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職業、仕立屋。淡々と、VRMMO実況。  作者: わだくちろ
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137日目 マッチクエスト(2)

 いや無理よ。


 アクションゲーはド素人だし、このビビアというキャラクターの育成だって最初から冒険は度外視、生産に特化させてしまっている。

 誰かとパーティを組んで一緒に遠征行くことなんて、視野に入れてない。だから何か一つ強いスキルであるとか、味方をサポートする技術であるとか、そういうのも全然持ってない。

 完全お荷物確定な未来が目に見えている。


 けど……、けどな~~……。GP報酬がな~……。他のクエストやミッションとは段違いなんだよな~……。


 キマは他プレイヤーとやり取りができるけど、GPはそうはいかない。自分でゲームをプレーすることによって直接取得するしか手段がないのだ。


 私が喉から手がでるほどに欲しい試着室とショップスタッフは、生産だけで順当にGP貯金するとしたら、導入はひと月かふた月後。

 でももしマッチクエストが成功したら。それも、連続で勝利を取れたりなんかしちゃったら。

 もしかすると二、三日で目標達成、なんてことも、夢じゃないかも。


 そんなジレンマに悩まされていると、ふと、私の頭にある閃きが舞い降りた。


 マッチクエストに挑戦するとしたら、お荷物にはなりたくない。自分も役立てるよう、何か強いスキルを身に着けていたい。

 ――――――今の私には、それができるのでは? だって、【必然(アルスマグナ)】があるのだから。


 これまで思いつかなかったのが不思議なくらいだ。私、有用なスキル覚え放題じゃん!

 ……いやまあ、スキル付きの衣装を作るのだってスキルを覚えるのだって結局は時間がかかるわけで、そこに拘りだしたら本末転倒か。けどまあまあ戦える程度のスキルを一つ二つ取得するだけでも、大分違うよね。


 うわー、うわー、何覚えよう。

 もしかすると遠征においてもビビアちゃん、大活躍できちゃったりして? お荷物どころか、「ビビアさん是非うちのパーティに!」って歓迎されちゃったりもして?


 俄かにお花が溢れだす私の脳内。

 それで必然で付与することのできる、今まで作成してきたスキルを思い返してみるのだけれど――――――う~ん、ちょっとこの段階では決めきれないかも。


 もも君が授けてくれた知識があるので、遠征で強い力を発揮しそうなスキルには幾つか候補がある。けど『強い』って言ったって、これを打てば問答無用で勝利できるみたいなチート能力なんかは存在しない。

 発動するタイミングであるとか、威力を発揮できるルールであるとか、プレースタイルとの相性であるとか、色々なことが関係してくる。その色々な要素を理解してこそスキルを強くすることができる。

 けど今の私には、そういった面での学習が圧倒的に足りてない。


 特にマッチクエストなんかは全くの未経験なわけだし、プレイヤーどうしのパーティ編成だってほぼ未経験なわけだし。

 そのことを考えると、無闇やたらにスキル付きを作ればそれでオッケーと、そう易しい話とも思えない。

 慎重過ぎかな? でも前述した通り服を作ってスキルを覚えるまでの時間を考慮すると、慎重にもなるよね。


 こうなってくるとやっぱり、一回でもお試し感覚でもいいから、とにかくまずマッチクエストを自分で経験してみる必要があるのかなあ……。んー、誰か付き合ってくれる人、いるかしら。


 とりあえず、あまり充実してはいないフレンドリストを開いてみる。けど、正直誰も微妙。


 快く付き合ってくれそうなところで言えば、ゾエ君リンちゃん辺りか。でもレベルが段違い過ぎるんだよね。

 マッチクエストは職業レベルではなく、冒険者ランクで難易度が変わる。パーティメンバー四人のランクの平均値によって、同じような強さのライバルパーティが選出されるといった仕様だ。

 だからリンちゃん達のパーティに混ぜてもらったとしても、あまり今後の参考にはならなそう。


 きーちゃんとかならバランス取れるかなって思ったけど、彼女自身この手のクエスト、積極的にはやらないだろうな。お試しマッチとはいえ、他二人の負担が大き過ぎるのもちょっとなあ。


 ……結局、どっかの場面で腹を括る必要がありそうだね。

 私はきゅ、と唇を引き結び、ギルドアプリのマッチクエストの項目から、【パーティメンバー募集】のページを開いた。つまり、いわゆる“野良パ”に混ざろうという魂胆である。


 まだ決意を固めたわけじゃないけれど……とりま雰囲気を探るところからでもね。

 そう思い、自分が参加可能なパーティリストを表示させる。

 すると一番上の、こんな募集要項が目に留まった。



【EからSまでどなたでも!参加資格問いません!:ヒメカゲタイジュ】

日時:集まり次第即出発

リーダー:[狂々]

参加状況:2/3 参加メンバー:[ちょん][名無しさん]

募集ランク:- 募集職業:-

リーダーからのコメント:初心者さんも歓迎(^^)誰でもいいから来てくれマジで(^^)



『どなたでも』、『初心者歓迎』、『誰でもいい』――――――そんな言葉達が、人見知りで自信のない私の心を、優しく撫でていくかのようだった……。

 ランクも職業も不問? あっていいの、そんなこと?


 一応その下に続く幾つかの募集欄にも目を通してみたけど、最初に見つけたこれが一番空気が合ってそうなかんじだった。

 ランク・職業問わずなところは他にもあったものの、コメントに注意点がずらずら書かれていたり、逆に必須項目しか埋めてない素っ気ないところもあったりして、正直初めて参加する身としては敷居が高い。


 そして狂々さんとやらの募集の、『参加状況:2/3』という記載が私をせっつく。

 残り、あと一枠。もしかしたら今この瞬間が、勇気をだす最初で最後のチャンスかもしれない。

 そう思うと居ても立ってもいられなかった。気付けば私は、震える指で参加申請ボタンに触れていたのだった。




******




【きまくらゆーとぴあ。トークルーム(公式)・遠征クエストについて語る部屋】



[うゆり]

においすぎわろた↓


[うゆり]

【EからSまでどなたでも!参加資格問いません!:ヒメカゲタイジュ】

日時:集まり次第即出発

リーダー:[狂々]

参加状況:2/3 参加メンバー:[ちょん][名無しさん]

募集ランク:- 募集職業:-

リーダーからのコメント:初心者さんも歓迎(^^)誰でもいいから来てくれマジで(^^)


[msky]

狂々必死やなw


[やんやん]

その募集一瞬で二枠埋まったかと思えばそれ以降15分経過してるやつねw


[スペード]

さすがの狂々も媚びだしたか


[きいな]

ランク職業問わずとか三人で勝つ気満々なのがすげーけどな


[シジュウカラ]

「おっ、狂々の勝ち確野良マッチ募集してるやん、こりゃダメ元でも急いで申請しとかんとな」

そう思ったけど一応参加メンバーにもさっと目を通した俺氏を褒めてやりたい


[ロー武蔵]

狂々、ちょんまではいい

三人目を何とかしろ


[チャーリー]

なんでキックせんかったのかねえ…


[ハロー]

ソロ最強さんはマイペースだから…

因みにマイペースというのは時に自己中、他人の気持ちを考えられないということでもあり…


[水銀]

狂々「名無し?ま、あいつ普通に強いからええやろ」


[3745]

どれだけ強くても純害悪取り立て屋と組みたい奴なんてどこにもおらんのよ


[ミラン]

言うてちょんがまともかってーとそういうわけでもないという


[oksana]

これはなんも知らん新規ちゃんが痛い目見るやつ

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― 新着の感想 ―
[一言] 誰か止めろぉぉぉ…!とおもったけど、傘忘れて近道して土砂崩れ回避する豪運のブティックさんなら…うん大丈夫か(╹▽╹)
[一言] Bさんのマッチクエストデビュー戦ですね( *´艸`) 華麗に活躍出来るといいですねぇw
[良い点] さぁ開幕FFビーさん以外全滅という地獄絵図を見せるのだw
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