350日目 ルイーセ
【きまくらゆーとぴあ。トークルーム(公式)・獣使いについて語る部屋】
[たこみそ]
幻獣の性格で最強なのってやっぱ頭脳明晰なのかな
[ちょん]
頭脳明晰、勇敢、好奇心旺盛
この辺じゃね?
[レティマ]
忠犬も扱いやすいけどねえ
[まろ]
性格の違いなんて微差よ
どんな性格でもその内愛着湧いてくるんで
[ミルクキングダム]
それはそう
ただし凶暴、てめえは駄目だ
[yamatohoshi]
凶暴はあれ性格というかはずr…
[ringo]
もしかして性格凶暴って調教不可なの?
[おでん]
時間かけて根気強く頑張ればいけるよ
でもさすがに調教持ちなだけのインスタント獣使いにはお勧めしないかな
絆はどうにかなっても、忠実と行儀は他のジョブスキルないとどうにもならん
[じゃんがりあん]
正式獣使いだとしても、効率めっちゃ悪いからリセマラ推奨だわ
ユニーク個体で気に入ってるとかなら話は別だけど
[しのぶ]
凶暴の変化先って命知らずか神経質でしょ?
この時点で既に頑張る価値ないよなあ
[わかめごまめ]
キティズの凶暴ならぎりぎり許す
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ログイン350日目
依頼された舞台衣装を納めるべく、私はライブハウス【ヴルペキュラ】に向かった。
まずは、今日も裏口でうろついているアーベンツ氏に話しかけてみる。
「こんにちは、ビビアさん。おお、ついに例のモノが完成しましたか! どれどれ……」
衣装を見せたという体なのだろう、彼の頭上にはビックリマークが浮かんだ。
「これは……なるほどね、そうきましたか。うーん、ちょっと日和ったんじゃないですか、ビビアさん。……いや、でも」
ディープカラーを所望していたアーベンツは、やや期待外れといった表情になる。やっぱり君的には、このアンサーは許せなかったかなあ。
と、弱気になる私だったが、時間が経つにつれて彼の顔色は徐々に変わっていった。
「なるほど……なるほど……! 俺が想像していたものとは大分違いますが、どうやら衣装の出来は素晴らしいもののようです。尚且つ統一性があり、ルイーセ様とライリー様、どちらにも大変似合いそうです。白と濃い色の中間を取るというのは最初逃げのようにも思えましたが、確かにこの色、このデザインなら、お二方どちらの個性も潰さず、寧ろ両方の魅力をさらに輝かせる、そんな舞台を演出できるでしょう!」
おおー、なんか気に入ってもらえたっぽい。まずは第一関門突破だ。
気持ちを明るくする私に、しかしアーベンツは声を落として忠告する。
「ただし、ルイーセ様がこの衣装を良しとするかどうかは微妙なところです」
「で、ですよねー……」
「もっともルイーセ様は、決して厳格だったり頑固だったりするわけではありません。これほどの素晴らしい衣装を前にして、あなたの努力を否定したりはしないでしょう。しかしライリー様をこよなく愛する彼女を喜ばせることができるかどうかといえば……それはまた別の話なのです」
まあ、それに関してはそうだよねーってかんじだ。
でもいいの。全部覚悟の上でやってることだから。
というわけで、私は気を引き締めてヴルペキュラの楽屋に乗り込む。そうしてルイーセに話しかけると――――――。
「……私、新衣装は是非“白”でって、頼みましたよねえ」
――――――案の定、注文の品を受け取ったルイーセは口をへの字に曲げるのだった。で、ですよねー……。
でもそこは懐の深い賢人様、アーベンツが保証した通り、彼女は不満を露わにしつつも私の仕事を無下にしようとはしなかった。
「まあ、この衣装自体は素晴らしいものです。さすが今をときめく仕立屋さんのニューデザイン、ライちゃんに似合わなくもないのです。っていうか、ライちゃんは基本何でも着こなせるスーパーガールですからねっ。次のライブまでは時間がないですし、作り直せというのは酷な話でしょう。今回はこの衣装を採用させていただくこととします」
やった、通った。良かったあ。
でもルイーセのこの様子、この流れからすると、果たしてこれでちゃんとリザルトSのライブになるのかちょっと心配だ。
あのー、ルイーセさん、よくご覧になって? その衣装ね、色味のご期待には添えなかったようだけど、ミラクリはちゃんと付いてますんでね。
そんなふうにはらはらと気を揉む私に、ルイーセからは「た、だ、し!」と念押しが。
「あなたにはもうひと仕事、いえ、もうふた仕事、頼まれてもらいますよっ。確かにこの衣装はとっても素敵ですが、私が所望したのはライちゃんを最も輝かせる穢れなき白なのです! こんな、私を体現したような中途半端な色では、私の目指す舞台には満たないのです。ライちゃんの至高のステージを目当てに来ているお客さん達を、満足させられないかもしれません。ですから今回に限っては、小細工をする必要があるのですっ」
「『小細工』って……?」
「バックダンサーを用意します。そしてあなたには、“いりしゅあげいと”のステージを華やかに彩る二人のダンスガールを探してきてほしいのですっ」
「えっ」
「それともう一つ。あなたもライブチケットの販売に協力するのですっ。これはノルマなのですっ」
【“いりしゅあげいと”のライブチケット×21】を手に入れた!
そんなメッセージが表示されると共に、所持金が十数万キマ、マイナスされる。
「これをお友達や家族に売るのです。でもって、ライブハウスを満員にするのです。リクエストを反故にされたんですから、あなたにはこれくらいしてもらわないと割に合いませんっ」
お、おおう……なるほどね? こういうかんじで、ライブにプレイヤーを招待できるようになるわけね?
でも予想してなかったことが複数同時に起きているので、ちょっと混乱している。
『バックダンサー』って何? そんな要素、ネット情報には載ってなかったはずだよ。
それに最高ランクのライブでも、招待できるプレイヤーの数は10人までだったはず。なのに渡されたチケットの数は21枚、自分抜きにしたら20人も招待できることになる。
ミッションの成功度合いと招待可能人数が比例するとしたら、これは良いことに違いないんだけど……未だぷりぷりしているルイーセの様子や話の流れからするに、上手くいっているともあんまり思えない。
「チケットを捌き、バックダンサーが決まったら、また私に話しかけるのですっ。ライブスケジュールはその時伝えるのですっ」
え~~、どういうことだろ~~、これ。
喜んだらいいのか残念がったらいいのか分からないまま、私はヴルペキュラを後にするのだった。








