202日目 選出(3)
きーちゃんの勧めを受けた私は、今回のイベント、特にリーダーの役割がどういうものなのかについて、改めて詳細をじっくり読んでみることに。
まず、リーダーに着任したプレイヤーは、十三賢人それぞれを頭目とした十三の派閥のどれかに属すことになる。
この振り分けは関わりの濃いキャラクターをなるべく優先しつつ、運営のほうで調整する模様。
けど複数のリーダーが同じ賢人派閥に所属することはできないので、場合によっては全然接点のない賢人のとこに配属される可能性もあるようだ。
で、このリーダーに基づいて、さらに五人のチームメンバーがプレイヤーから選出される。
この選出基準は、主にリーダーのフレンド、或いはそのフレンドのフレンド、といったふうに繋がりのある人間が優先されるみたい。そこはちょっと安心。
まあレベルや職業といった能力値も鑑みて選ばれるそうで、やはり確実に知り合いが選ばれるとは限らないみたいだけどね。知り合いが選ばれたとて、その人が試合に出られるとは限らないわけだし。
とはいえ完全ランダムよりかはマシである。
とりまきーちゃんは参加するにしても確実にライバルチームだし、クー君は不参加だしで、既にフレンド候補は二つ潰れているわけだが……一人くらいは知り合い引っ張ってこれるでしょ。一人くらいは。
そうしてこのリーダー含めた六人のチーム×13で、四日間試合を行う。
そう、四日間。ここが前回の老師戦とは大きく違うところの一つだね。
もっとも当然計96時間丸々拘束されるわけではなく、ゲーム参加時間は一日につき三時間となっている。
一応ちょっとしたログアウトは許容されるそうだけど、あんまり抜けが長かったり頻繁だったりすると参加資格失効となるそうだ。そうなったら代わりに別のプレイヤーが入る仕組みらしい。
これだけでも大分出場できる人間が限られてくるよね。
一か月後とかならまだスケジュールの調整が利くだろうけど、今日参加要請が来て試合はおよそ十日後だもんなあ。しかもリーダー以外のチームメンバーはリーダーが決まってから選出なわけだから、さらに後になるわけでしょ?
結構な殿様運営である。それで通用しちゃうほどにプレイヤーが訓練されてるってことでもあるんだろうけど。
え? 私?
来週木金土日の20時から23時でしょ? うん、別に空いてはいますけど。
さてそうなると、チームメンバーではないその他大勢のプレイヤー達はどう関わってくるのかって話になってくる。
何でも彼等は支援ポイントを好きなチームに献上できるらしい。支援ポイントはイベント期間中のスペシャルミッションをこなすことにより入手できるそうだ。
それぞれのチームは貰ったポイントで資材やアイテムなどを交換できて、試合を有利に進めることができるんだって。
どのチームを支援するかは自由で、途中で替えるも自由だそうだ。
ここら辺、きーちゃんが試合を『茶番』と評したのも納得である。このルールだと外野プレイヤーの好みやノリで簡単に戦況覆りそうだもんね。
なるほど、そう考えるとあんまり真剣にやるようなイベントではないのかもしれない。試合に臨むプレイヤー達は、主役というよりかはパトロン達の手中で踊る駒――――――なんて言うとちょっと人聞き悪いけど、要はそんな責任感じる役回りじゃないってことでもあるからね。
私にとってその辺の仕組みは、逆に気楽にやれていいかも。
で、支援プレイヤーはどこが勝ったかどこを支援したかに拘わりなく、自分が貢献したポイント分の報酬を受け取れるんだって。
因みに試合に参加するメンバー達も同じようにして支援ポイントを稼ぐことが可能で、支援するチームも自由らしい。まあ彼等は当然、少しでも自分達のチームに貢献しようとはするだろうけどね。
肝心の試合はというと、先にも述べた通り、ざっくり言うと拠点争奪戦となる。
参加するチームはまずそれぞれ、六つの陣地を割り当てられる。これはどの賢人に属するかで最初から決められているようだ。
エリン君がイベント説明で『フィールドは世界』って言ってるように、きまくら。ワールドを縮小化したマップになってるらしいね。
それと共に各チームには、イベントアイテムである六つの【チェスピース】が配られる。
各チームは割り当てられた六つの領土に六つの建造物を建て、この中にチェスピースを隠す――――厳密に言うと建造物の中でなくてもいいようだけど、建築したほうが有利になるギミックがチェスピースにあるようだ――――。
ライバルチームのチェスピースを奪えば、そこでその陣地は攻略扱いとなり、自陣にできる。最終的には陣地、並びにチェスピースを幾つ所有しているかで勝敗が決まるとのことだ。
へー、結構面白そうかも。且つ、頭使いそうだなー。
メンバーをどれだけ攻めに回すか防衛に回すかとか、どこに配置するかとかも重要そうだよね。駆け引きや運も大きく絡んできそうだなあ。
しかもさらにそういった特色を強める要因となりそうなのが、『密談フェーズ』の存在である。
デートツアーと似たようなかんじで、このイベントもこの時間はこれをやってねっていう区切りがあるんだよね。その内の一つが密談フェーズで、これは二日目以降の準備フェーズ中に設けられた、リーダーのみ参加できる対話時間となっている。
誰と対話するかというと、それがなんと他チームのリーダーなんだってさ。
要は、本来ライバルであるはずの他チームとの協力もありってことなんだ。情報を横流しすることもできれば、二つのチームで一つのチームを攻めることもできちゃうってわけ。
そういうルールになってくると当然、裏切りのリスクも込みで考えなきゃならなくなってくる。この手のゲームにおいてプレイヤーとの口約束ほど当てにならないものはないからね~。
うわーこれ、寧ろ外野のほうが面白そうまであるなあ。
例によって今回も観戦モードありの配信オーケーで、あと元アイドルの木本澄香さんがコラボ配信する運営視点では、その都度熱い展開のある視点を映してくれるらしい。人間どうしの醜く楽しい争いが見れそうで、めっちゃジュースが進みそう。
いずれにせよ、人の心理が大きく関わってくるからには賭けに出なきゃならない、イコール運絡みの場面も多くなるわけで、その点は私のようなゲーム弱者にとっては好都合とも言える。
リーダーは一応チームの纏め役ってことになってるけど、他メンバーとの明確な差は、この密談に参加する権限があるかないかってことくらいのようだ。
だったらメンバーお任せでゲームを進めることも容易だろうし、何なら密談フェーズだってメンバーの意見に従って臨めばよさそう。
外野は確かに楽しそうだけど……ま、今回きーちゃんも頑張ってることだし、他視点を後で見返すのも面白そうだしね。
よっし、承知しました。リーダーもとい道化もとい傀儡の役目、私でよければ引き受けましょうとも。








