表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
職業、仕立屋。淡々と、VRMMO実況。  作者: わだくちろ
Main

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

191/473

122日目 舞踏会(12)

 さて、大広間で聞き込み調査を続けていると、ふと一人の女性に目が留まった。紺色のエプロンドレスに身を包んだ上品そうな女性――――――シエルちゃんとこのメイドさん、ルフィナさんだ。

 彼女は何やら落ち着かない様子で床をあちこち見回している。もしかして何か捜し物かな?

 ルフィナさんにも話を聞いてみようと近付いていくと、途中でシエルちゃんから声がかかった。


「ビビア、私ちょっとだけ、広間を離れるわね。計画に不備がないか、確認だけしてくるわ」


 あ、うん。行ってらっしゃーい。

 シエルちゃんは軽い足取りで去って行く。これからお城を爆破しようとしている人の背中にはとても見えない。

 ほんとに違うなら、そっちのほうが絶対いいんだけどね。

 小さく嘆息してから、私はルフィナさんに話しかけた。


「あ、あら、ビビアさん。お一人なの? シエルお嬢様は? ……そう、お化粧でも直してるのかしらね。わたくし? ……実は、いつも付けてるコンタクトを落としてしまって……」


 言って、ルフィナさんはうろたえたように視線を床に落とす。

 へー、この世界、眼鏡だけじゃなくコンタクトなんてものも存在するんだね。

 ……あ、そういえば前、シロガネの眼鏡屋さんでルフィナさんを見かけたことがあったなあ。なるほど、彼女はあそこでコンタクトを作ってもらってたんだね。



・そうなんですか、大変ですね。

・よければ一緒に捜しましょうか?



 現れた選択肢から、私は迷わず二番目を押す。なんだかとっても困ってるみたいだし、それにほら、ゲームのこういうイベントって、一見関係なさそうでも後で重要なヒントを貰えたりとか、ありがちだからね。


「本当? 悪いわね。じゃあ、シエルお嬢様が戻ってくるまでの間だけでも、手伝ってもらおうかしら」


 ルフィナさんがそう言うや否や、視界に『7:00』という数字が表示された。この数字は『6:59』、『6:58』と刻々と減っていくところを見るに、制限時間を表すタイマーのようだ。

 なるほど、ミニゲームになってるのかな? 時間内にコンタクトを見つけよう、みたいな。

 改めて大広間を見回すも、『?』アイコンの付いている箇所は変わっていないかんじ。試しにさっきも調べた観葉植物の『?』をもう一度タップすると――――――。



ここにはコンタクトはないようだ。



 ――――――テキストの内容が変わっている。

 ちょっと嫌な予感がしつつも、私はテーブルの上に積み上げられたワイングラスのタワー、並べられた沢山のご馳走、豪奢なシャンデリア、と次々調べてみる。



ここにはコンタクトはないようだ。

 :

 :

ここにはコンタクトはないようだ。

 :

 :

ここにはコンタクトはないようだ。

 :

 :



 ……えーっと話しかけるコマンドは……あ、使えるね。じゃあまだ話しかけてないあのダンディなオジサンに話を聞いてみよう。


「コンタクト? 知らないねえ」


 ……さっきレスティーナの三大珍味について語っていたあの若者は、っと。


「コンタクト? 見てないよ」


 ………………じゃあ、こちらの警備の兵士さんは?


「コンタクト? 知りませんな」


 こ、コンタクト地獄に……! 世界がコンタクト地獄になってしまった……!!

 今後の会議に必要そうな情報を集めつつついでにコンタクトも捜すか~くらいの軽い気持ちだったんだけど、これはまさかの7分間コンタクトに全振りの流れ!?


 勿論さっさと見つけてしまえば話は早いんだろう。

 でもこの大量の調査アイコン全部を(しらみ)潰しに調べるとしたら、相当の時間がかかるよ? 何せ調べられる箇所はここ大広間だけに限ったことではないし……。


 こ、これ、ワンチャントラップの可能性、アリ? うかうかミニゲームに取り組んでると貴重な7分をただ消費するだけ、っていう。

 慌ててルフィナさんにもう一度話しかけると、『・もうちょっと頑張って捜してみますね。』、『・コンタクト、見つかりませんでした……。』という選択肢が現れた。一応ミニゲームを途中でやめることは可能なようだ。


 どうしようか、と私は考える。

 こんなあざといイベントを仕掛けてきているのだ、成功した暁にはご褒美が貰える可能性は往々にしてある。

 けど、だからこそのトラップである可能性もなくはない。それに、普通にコンタクトが見つからなくてミニゲーム失敗、って未来も見える。

 私はまたも、難しい選択を迫られている。


 ルフィナさんに目を向けると――――――腰をかがめ、目立たないよう気を配りながらも、必死な様子で床に目を走らせていた。NPCであることは勿論分かってるんだけど、その緊張した面持ちはどうにも私の心をざわつかせるわけで。


 結局、私は貴重な七分間を電子の海に葬ったのであった。




******




【きまくらゆーとぴあ。トークルーム(非公式)・ミステリーデートツアーの配信について語る部屋・話題無制限】



[吉野さん&別府]

シエシャンとこのメイドさんだよ

脇キャラだし双子のパートナー以外は「誰?」ってなるよね


[KUDOU-S1]

そのイベント双子派閥以外のプレイヤーでも発生するんだ


[檸檬無花果]

コンタクト見つけられた人いるの?

キマクラ卓のサナチィは結局クリアできなくて7分無駄にした言うてたが


[バレッタ]

色んな配信つまみ食いしてるけどクリア者は見てないなあ

っていうか半数くらいは途中で諦めて他の調査に切り替えてる


[ドロップ産制覇する]

トラップも有り得るけど豪華ボーナスも有り得るこの怖さよ


[しーまき]

7分で見つけられなくて再度挑戦してる猛者もおるが果たして

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
仕立屋コミックス&書籍発売中(^ω^)
9wjng0gw7g1fbkp61ytqbgewajkh_zl9_71_a1_1byr.jpg9wjng0gw7g1fbkp61ytqbgewajkh_zl9_71_a1_1byr.jpg9wjng0gw7g1fbkp61ytqbgewajkh_zl9_71_a1_1byr.jpghtml>
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ