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職業、仕立屋。淡々と、VRMMO実況。  作者: わだくちろ
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347日目 恋のデスマーチ(1)

ログイン347日目


 さあ、やってまいりましたよ、この日が。

 ダムさんの人生と深瀬さんの覚悟を賭けた、一世一代の大勝負当日。舞台はパラディス・ラッシュ真っ盛りの【銀河坑道】だ。


 そして私はダムさんの恋路と深瀬さんのファイトを見守るため、ここにいる――――――というのは建前で、どちらかというと“フラッシュモブ”たるものへの興味のほうが強い。

 告白の手法としては大分危ない橋でしょーっ、とは思うものの、他人事として見る分には好奇心をそそられる。

 きまくら。で、しかも友人に頼んでとのことだから完成度に期待してはいけないと思いつつ、一体どんな演出なんだろうと、わくわく半分はらはら半分な気持ちだ。


 勿論二人の痴情のもつれが如何なる結末へ向かうのか、下世話な野次馬根性もあるにはある。でもこれは知りたいような知りたくないような感覚であるからにして、怖いもの見たさというものに近い。

 つまり私は肝試し中なのだ。うひーっ。


 そしてそんな私のそばに、なぜか今、愉快な仲間達が。


「深瀬さん、動きがいつにも増してキレッキレですねえ……」

「デートだからって張りきってるんでしょ」

「張りきりどころが間違ってる気が……。ダムさんちょっと置いてけぼりっぽくなってますよ」

「あいつ独りで全部やるじゃん。全部の獲物狩ってくじゃん」

「これは……キャリー……!?」

「ダムを姫にしてどーする」


 マユちゃんとバレッタさんである。

 丁度浅層の大洞穴でダムさんと深瀬さんの姿を見つけたものでこそこそ追いかけていると、ばったり鉢合わせた次第であった。その後二人はさもそれが自然とでも言わんばかりに合流、どういうわけか行動を共にすることとなっている。

 でも話を聞いていると、二人も深瀬さんに頼まれて来ているようだ。


「失敗したら即行フォロー入って慰めてほしいんですって。可愛いですよね~深瀬さん」

「後始末とかめんどくさ」

「またまた、バレッタさんたら。そんなこと言いつつこうやってちゃんと面倒見てあげてるっていうね」

「だってあのかんじ、基本失敗とかないでしょ」


 なるほど、応援要請があったのか。

 そしてもし深瀬さんが負けそうになったら、一緒になってダムさんに立ち向かう計画、と。最悪数の力で捻じ伏せて、その後勝利の酒宴を開く予定、と。

 ……あれ、もしかしてこの流れからして、私も戦力に組み込まれてる? いやいや、さすがにそれはご免被るよ。

 【脱出の羽】……は、ちゃんと持ってきてるね。よし、いざとなったらとんずらしよう。


 因みに「ヨシヲは?」って聞いたら、『呼ぶわけないでしょ』って二人同時で冷たい言葉が返ってきた。

「深瀬さんをよろしく頼む~」みたいなメッセージを送ってきた内の一人だったから、彼もグルなのかと思ったんだけどな。どうやら応援隊には呼ばれなかった模様。

 ……まあでもそりゃそうか。そりゃそうだ。


 そして二人は、今日深瀬さんが着ている服のことについても聞いているらしく。


「めっちゃ似合ってますよね~。超カッコイイ! さっすがブティックさん、深瀬さんに似合うものよく分かってる~。……でも正直、勝負服にあの系統を持ってきたのはちょっと意外」

「そーね、意外ではある。けど深瀬らしさが良く出てるし、あれはあれでアリなんじゃない?」

「そうですね! すっごいクールなのに、なーんか色っぽさあるし!」


 へー、そうなんだー、意外なんだー。と、私としてはやや不思議な感覚である。

 そうすると二人とも深瀬さんと同じように、もっとハードでゴツい衣装を予想していたのかな?

 うーん、結局中身の深瀬さんアバター自体は格好良くも可愛い女の子なわけだし、外側だけ強面(こわもて)にしたってアンバランスな気がするんだけどなー。私のセンス、ちょっとずれてるのかなあ。

 まあ結論評価は悪くないみたいだし、一旦いっか。


 それはさておき二人の言う通り、今日の深瀬さんはいつにも増して生き生きしているように見える。そして彼女が本当に狩りが強いプレイヤーであることは、こうして傍目から見ていても分かった。

 今回はダムさんと深瀬さんの二人きりパーティみたいなんだけど、ほぼほぼ深瀬さんの独壇場みたくなっている。

 ラッシュとはいえ、まだ難易度の低いエリアだからっていうのもあるんだろう。でも現れる幻獣現れる幻獣、全部深瀬さんが狩ってくの。


 さすが飛び道具使いの後衛職ってかんじで、状況把握力と危機管理能力がピカイチなんだよね。常に安全地帯を確保して、全く攻撃を受けずにびしびし矢を放っていく。

 たまに隙を突いて近付いてこようとする敵もいるんだけど、そこら辺の零れ弾は彼女の眷属獣たるワニ君が処理していくという完璧な布陣だ。


 ダムさんも【獣使い】らしく三匹の幻獣を連れているんだけど、今のところ彼含め全員所在なさげにうろうろしているだけに見える。そして深瀬さんは時折そんな彼を振り返り、さりげなくドヤ顔を決めるのだ。

 どうやら早速ウォーミングアップが始まっている模様。「次はおまえの番だ」――――――ノイズとなって散っていく敵モブ達の骸を背に、深瀬さんの笑みはそう告げている。


 そういえばバレッタさんは、二人のこの行軍を『デート』と呼んでいたっけ。ダム氏もまさか、これが自身に破滅をもたらす“ラストデート”だとは夢にも思ってないんだろうな。


 そんなふうに心理的攻防を繰り広げる二人を、私達はこそこそ見守りつつ()けていく。そしてついに、ダムさんがサプライズイベントを用意している中層のとある地点まで差しかかった。




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