門から堂々と忍び込むのかと思いきや――――――。


「ちょっとビビア。なに正面から行こうとしてるのよ」

「あなた学生証持ってないからダメよ。こっち」


 ――――――シエルちゃんに手を引かれやって来たのは、ひと気のない敷地の裏手、小さな林であった。

 その木立の奥に、不自然に凹み歪んだ、銅板の扉がある。学院と外界を隔てる鉄柵、その一部として取り付けられたものだ。

 開けるのにちょっとコツがいるのよね。独りごちながら、シャンタちゃんが扉全体を持ち上げるようにがたがたと弄ると、やがてそれは軋みを上げながらゆっくりと開いた。


 ……えーっと。

 私の心の中で、一つの疑念とも予感とも言える考えが頭をもたげる。

 でもそれに私は蓋をして、なるべく目の前のイベントを楽しむことに思いを集中しようと努める。なんだけど……。


「ファティ、いいところに来たわね。第二書庫の鍵、貰ってきて」

「あなた図書委員でしょ。あそこ静かで涼しくて、休憩するのにぴったりなのよ」


 図書委員の少年を顎でぱしらせ、且つ恐らく平時は立ち入り禁止と思われる場所を私的利用することに何の躊躇いもない、シエル&シャンタちゃん。


「あらアルベ。明後日の数学の課題、忘れるんじゃないわよ」

「提出はまず私達に、ね?」


 課題は他人任せ、初心な青年にあざとく上目遣いで微笑むシエル&シャンタちゃん。


 挙句の果てに、まさかの登場でリルステン嬢が現れた際には、光の速さで踵を返す。


「シエル? シャンタ? 屋敷から通っている君達が、休校日にここで何をしている? あ、待ちなさい。その者、学院の生徒ではないね? 見覚えがある……確か竹君の友人だったか……。こら、だから待ちなさいって! 君達、いい加減振る舞いを改めないと今に地に落ちるよ!? 私は君達のことを想って言っているんだ……!」

「ぜーんぜん、何のこと言ってるのか、わっかりませえーん」

「さすが学年一位の優等生様のお話は知性に溢れてて、私達のような愚民には理解が及びませんわあ~」


 予感は、確信に変わった。


 ――――――シエルとシャンタって……悪役令嬢枠なのおおおお!?




******




【きまくらゆーとぴあ。トークルーム(公式)・総合】



[MSR@SK]

デイリーミッションやってリル愛でて後は放置だわ


[hyuy@フレ整理中]

ログ眺めてて気になったんだが、大工のミラクリスキルが集荷でなく時限ってどういうこっちゃ?


[Itachi]

家具とか建築物は装備できないから、ミラクリでスキルが付いたとしても「習得可能」にはならないらしい

代わりに「時限」、つまり使用してから云十分該当スキル使用可能になるだとか

俺も現物に出会ったことはないので詳しくは分からんが


[Wee]

時限スキルの利点はスキル付与を所有者に限らないってところだね

さらに建築とかだと付与できる人数も増えるから、一定時間パーティメンバー全員がそのスキルを使える、とかできる


[陰キャ中です]

うちのクランホーム、時限で馬の目付いてるよ!(ドヤァ


[バーボン]

いらねえ…


[ミラン]

3D酔い必至のクソスキルじゃねーか


[パンフェスタ]

有名どころで言うとシラハエのわたわたショップかね

一日先着4名で警戒が付くから、0時前には必ず人が並ぶ


[おろろ曹長]

え、無差別で付いちゃうの?

それって所有者側としては微妙やな


[水銀]

いや、建築の場合はいわゆる“スキルの間”をどこにするかを事前に選べるから、ショップエリアに設定しなければok

YTの場合は多分宣伝も兼ねて敢えてショップを設定してるんだろ


[msky]

大工物に時限スキルが付くってことは、もしかして特装じゃない他の生産物にもその手のミラクリスキルが付くのか?

織り師のも?


[深瀬沙耶]

付くよ

布とかの中継ぎ産業じゃなければ


[송사리]

(´;ω;`)


[トリケラ]

加工系職業ではないからしょうがないのかもしれないけど、園芸師もそういうのないよね


[にゅー]

園芸はあれ、この流れでカテゴライズするとしたら採集と同グループだから


[Itachi]

薬が大工と同じ時限、料理がMOBにスキル付与、だっけか


[マリン]

へー

こうやって情報が出てくるってことは、何だかんだでどの職業にもちゃんと国宝は存在するんだな


[レティマ]

いなくない?いるの?


[KUDOU-S1]

>>マリン

いないよ

一時的な実験とか一時の気の迷いとかの結果、偶然スキル付きが確認できただけであって、

その後もそれを安定供給できるかどうかってのは全く別の話


[((ぼむ))]

大工のYTYT、仕立屋に春南とブティック、鍛冶師のビス子

俺が知ってる国宝はこんなもんかな


[パンフェスタ]

談話室民じゃないしほぼ同盟専属だから表には出てこないけど、一応料理人のてつぼうもいる

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
仕立屋コミックス&書籍発売中(^ω^)
9wjng0gw7g1fbkp61ytqbgewajkh_zl9_71_a1_1byr.jpg9wjng0gw7g1fbkp61ytqbgewajkh_zl9_71_a1_1byr.jpg9wjng0gw7g1fbkp61ytqbgewajkh_zl9_71_a1_1byr.jpghtml>
― 新着の感想 ―
[一言] PC(ビビア)はダミーでボカされるだろうけど(現状誰か丸わかりとは言え)、NPCが言った人名は残るだろうなぁw 参加して無いのにヒストリア入りだぜwww
[一言] これ公開されたらリル廃達が「リル様に叱っていただける」シチュに新たな扉を開きそう。
[良い点] 国宝に愛用されてるけど直接スキルがつかないから扱いの軽いキムチさんかわいそす
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ