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職業、仕立屋。淡々と、VRMMO実況。  作者: わだくちろ
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65日目 お任せデート(2)

「驚いた? うちってお金持ちでしょう」

「私達はこんなにお転婆なのにね」


 二人の私室に通されお茶をいただいていると、彼女達はそんなことを口にした。


「エドヴィーシュ家は成金なのよ」


 何てことないように放たれた言葉は、私の胸をどきりと高鳴らせる。

 そんな心の内を見透かしたかのごとく、シエルちゃんはにやりと口角を上げた。ああもう、意地悪可愛いなあ!


「爵位を貰ったのは十二、三年くらい前だから、本当に最近ね。私達が物心付くか付かないかの頃」

「飛空船による輸送業を個人で始めたのが大成功したの。その後国主体で始まったダナマとの交易にお父様は多大な貢献をして、功績を認められて貴族の仲間入りってワケ」

「でも、本当に仲間に入れてもらったわけじゃないの」


 そこでシエルちゃんの瞳に鋭さが増し、シャンタちゃんの瞳に影が差す。ああそうか、と私は胸中で独りごちた。

 家柄や伝統を重視する古くからの貴族が、唐突にのし上がってきた成金貴族を忌み嫌うなんて、よくある話だ。

 多分シエルちゃん達の立場は貴族からも平民からも距離を置かれる中途半端なものなんだろう。生まれてきたタイミングなんて特に、エドヴィーシュ家にとって不安定な過渡期だったようだし、家格の変化の影響を二人は諸に受けてしまったのかもしれない。


「貴族なんてくだらないわ。毎日毎日、やれ茶会だの、やれパーティーだの、やれ接待だの、馬鹿みたい。お陰で元々忙しかったパパは、年を経るごとにもっと忙しくなるばかり」

「口を開けば作法、マナー、家格、伝統、歴史、身分。あいつら、私達が文字を一つ間違えるだけでも大笑いだし、一つくしゃみするだけでも大顰蹙なのよ」

「だからママは心と体を壊したの。今は田舎で療養中」

「手紙は毎週寄越してくれるけど、もうずっと会えてないの。顔すら思い出せない。私達と同じ、灰色の優しい瞳を持つこと以外は……」


 傍若無人に振る舞う一方、二人はもどかしい日々を忍んできたようだ。寧ろそういった物事への反発心が、服装や生活態度に表れているのかもしれない。


「ビビアが羨ましいわ」


 おもむろに立ち上がったシエルちゃんは、窓の外を眺めながらぽつり、そう呟いた。


「たった独りで王都に出てきて、お店を立ち上げて、それを自力で発展させて。……ううん、とても大変だってことは分かってるの。けど、自由だわ」


 え、やばい。ちょっと泣きそうかも。

 何そのギャップ。何その切ない過去と現在。

 運営、まさかこの設定のまま二人を飼い殺すなんてことしないよね!? ちゃんと救済イベント用意してくれてるよね!?

 そうでなかったら私、貴族街に火を放っちゃうよ!?


 そんな私の危うい考えは露知らず、振り返ったシエルちゃんは一転、不敵に笑んで舌を出す。


「なんてね。ま、その分、与えられた権力とお金は活用させてもらってるわけ」

「さあ、一息ついたところで、屋敷を案内してあげる」


 と、そこからは自由行動ができるようになった。私が移動すると、二人も勝手に付いて来てくれる仕様だ。

 先のデートでお世話になったスタジオ機能も使えるようになっている……! なるほどね~、今からしばらくはこの特殊な景観の中で好きにスクショを撮れる時間ってわけか。

 さらに屋敷の各所で二人に話しかけると、色んな説明だったりエピソードだったりも語ってくれた。


 しんみりした空気からいきなりこんなお楽しみモードに移行したので、ちょっと複雑な心持ちではある。けど、このまたとない機会を無駄にするわけにはいかない。

 私は華やかなエドヴィーシュ邸を存分に見て回り、ツインズのスクショと動画を撮りまくった。えへへ~、前回実現しなかった薔薇のアーチのもと佇むアンニュイシエルシャンタも撮れちゃった。

 これは是非ゾエ君にお裾分けしたいところ。お詫びの意味も込めてね。


 すると十分満喫した辺りで、シャンタちゃんが唐突に提案してきた。


「そうだわビビア。次は私達の通っている学院を案内してあげる」


「ああ、それはいいわね」とシエルちゃんも同意する。


「ビビアはテファーナ様に弟子入りしたわけだから、学校なんて行ったことないでしょう? きっとあなたにとっては珍しいんじゃないかしら」


 学院。確かに行ったことがない。興味もある。

 ……ただ、あそこって関係者以外立ち入り禁止だったはずでは?


「変装すればいいのよ。生徒に」

「私の制服を貸してあげる。ああでも、サイズが合わないわね」

「現地で調達すればいいわ」


 なんか、雲行きが怪しくなってきた? だ、大丈夫かな~~~~……。




******




【きまくらゆーとぴあ。トークルーム(公式)・総合】



[Peet]

>7/1のアップデート予定

>①レベルキャップを150まで開放します。

>②新システム“臨界解放(アンロック)”を実装します。


[吉野さん&別府]

スキル追加とかはないかんじ?

普通にステータスの成長が見込めるだけか


[否定しないなお]

アンロックって何じゃ

確かハイスキルが「臨界の極意」だったから、これに関係してそうだけど


[陽子@SK]

きまくら。恒例説明不足な不親切告知キタアアアアーーーー


[ピアノ渋滞]

告知してくれるだけ親切だと思ってしまう被訓練兵


[パンフェスタ]

運営「新しい玩具作っといたから遊べよ。玩具の場所? 自分で探しな(鼻ホジ)」


[おろろ曹長]

運営様はこのようにして我々に、謎を探る喜び、理解する喜びを与えてくださっているのです

ありがたやありがたや


[コハク]

限度があるのよ限度が


[ロード]

私が思うにきまくら。運営って金が絡むところにはやたら丁寧に解説入れてくる

それ以外は極力スルー


[universe202]

誰だよ良運営とか言ってた奴


[モシャ]

とりあえず情報屋は頑張れ

マジで応援してる


[にゅー]

このゲームで情報屋が受け入れられてるのって、

運営が勿体ぶってるんだか適当なんだかで情報公開したがらないからだよね

きまくら。でなければあのクランのシステムは通用しない説ある


[ミラン]

情報屋はもう素直にブティックに凸してくれ

ミラクリ考察埒が明かん


[Peet]

あーそれね、情報屋は動かないだろうし諦めたほうがいいよ

リンリンが仲裁入ったから表向きは関係良好だけど、あそこ結社の男衆三人、特にゾエとバチってる

ゆうへいはゾエの尻尾踏むような危険は冒さんよ


[ミルクキングダム]

チート疑惑の件、情報屋の攻略サイトが発端だっけか

明記されてはいないものの、あの記事はライターの悪意マシマシだったからなあ


[MSR@SK]

会社にせよクランにせよ、組織のトップは大変だわな

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― 新着の感想 ―
[一言] サイズが合わない、、、、、、『色んな意味の大きさの』意味でかな?
[一言] チート疑惑ってビビアじゃなくてゾエベルへのやつだったんですね。私も誤読してた。
[一言] “サイズ”が合わない!
感想一覧
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