306日目 ミコト(前編)
【きまくらゆーとぴあ。トークルーム(公式)・総合】
[竹中]
つよつよな棒・杖で草
[否定しないなお]
うほーっ、イロモノ護身具きちゃー!
[(・´з`・)]
>>竹中
動きが鈍重ぽいし俺は棒・杖のほうが好きだな
見た目はかっけーけどな、オオバサミ
[もも太郎]
うーん、外見のインパクトデカい割にアクション普通だな
面白い形の護身具なんだからもっと変わった技コマンド欲しかった
傘とか旗みたく
[千鶴]
ビス子氏にアンティーク風デザインのオオバサミ作ってほしい
[カタリナ]
オオバサミ来たということはコバサミも来る?
[ゾエベル]
想像するとコバサミのほうが猟奇的なかんじするの不思議w
[くるな]
犯罪者臭凄いから実装されないんちゃうか
[ポワレ]
>③遠征ヘルプで駆け付けてくれるキャラクターが、確率でプレゼントした装着アイテムを身に着けてやって来るようになります。
↑新キャラと新護身具で盛り上がってるけど、自分としてはこれが一番嬉しい
[おでん]
わかる
自分のショップにそんな愛着ない遠征職だから、ようやっとここで均衡図ってくれたかってかんじ
[ミラン]
遠征ガチ勢はNPパーティとか組まんから何にせよ関係ないのでは
[mtd k]
NPパーティって他のプレイヤーに見えるわけでもなし、衣装が変わってるのなんて自分にしか分からないじゃん
そんな嬉しいことかね
[ちょん]
嬉しいに決まってるだろバッキャロー
ディルカのあんな技こんな技があんな衣装こんな衣装で拝めるんだぞ
うひょーい、ソロ遠征捗るうー!
[YTYT]
あんなコスこんなコスのメフモの抱き付き治療…
固定パ組むためにクラン作ったけど、抜けようかな…
[ねじコ+]
こらこらこらー!
[チャーリー]
リル様遠征ヘルプ入り、正座待機
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ログイン306日目
「こんにちは、ビビア。元気?」
今日も今日とて店頭に出て作業していると、少年の声が降ってきた。癒し系なわんこ男子、ミコト君だ。
彼はカウンターに身を乗り出し、尻尾をふりふり、見るからに上機嫌だ。うむ、今日も愛いのう。
シエシャンやリル様は華やかで、きゃーーってなる可愛さだけど、ミコト君は眺めてると心が穏やかになるような、のほほんとした魅力があるよねえ。
みんな違ってみんな良い。おいでよきまくら。、楽園はここに在る。
「この前ね、ちょっとした臨時収入があったんだ。それでこれ、良かったら君に……」
言って彼はてれてれもじもじと顔を赤らめながら、リボンでラッピングされた包みを差し出してきた。受け取ると、『【星影の髪飾り】を手に入れた!』とのダイアログが表示される。
あらあら~、ミコト君たら女子にアクセサリープレゼントするだなんて色男じゃないですか~。
それともこれはそういうことなのかな? そういうことと受け取っても良いのかなっ?
と、にまにまするワタクシ。
……ところで今彼、『臨時収入』って言ったよね。この子学生ではないっぽいけど、何か本格的に仕事してるのかなあ。
例えば親からお小遣いを貰ったとかだったら、臨時収入なんて表現にはならないと思うんだよね。ちょっと捻くれてるとか頭の良さそうなタイプの子ならそういう言い方もあるかもだけど、ピュアで真面目なミコト君だと想像し辛い。
遠征ヘルプで参加してくれるくらいだし、やっぱり本業は冒険者なのかな。
あとミコト君、家族の話とかしたことないんだよね。NPパーティで遠征行くと大抵の子とは仲良くやってるんだけど、元々の交友関係も見えてこない。
彼が普段どんな生活を送ってるのかとか、バックボーンだとか、すっごく不透明なんだ。性格が分かりやすいミステリアス系なわけでもないから、なんかそこが余計違和感っていうか。
なんてことを頭の隅で考えていたらば、どうやら“ビビア”も同じことを思い、且つ疑問を口にしたらしい。ミコト君は目をぱちくりさせ、「え? 仕事?」と私に聞き返してきた。
「えっと、う、うん、そうだね。勿論働いてるよ、冒険者として。じゃなきゃ僕みたいな親もいない学校にも行ってない子ども、食べていけないもんね」
あ、やっぱり天涯孤独の身っぽいんだね……。
若いのに生活を支えるため頑張って働いて、余ったちょっとのお金でこうして私にプレゼントを買ってくれるだなんて……。うう、なんて健気な子なのミコト君。
私は涙ぐむスタンプを押して彼を労う。
するとそこで、鐘の音と共に店の扉が開いた。
やって来たのは線の細い、つやつやのプラチナブロンドをおかっぱにした美青年――――クリフェウスだった。
彼も最近、うちの店に顔を出してくれるようになったんだ。っていうのもこの間、ちょっとした情報を仕入れましてですね。
レスティーナ四賢が一人にして、学院卒業生でない“未就学児”に高額資金援助や素材の優遇といった数多の恵みをもたらしてくれるというこのキャラクター、基本的には【採集師】の店に現れるという設定らしいのね。
つまり私のジョブ【仕立屋】みたいな加工アイテムを売ってる店じゃなく、素材屋さんを好むみたい。
でもね、ゲーム仕様上のその判断基準が滅茶苦茶がばくて、何でも素材アイテムを一個でも売り物として店頭に出してれば、それだけでクリフェウスは素材屋として扱ってくれるんだって。
そんな話を小耳に挟んで以来、私も適当な薬草とかを何かしら一個は売り物に登録してるんだ~。
ぶっちゃけクリフェウスは性格が難アリってイメージが強くて、私的にはそこまで好みのキャラクターではない。でもレアな素材を頻繁に持ち込んでくれるからさ、こうして餌を置いて誘き寄せてるの。
つまり彼とはビジネスライクな関係なのです。
で、そんなクリフェウスはミコト君が傍にいるのもお構いなしに真っ直ぐ近付いてくると、いつものあのきらきら儚い笑みを向けてきた。
「やあ、ビビア、会えて嬉しいよ。え? また仕事を抜け出してきたのかって? や、やだなあ、別に僕は仕事をサボってここに来てるわけじゃないよ。休憩時間に息抜きとして君に会いに来てるだけだってば。君の笑顔には、【パラダイスジュース】にも勝る滋養強壮成分が含まれているからね」
言ってクリフェウスは、猫のように大きな瞳をとろんと細めて微笑んだ。
いやあ、こんな甘々キザキザな言葉をこんな優しいふわふわした顔で囁いてくるんだもんなあ。
このキャラデザはほへプロ、やってますわ。女子を沼に沈めようとする、運営の本気が垣間見えますわ。
「分かってる、心配しないで。すぐ城に戻るから。ただ今日はこれを、どうしても君に渡したくて、ね?」
彼は私の顔を覗くように小さく顔を傾けると、さっきのミコト君と同じように、綺麗にラッピングされたアイテムを差し出してきた。
お、来た来た、これですよこれ。正直君に関してはどんな甘い笑みや殺し文句よりも、ゲンブツシキューのほうに期待してますんでね。
さて、今日は何をプレゼントしてくれるのかなー、とうきうきしながら受け取ると――――――。
【リリイクラウン】を手に入れた!
――――――ありゃ、リリイクラウンですか。








