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職業、仕立屋。淡々と、VRMMO実況。  作者: わだくちろ
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247日目 異邦人の衣装セット(後編)

 外套の下に着るのは、こちらもケロケロナイロンで仕立てた白い【ワイシャツ】である。留め具をマットな質感の銀色ボタンにしてみた。


 流離い衣装準拠だとボトムスはカーゴパンツなんだけど、マトさん『しゅっとした』かんじがいいって言ってたからね。ここは黒の【スキニーパンツ】に変更しましょう。足元はそのまま、和風なロングブーツを合わせる。

 うん、モダンで清潔感があって、でもちょいちょい攻撃的な一面が見え隠れしてるのがいいね。ただちょっと洋のほうに寄せ過ぎたかな。


 じゃあアクセサリーで和を足そう。

 ということで、片耳ピアスを作製することにする。


 細工師でない私でも簡単に作れそうな和風モチーフっていうと、やっぱ組紐細工かなあ。

 そしたら“あわじ玉”を作ろうかな。紐を結んで作る、ころんとした球体の細工だ。

 【ロイヤルシルクの組紐(灰色・極細・素材用)】であわじ結びを作って、糸を編み込むように玉を作っていく。お花の蕾のような、素朴で可愛らしい飾りが出来上がった。


 これにさらに同じ組紐で作った房飾り(タッセル)と、竹氏メイドの【日輪金のチャーム(梅・小)】を【丸カン】で縦に繋げ、【ピアスフック】を取り付ける。はい完成~。

 耳元でゆらゆら揺れる、存在感のあるピアスとなった。


 さあすべての工程が恙無く終了した。どんなアイテム内容になったか、見ていこう。



【異邦人の外套】

品質:★★★★

ケロケロナイロンで作られた服。

主な使用法:装着

効果:[猛毒]無効 フィールドギミック[雨冷え]無効 

消耗:550/550

習得可能スキル:ヴィラネル

セットボーナス:集中+260

(ヴィラネル:任意発動スキル 消費- 使用者の[耐久]を、基礎[耐久]×0.5回復する)


【異邦人の耳飾り】

品質:★★★

ロイヤルシルクで作られたピアス。

主な使用法:装着

アビリティ:忍耐 陰険

消耗:200/200

(忍耐:[耐久]に10割のダメージが入った場合、残り「1」で持ち堪える)

(陰険:対象が接近してダメージを与えてきた場合、確率で相手を[毒]状態にする)



 ふんふん、まあ悪くはないといったところかな。アイテムそのものの効果はちょっと汎用性に欠けるかもだけど、スキルは便利でいいね。

 何てったって消費持久ゼロとのことだもの。その代わりクールタイムはそこそこあるっていうのが定石だろうけど、回復系は腐ることはないでしょう。


 デザインも大変満足のゆく出来となった。

 モデルとなった流離い傭兵の衣装の横に並べて飾ってみても、結局全然違うファッションになったね。流離いのほうは和テイスト強めのダーククール、異邦人のほうは洋テイスト強めのライトクールってかんじ。

 マトさん気に入ってくれるといいな。


 仕事に区切りが付いたので、私はほっと一息つく。そして何気なく窓の外の景色に目をやると、馴染み深い人影を見つけた。

 きーちゃんだ。

 私は外へ出て、彼女に呼びかけた。


「きーちゃーん」


 きーちゃんはその声に応じて振り返り、ほわっと笑みを咲かせる。


「びーちゃん、いたんだね。お邪魔してます」

「ようこそ私の別荘地へ!」

「あはは、思いきったことしたね。まさかこんな場所を占有しちゃうなんて」

「うん。人口密度高いもんね、ちょっとびびったよ。でもあの青い実の樹が気に入ったからさ~、勢いでやっちゃいました」

「あ……やっぱり【ネビュラツリー】目当てだったんだね……。けど今のところ平和そうだし、案外大丈夫なのかな?」

「そうそう、結構気にならないもんだよ~。ご近所さんは多いけど区画一つ一つが広いからね」

「そうなんだ。まあ、びーちゃん結社とか金融の人達とかとも交流あるし心強いよね。大胆なことできるのはちょっと羨ましいかも~」


 のほほん、と世間話に興じる私ときーちゃん。でも微妙に会話が噛み合ってない気がするのは私だけかしら?

 ま、きーちゃん、天然ぽいところあるからね。このふわふわした笑顔を見てると、こっちも細かいことなんてどうでもよくなっちゃうね~。


 そこでふときーちゃんは、私の後ろ――――今日建てた私お手製のお家に視線を移す。


「これ、びーちゃんが建てたの?」

「そうなの、初建築」

「いいね! 苔生したかんじが林の景色によく馴染んでる」

「えへへ。秘境エリアに別荘持てるってんで、これを機に建築スキル取っちゃったんだ」

「わかる、私も同じ」


 え? ってことは、きーちゃんも秘境拠点マスター?

 って、そりゃそうか。彼女も老師で、占有条件を満たしてるはずだ。


「うん。私は空中庭園のほうにしたよ」

「あー、好きそう。もう何か建てたりしたの? きーちゃんの拠点も見てみたいなあ」

「ほんと? じゃあ今からうち来る? 私もまだ一軒しか建ててないけど、時間あるならぱぱっとおいでよ」

「わ、行く行く~」


 きーちゃんからお誘いを受けた私は、その足で一緒に【彼方の空中庭園】へ向かうことに。

 わー、他の人の秘境拠点にお呼ばれするのは初めてだから、なんだかわくわくするなあ。色々勉強させてもらおー。

 と、そんなことを考えつつきーちゃんに付いて行ったらば。


「ここなんだ。まだ一つ建築しただけで庭とかも何もいじってないから、ちょっと恥ずかしいんだけどね」

「……恥ずかしいって、え……」


 ……なんか、世界文化遺産みたいなお城建ってるんですけどおおおお!!!!

 何このクオリティ! デカさ! 細かさ! センス!


 いやでも、さすがにか。

 さすがにこれ、公式レシピだよね。自分で資材組み合わせて建てたとかじゃないよね。


 だってそもそも、空中庭園そのものが見つかったのがここ数日のことなんだよ? その後即建築を始めたとしたって、こんな短期間でこんな力作がぱっと生み出せちゃうだなんてそんなわけ。

 きっときまくら。ワールドのどこかにはこういう素敵なお城をぽんと建てられるレシピが存在してるんだよね? いやあ、さすがだなあ、きまくら。


「ううん、実は自分で建ててみたの。勿論一からデザインしたわけじゃないよ。きまくら。の建築動画視るの前から好きで、色々参考にさせてもらってるんだ。あとはロンドンのお城をテーマに……でも造ってる内に、全然方向性変わってっちゃうんだけどね」


 それオリジナルじゃん! ほぼほぼオリジナルじゃん!

 人はそれをオリジナルと言う……!!


「びーちゃんの拠点も勉強になったよ~。私も苔、取り入れてみようっと」


 ギャー! ヤメテー! もう思い出さないでー!

 こんなん見ちゃった後じゃあ、私の建てた小屋なんてプレハブ物置だよ! 百人乗るとダメなほうの物置だよ!


 きーちゃんの高度な煽りに戦慄きながら、私は胸に誓ったのだった。

 撤去しよう。あの建築、一刻も早く撤去して、公式産のどこにでもあるレシピ住宅に変えるのだ。




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