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職業、仕立屋。淡々と、VRMMO実況。  作者: わだくちろ
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161日目 明るい未来(表編)

ログイン161日目


 ツェツィーリア率いるマルモアレジスタンスは一時勢力を強め、シルヴェストを追い詰めていく。

 しかし賢人や老師をはじめとする各国の名士達が立ち上がり、反乱は鎮圧された。ツェツィーリアは捕らえられ、ダナマの人々は何事もなかったかのように以前の生活に戻った。


 ある日牢獄の彼女を、かつての恋人マティエルが訪ねる。彼は「僕が身元引受人になった」と告げ、彼女を自身の研究所に連れて行く。

 ツェツィーリアが軟禁されている部屋のネームプレートには、「被検体A」とある。それでも彼女は、毎日愛しいマティエルに会えるので幸福そうだ。


 面会は許されており、レジスタンスのメンバーは時折ツェツィーリアに会いに来る。彼女は未だ地下組織の実権を握っていて、レジスタンスも弱体化したとはいえ息絶えてはいない。

 不穏な動きがあることにマティエルは気付いているようだけど、今のところ我関せずを貫いている。


 マティエルはツェツィーリアに問う。


「そもそもがダナマは、流浪の民が滅びた都市を再建してできた国。君の嫌う、余所者達により栄えてきた国。君を慕って集ってくる者達だって、純粋なダナマ人とは限らない。君は一体何がしたいの? 君の守りたかった故郷って、何?」


「さあね」と呟いて、ツェツィーリアは空虚な笑みを浮かべた。

 彼女自身、もう自分というものが分からなくなっているのかもしれない。集落を追放されたあの日、守ったものに棄てられたあの時から、壊れた心のまま突き進んできたに過ぎないのだから。

 でも今、歪な関係ながらも、彼女のそばにはマティエルがいる。旧き友たち、そして憎んだ妹さえも、時折彼女のもとを訪れる。


 悲しみのあまり霧となって消えた、星読みの乙女、伝説の大罪人ツェツィーリア。彼女の歩みが再び記録される日々も、そう遠くはないのかもしれない。



 というわけで、【決裂のダナマ・サクセスエンド】なのでした! ひゅ~~、ぱちぱちぱち!

 イベントのエンディング動画を観終えた私は、心の中で拍手を送る。

 さすがにハッピーエンドにまでは手が届かなかったものの、これはもう女王派の逆転劇と言っていいでしょう。平和な終わり方だしツェツィーリアにも救いがあるしで、私としては大満足なのです。


 それにしても先日の老師戦、まさか私達のパーティが女王派初勝利を飾れるとは夢にも思わなかったよ。


 大ピンチなときにラーユさんを束縛したあの鎖スキルね、もも君曰く、ラーユさん自身のロックスキルだったんだって。【罪悪感ギルティコンプレックス】っていうらしい。

 何でも時間ごとに確率で発動するもので、発動が成功してしまうと自分のライフを全部犠牲にして他人の耐久と持久を全回復するという、ボランティア精神に溢れた能力なんだって。


 “スキル”っていうか、最早“ハンデ”だよね。ただまあラーユさんが臨界解放(アンロック)に至った理由が前科の多さとのことなので、罪の代償と考えれば妥当な設定なのかもしれないけど。


 ついでに言うとロックスキルの発動時間、その寸前に、きーちゃんがうっかり【精神統一】の指定先をラーユさんにしてしまったことも関係がありそうだ。

 精神統一は次に発動するスキルの成功率を高める作用がある。確かなことではないけれど、それがトリガーとなって滅多に発動しないはずの罪悪感が発動しちゃったっていうのも有り得る話らしい。


 何はともあれあのときのラーユさんのダウンは大きくて、私達は無事逃げ切り勝利を果たしたのだった。

 かなりラッキーが重なったことは事実だけれど、勝ちは勝ちですからね。0.8割の勝率で賭けに勝ったと思えば、素直に嬉しいものである。


 そして翌日の老師戦は、なんと女王派が三戦三勝したの。女王派の老師はこの日に強い人が集中してたっていうのもあったみたい。


 いやー、ゾエ君とヨシヲと狂々さんが一緒になったチーム、凄かったなあ。一日目の逃走者達の保守的な戦いとはもう全然違くて、みんなばーって散ってって、じゃんじゃん得点稼いじゃうの。

 鬼、見覚えあるなと思ったら旧ダサ男ことパンフェスタさんで、声が聞こえずともブチ切れてるのは明白だった。あれは可哀相だった。


 そういった勢いもあり、あと中間発表の時点で女王派のみんなはまずいなって本気モードになったんだろうね。見事女王派は後半でポイントを巻き返したのだった。

 めでたしめでたし。


 因みに今回のエンドにより発生する革命は、お知らせによるとこんなかんじだって。



作戦がサクセスエンドを迎えたことにより、革命イベント【鋼鉄の女王】が実行されました。これにより…

 ・ツェツィーリア、マティエル、シルヴェストのコミュニケートミッションの更新

 ・ダナマ~シラハエ間の交通機関開放

 ・クラン[マルモアレジスタンス]の活動縮小

 …他、関係する社会情勢に変動が生じます。



 マルモアが縮小とのことで、案の定ブラックギルド勢力に打撃があったっぽいね。


 ラーユさんのことがちょっと心配。老師戦以来会ってないけど、元気にしてるかな?

 自分がアウトロー街道を進んでいることに葛藤があったようだし、もしかしたらこれを機にマルモア引退なんてこともあったりするのかなあ。

 果たして正道を取るのか、キャラ愛を取るのか――――――まあラーユさんウルトラポジティブ人間だし、どんな選択をしようとけろっと生きてそうなもんだけど。


 そしてそして、老師戦の参加賞と勝利報酬がめっちゃ美味しくてだね。なんと私、今回のイベント個人ランキングで約3万5千人中、954位にまで食い込んでるんだ~。

 ランキング上位報酬の目玉といえばずばり、【星の結晶×1】でしょう。3,000位以内の人に配られるんだよ。

 ふふふ、これで私も上位勢の仲間入りと言っても過言でないはず。【期間限定称号:エキスパート冒険者】も手に入れたしね。


 そんなかんじで、自分の成長を感じるワールドイベントなのでした。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 個人的にツェツィーリアさん、ユーザーキャラも面会が出来るってのが凄い落とし所だなーって 発動するとタイミング次第で単なる自滅なスキルってありますよね……(某竜退治で間違えてボスにメガンテ…
[一言] 一応ラーユさんも納得できる陣営敗北……だったみたいですねぇ 表編ということは裏編で何某かのサプライズサムシングを期待してもいいのかしら??
[一言] まぁ、ツェツィーリアの悲しみが晴れたならラーユも浮かばれる?裏も楽しみ。
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