285日目 たからばこ(1)
【きまくらゆーとぴあ。トークルーム(公式)・遠征クエストについて語る部屋】
[Wee]
鼓舞は狩人と獣使いのジョブスキルだった気がします
[しい☆]
暇だからサポートマッチング回したらアポレノのツバメ駆除班にぶち込まれて萎えた
[イーフィ]
抜けるなよ
ぜってー抜けるなよ
[しい☆]
抜けねーよ
ちゃんときっちり一時間付き合ってボス狩ったわ
俺以外全員身内だったみたいだけど初対面の俺にも色々話振ってくれてちょっとほっこりしたわ
友達増えて嬉しかったわ
[ねね]
実はイイ人マウント乙
[くまたん]
ツンデレ?
[ハロー]
ツバメ駆除は二度とやりたくないクエスト第一位だわ
フィールドギミックもめんどいしボスもめんどい
[3745]
キャラは可愛いんだけどね
プーリッチュとファインスワロウ
親指姫リスペクトなんかな
[梅雨乃]
きまくら。では姫側が健気だからアンチテーゼかも
[Syu-kuri-mu]
あの話ツバメ可哀相過ぎるよねー
[おでん]
即抜けサポーターはほんと滅びてほしい
他のサポーターの評判にも影響出る
てかきまくら。において果たしてこのシステム必要だったか?
[えび小町]
ペナルティはもっと重くしてもいいよな
[msky]
きまくら。じゃパイセン=害悪みたいなもんだしな
[東谷]
>>ハロー
ボス戦のギミック理解してない人が混ざってると絶望するよね
ただでさえ長いクエストなのにさらに延長入って、しかもその分人集まってくるから報酬も減るっていう
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ログイン285日目
ねじコちゃんからの連絡はすぐに、会ったその日の内に来た。どうやら人集めも日程決めもトントン拍子で進んだらしい。
そうして一夜明けた本日、私達はダナマスのギルドにで待ち合わせることに。
「どもー」
「っすー」
「ど、どうもお久しぶりですー。今日はよろしくお願いします」
集った顔ぶれは、私もよく知るものだった。名無し君とミラン君――――そう、ねじコちゃんと同じく、【賢人達の遊戯会・エリン主催編】にて同じチームでお世話になったメンバーだ。
2、3か月ぶりなのでどうしても他人行儀感は出てしまうけれど、面識ある人なのは良かった。少なくとも、私がどれだけ鈍臭いプレイヤーかってことには理解ある人達だからね。
ねじコちゃんは皆を見回して、嬉しそうにはにかむ。
「みんな、今日は急な声かけにも拘わらず集まってくれて、ありがとうございます。実はこんなふうに同窓会みたいなこと、やってみたかったんだ」
同窓会、なるほど。
あ、じゃあゾエ君も呼んでみる? 来れるかは分からないけど。
そう申し出ると、ねじコちゃんは「あーっ、いいのいいの!」と勢いよく手を振った。「ゾエさんとバレさんはほぼほぼ固定パでやってる人達だからさ、邪魔しちゃ悪いじゃないですか」とのことだ。
「それに私が企画した以上、最低限の秩序は欲しいですから。私、手に余るものは扱いたくないんです」
弧を描く口元に反して、彼女の目は笑っていない。どうやらこっちが本音のようだ。
手に余るモノとして除外された二人が、どうか同窓会に自分達だけ呼ばれなかったことに気付きませんよーに……。……ま、傍から見れば普通に知り合いどうしでパーティ組んで遊んでるだけだし、ゾエ君もバレッタさんもそういうの気にするタイプじゃないか。
それから私達は、挨拶もそこそこにロビーの席を立つ。早速【アポレノの古城】に向かおうというわけだ。
しかし私はそこで、ふと強い視線を感じて動きを止めた。振り向くと、ニット服のお姉さんがじっとこちらを睨んでいた。
知らない人だったので不思議に思う。けれどすぐ、彼女が見つめているのは私ではないことを悟った。
「あ……」
傍らから反応があったのでそちらに目を向けると、ねじコちゃんが白い顔でお姉さんのほうを見ていた。
二人を見比べていると、何気なく、お姉さんと私の視線がかち合う。
しかし彼女は何を言うこともなく、つと顔を背けて歩きだした。そこに三人の男女が追随する。
リーダー格っぽいお姉さんに注目してたから気付かなかったけど、彼等もこちらを意識していたようだ。ある者はちらちらと視線を寄越しながら、またある者は申し訳なさそうな顔で会釈し、去って行った。
「知り合いか?」
名無し君がぞんざいに尋ねると、ねじコちゃんは硬い面持ちで頷いた。
「……前入ってた、クランの人達」
「へーっ」
何が面白いのやら、名無し君はにやにや笑ってる。ねじコちゃんと彼等の間に流れた緊張感を見るに、絶対愉快な話じゃなさそうなのにね。
そうは思いつつも、この少年のことは最近嫌いじゃない。ワルい奴なのは言動から明らかなんだけど、芯はブレないかんじあるんだよね。
今もさ、二人のやり取り見て、名無し君不躾だなー、思いやりないなーってちょっとイラッとするじゃん?
……なんか、そういうとこなんだ。彼に注意が削がれることにより、重かった空気が少し軽くなるの。
「余所のギスギスを肴にするなし」
実際ねじコちゃんも、じとっとした眼差しでこんな軽口を叩ける程度には気を持ち直してるわけだし。
本人は意識してやってることじゃあないんだろうけど、こういう人が有難い場面も結構あるよな~。
――――――そう思っていた時期が、私にもありましたとさ。








