25日目 ふたり(後編)
「このお遊びもいい加減終わりにしましょう、シャンタ」
シエルちゃんにそう言われて、むすっとした顔のシエルちゃんは溜め息を吐いた。何を言ってるか分からないと思うけど、うん、私も何言ってるか分からないんだもの。
「あーあ、ビビアったら意地悪だわ。毎回毎回、シエルばっかり贔屓して」
「贔屓じゃないわ、実力よ。だってそうでしょ、ビビア? 実際私のコーディネートのほうが、一枚上手だったんだものね?」
後発シエルちゃんに有無を言わさぬ視線を投げかけられた私は、咄嗟に頷いてしまう。
すると先発シエルちゃんはふんっとそっぽを向いて、突如纏められていた髪を解いた。乱雑に手櫛で髪を梳く彼女の姿を見て、私は息を呑む。
――――――似合ってる。
シックながらも隙のある彼女のレトロなファッションは、几帳面に結い上げられたきちんとヘアよりも、今のゆるふわロングヘアにこそ似合っていた。
「それじゃ、改めて自己紹介するわね」
ぽかんと見惚れる私の前に、二人は並び立ってあの挑発的な笑みを浮かべる。
「私がシエル」
髪をきちんと結い上げた、後発シエルちゃんが言う。
「そして私はシャンタ」
髪を下ろした、先発シエルちゃんが言う。
『私達、双子なの』
――――――ふ……ふたごおおおおおおおお!?
「ゲームしてたの」
「同一人物のふりしながら、どっちのファッションセンスがイカしてるか勝負しようって」
「体形、顔立ち、人柄、付き合いの長さ、全部が全部公平な、忖度なしの真っ向勝負よ」
「でもビビア、途中から気付いてたでしょ。私達が二人いることに。じゃないと説明がつかないわ。毎回毎回、シエルのほうが優れてるだなんて。それに、私達のどちらかが連続で現れれば、優劣付けないんですもの」
「うふふ。私達を見破ったのは、あなたが初めて。私、あなたのことが気に入ったわ」
「シエルったらすっかり調子に乗っちゃって。ふん、私のセンスが見抜けないだなんて、その目は節穴に違いないんだから」
混乱しきりの私を他所に、二人はすいすいと話を進める。そして先発シエルちゃん――――――つまりシャンタちゃんは、ぷんすかと怒って店を出て行ってしまった。
あ、あ、ごめんよシャンタちゃん。なんか勘違いしてるみたいだけど、双子だなんて全然これっぽっちも気付いてなかったんだ。
っていうかあなたが髪を下ろしてたなら、もしか私は延々と決められない系の選択肢をぽちり続けてたかもしれない。
私が呆然とシャンタが出て行った扉を見つめていると、ふいに真下から甘い声が響いてきた。
「ねえところでビビア、店主とお客とはいえ、ずっと交友を深めてきたんだもの。私達って友達だと思わない?」
見ると、シエルちゃんがカウンターから身を乗り出して、上目遣いでこちらを窺っている。きらきらした灰色の瞳に、緩んだ唇。
私はカラクリ人形のごとく首肯すると共に、花を飛ばすスタンプを連打しまくった。
はい、私はシエル様のお友達です。寧ろ下僕です。犬と呼んでいただいてもかまいません。
「友達って、お仕事のとき以外にも会うものだと思うの。一緒にお出掛けしたり、ランチしたり、お茶したり」
その通りでございます。シエル様の仰る通り。
「じゃあ、今週末か、週明けの月曜日。空いてる日、教えて?」
はい、もちろ、ん、………………え……。
ええええええええええええええ!?
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【きまくらゆーとぴあ。トークルーム(公式)・デートイベントについて語る部屋】
[モシャ]
>>YTYT
自身を写していないところは評価する
だがそのにっこにこのメフモの目の前におまえがいることを考えると、やはりくたばってもらう他ないと思う
[Itachi]
>>YTYT
コーヒー飲んだあとの反応激カワ
テファに捧げた一途な心が一瞬揺れたは
[深瀬沙耶]
>>YTYT
しっかりエリンに見せびらかしに行くあたり腹の黒さを感じる
[イーフィ]
がしかしエリンのこの余裕よ
[송사리]
エリン「面倒見てもらって悪いな!」
↑さらっとマウント取ってますがな(´・ω・`)
[パンフェスタ]
(画像)
ほいよ今週のメンバー一覧
[レティマ]
有能
ダークモスちゃんのお腹に顔を押し付けてもふもふする権利をあげる
[パンフェスタ]
拷問じゃねーか
[狂々]
目玉はクリフェウスくらい?
なんかぱっとしない週だよな
[もも太郎]
ディルカがいる
いい加減にしろ
[耳。]
アンゼローラ様がいるじゃねーかいい加減にしろ
[ゾエベル]
シエル様がいるじゃねーかいい加減にしろ
[深瀬沙耶]
ディルカもアンゼも一部根強い人気があるのは分かるけどリルニキ戦とかミコネキ戦ほど興味をそそられないのは事実
[ゾエベル]
ついに俺のターンがきた
[ねじコ+]
>>もも太郎
>>耳。
リル廃さんみたく隠れなくていいの?
[송사리]
シエルニキ無視しないだげて(´;ω;`)
[YTYT]
あいつのターンは永遠にこないから
[耳。]
>>ねじコ+
リル廃がデート週の前半トークに参加しないのはデート権を勝ち取って自慢するやつを避けるため
昔それで実際に顰蹙を買ったやつがいてだな
且つ自身がうっかり口を滑らせて同じ轍を踏まないためにも談話室には顔をださないのがマナー
…みたいな変な文化がある
要するにあいつらが特殊なんやで
[もも太郎]
竹エ
[パンフェスタ]
竹は勝っても敗けても喋るんで許してやれ
[レティマ]
他プレイヤーとデート中のリルにも余裕で話しかけるしね








