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職業、仕立屋。淡々と、VRMMO実況。  作者: わだくちろ
Another

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202日目 選出(2)

ログイン202日目


 約束の日。


「どこか行きたいところはある?」


 そう尋ねられ、「お任せするよ」と答えると、連れて来られたのはとある貴族の屋敷だった。

 そこでは、彼が大嫌いなはずの華やかなパーティーが開かれている。彼の顔色はあからさまに悪く、無理をしているのは一目瞭然だ。


「大丈夫?」


 プレイヤーが気遣うと、彼は「ちょっと休んでくるね」と言って、ふらりとどこかへ消えてしまった。

 プレイヤーはしばらくの間パーティー会場にて独り寂しく過ごす。しかし彼はなかなか帰ってこない。

 心配になったプレイヤーは彼を探しに行くことにする。すると何と、彼は屋敷の片隅のサロンにて、沢山の少女達を侍らせて交流に興じているではないか。

 その楽しげで放縦なありさまたるや、現代で言う合コン、またはキャバクラを彷彿とさせる景色である。


 まさか彼が自分をほったらかしにして、女の子達との遊びに耽ってるだなんて……! ショックを受けるプレイヤーと、彼の視線がかち合う。

 彼はアイスグレーの瞳に冷たい光を宿して、言い放った。


「君も僕に、同じことをしてるんだよ」




 ……えーっと、きまくら。ってサイコホラーゲームでしたっけ。


 クリフェウスお任せデートのダイジェストムービーを観終えた私は、頭を抱えるのだった。

 聞いてない、聞いてないよこんなの。

 私が衣装を手がけたマユさん、楽しいデートイベントを過ごせたのかな~。そんな軽い気持ちで開いた動画で、まさかこんなもんにょりした気持ちになるなんて聞いてないよ……!


 いやちょっとこれは酷いでしょ運営。“デートイベント”なんて銘打っておいて、プレイヤーに札束ファイトさせておいて、この内容は叩かれても文句言えないよ……!

 私がシエルちゃんにこんなんされちゃったら……されちゃったら……、……あれ、でもそうなったらそうなったで、「そっか……シエルちゃん私のせいで寂しい思いしてたんだ……。ある意味そこまで私のことを想ってくれてたんだ……。ごめんねごめんね、これからはもっともっとシエルちゃんだけに愛情注ぐからね!」とか思っちゃいかねないかもしんない。


 外野で、客観的に見ているからこそ「こんなイベント用意してる運営オカシイ」って思えるけど、当事者だったら案外ヘイトの矛先は運営に向かないかもな……。おのれ運営、それもこれも計算済みか、小賢しい!


 なんて情緒不安定になっているところへ、郵便配達の通知が入る。確認すると噂をすれば何とやら、運営からのメッセージだった。



ユーザーコード:XXXXXX

ビビア 様


 日頃より“きまくらゆーとぴあ。”をご愛顧いただき、ありがとうございます。

 この度、ビビア様は【賢人達の遊戯会・エリン主催編】のチームリーダーの一人として選出されました。

 つきましては、17日から開催される当イベントに是非ともリーダーとして参加していただきたく、招待状をお送りしております。

 リーダー着任に同意いただける際は、注意事項を参照の上、下記のURLよりお申し込みください。

  :

  :



 はたと固まるワタクシ。

 以前にも二回受け取ったことのあるこの手の招待状。でも今回のものはちょっと事情が異なることを、私も知っている。


 順を追って説明すると、まずご想像の通り、来週からまたワールドイベントが始まるんだ。それが【賢人達の遊戯会・エリン主催編】。

 なんかね、それぞれの賢人を頭目とした十三の勢力に分かれて、拠点争奪戦みたいなことをやるっぽい。で、各チームごとのリーダーを老師から選出するらしく、その方法がなんとユーザーによる人気投票だったんだよね……。


 といっても私含め多くのユーザー達は、55人もいる老師プレイヤーを全部把握なんてしようがない。

 それで便宜上は「好きな老師に投票しよう」っていうんではなく、「好きな老師称号(・・)に投票しよう」となっている。要するに「字面がかっこいい老師に適当に票入れとけばそれでいいよ^^」ってワケ。

 そうして適当に選ばれた十三人の内の一人が、【夢幻の右手を持ちし者】たるこの私なのであった……。なんでやねん。


 印象で何となく選ばれているとはいえ私の称号そこまで強そうなイメージもないだろうに、正直納得がいかない。これ系のイベントは生産力より遠征力が問われることが多いってすぐ分かりそうなもんだし、もっと強そうで頼もしそうな称号の人いっぱいいるのに。


 とはいえかく言う私もきーちゃんの老師称号【白雨の織姫】に投票しちゃったりしてるんで、あんまり文句言える立場でもないんだけど……。

 いやー、だってどこに投票すればいいのか、真面目に考えれば考えるほどによく分かんなかったんだもん。

 一応投票すると【成長の書物引き換え券】が貰えるので、それ目的でどこでもいいから投票するか~ってノリでやっちゃった。別に私一人変なことしてたとして、その他大勢のユーザーが参加しているこの投票イベントに影響なんて及ぼさないでしょって。


 ……はっ、まさかそういう私みたいな思考の人が大多数だったせいで、今私がリーダーとして選出されているという奇妙奇天烈なことが起こっている……のか? これが民主主義の罠……?


 と、思いがけず世の中の闇を覗くこととなったその時、トークの通知音が鳴り響く。きーちゃんだ。

 ん? きーちゃん?

 なんか、デジャ・ヴが……。



[송사리]

あ、びーちゃん?

あのさあ、次のワールドイベントのリーダー参加要請、来てない?来てるよね?


[ビビア]

ひえっ


[송사리]

冷え?


[ビビア]

あ、いや…な、なんで分かったの?


[송사리]

んー…談話室の悪ノリ的流れからしてこうなりそうだなーと…

私のところにも来てるってことはびーちゃんとこには尚更票が集まりそうだし…


[송사리]

まあ、何となくだよ何となく


[ビビア]

そうなんだ…


[송사리]

びーちゃん、出る?

リーダーとして


[ビビア]

えーっと


[송사리]

一緒に出ようよ(; ・`ω・´)



 だよねー、やっぱこうなるよねー。予想通りの展開に複雑な気持ちの私。

 いやあ、楽しそうだなとは思うよ。けど今回のお誘いって、先のミステリーデートツアーだとか老師戦だとかとは訳が違うんだよね。

 だってチームの『リーダー』ですよ、『リーダー』。私のミジンコメンタルじゃあ、責任の重さに耐えきれないよ……。



[송사리]

びーちゃん、イベントの説明ちゃんと目を通した?

リーダーっていっても、私達の勝ち負けが他のユーザーに影響するようなルールにはなってないよ

その辺は運営もちゃんと配慮してくれてるみたい


[ビビア]

そうなの?


[송사리]

うん

試合に参加しないプレイヤーはチームに貢献するごとにポイントを稼げる、みたいなかんじなの

試合自体はある種茶番っていうか

試合に参加する六人のチームメンバーは勿論いい成績収めるほどいい報酬貰えるんだけど、

他ユーザーはあんま関係ないの


[송사리]

要は代表選手を出しにしてわちゃわちゃ騒ぎたいだけなんだよ

この前の老師戦とほぼ同じだね


[ビビア]

へー、そういうかんじなんだ


[송사리]

そもそも私達立候補したんじゃなく、選ばれてリーダーになってるわけだし

それで文句言うのはお門違いでしょ

そんな人そうそういないよ



 うーん、割と世の中そんな人ばっかだけどなあ。……とは、通話スピーカーの向こうで純粋な瞳をきらきらさせているであろうきーちゃんには言えず。

 まあでも確かに、まだイベント詳細だとかリーダーの役割だとか、ちゃんと理解してるわけじゃないんだよね。「リーダーなんて無理無理!」って頭ごなしに否定するんじゃなく、ちゃんとそれがどういうものなのか知った上で決定すべきかもしれない。



[ビビア]

分かった!

じゃあとりあえず前向きに検討しますってことで


[송사리]

頼んだよー(´;ω;`)

私も悩んだんだけどさー、身内で選ばれてるもう一人のリーダー候補が「やるわけないじゃん」って言うからさー


[ビビア]

身内?

…あ、クー君?


[송사리]

そう

折角選んでもらってるのに二人も辞退するの、なんか申し訳なくって

主に運営に


[ビビア]

きーちゃん、運営にまで気い遣ってるんだ…

その運営、プレイヤーに札束の殴り合いさせて推しキャラの女遊び現場を目撃させる運営ですけど、そこまでする必要あるかな…


[송사리]

あ、話題のデートダイジェストw

びーちゃんも視たんだね

あれ酷かったよねーw


[송사리]

でも結局、自分で面白そうだなって思わなきゃ、こんな挑戦しないけどね!



 なるほどねー。まあ、そりゃそうだよね。

 ゲームだものね。責任感じてやるようなものじゃあないよね。

 うん、じゃあ私もその方向で考えてみようかな。「楽しめそう」って思えるようなら、やってみよーっと。




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― 新着の感想 ―
まぁまぁ酷いがクリフェウスがプレイヤーのことを把握して言ってるとしたら、シエシャンはガチでビビアの事一番好きそうだし、浮気されたら拗ねそう。AIが感情持ってるのかね?
[気になる点] やっぱりというか、想像以上にショックを受けるデート回だった。 でも、彼の立ち位置からすれば当然のことなのかも。ゲームだからといって何でも好きにしていいと思うなよっていうこと⁉
[良い点] おっ、消費者庁コラボイベント来ちゃう?()
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