122日目 舞踏会(9)
私が……悪党? じゃなくて、悪党を演じてる義賊?
え? リンちゃんがそう言ったの?
彼女の目には、私はそう映ってたわけ?
で、ユカさんはそれが信じられなくて、怒っていると。
……いや、まあ、それはユカさんが正しいよ。だって私義賊じゃないし。
なんだかすっごい複雑な話になってきた……。
などとユカ嬢の放った衝撃の発言をもぐもぐもぐもぐ咀嚼する私であったが、その間にも、ゲームはさっさと進行してしまう。怒りに顔を上気させているユカ嬢の隣で、フェルケ姫は淡々と告げた。
「これより第二調査・密談フェーズに移ります。
このたびの調査活動は、皆様の行動範囲をレスティン城全体に広げたいと思います。
現状、起爆装置なるものは未だ見つかっておりません。
私はあまり心配しておりませんが、用心に越したことはないのもまた事実。怪しいものがあれば、すぐに報告していただければと思います。
今現在夜会を楽しんでおられる方々に聞き込みをすることも許可しますが、くれぐれもこの事件のことが知られないよう、ご注意くださいませ。
またこの時間に限り“密談”ができるようになります。
密談はプレイヤーが二人きりで話し合うためのシステムです。
密談を希望する場合は、相手プレイヤーの名前をタップして、『密談を申し込む』の項目を押してください。相手の許可が下りると密談システムが起動し、自分と相手の声は他のプレイヤーに聞こえなくなります。
真実が見えてくると、時に味方どうしで秘しておくべき情報もでてくるかもしれません。真犯人を確実に追い詰めるためにも、どうぞ密談をご活用ください。
第二調査・密談フェーズの制限時間は40分です。それでは、開始します」
さすがにみんなこの空気に慣れてきたのか、私以外のプレイヤーはフェルケの話が終わるなりさっさと席を立つ。
私のほうはまだ先のユカ嬢の発言の余韻が頭から離れないんだけど、でも、やっぱり今はゲームに集中しなきゃね。というわけで、一拍遅れて私も立ち上がる。
それにしても会議の雰囲気的に、シエルちゃんの立場はなかなか危ういと言わざるを得ない。
パッション強めな人はユカさんくらいしかいないからそんな強く糾弾されてるかんじはないけど、それでも全方向から怪しまれてる感はひしひしと伝わってきている。
実際客観的に考えて、動機的にも状況的にもメタ的にも、シエシャンが一番黒っぽいもんね。
ゾエ君の力添えもあり、会議内で決定的に追い詰められることは免れられた。けどこのままいくと、投票フェーズでぬるっと票が集まってしまいそうなかんじはある。
それを回避するためには――――――双子内で票を分散させる、とか?
……そうか、もしかしてシエルちゃんシャンタちゃんって、周囲の意識、考察を乱すために、敢えてお互い身内切りしてる、なんて可能性もアリ?
いやでも、二人が喧嘩してるのは今日よりもっと前からのことだし、そうすると……う~、頭が混乱してきた。
いずれにせよこの窮地を脱せるかどうかは、シャンタちゃん並びにパートナーゾエ君の存在がキーポイントに思える。
協力できるようであれば協力したいし、向こうにその気がなくても、シャンタちゃんサイドがどんな目的のもと動いているのかを知りたいところ。
というわけでまず私はゾエ君に密談を申し込んだのだけれど――――――駄目だ。やっぱりあのやきもちイベントが発生してしまって、シエルサイドシャンタサイドに限り密談は不可みたい。
けどシャンタちゃんに引っ張られていく中で、ゾエ君はこんな言葉を残してくれた。
「ビビアさんの言いたいことは何となく分かります。とはいえ現状俺等は話し合いを許されてないっぽいので、とりまお互い他の調査を進めましょう。もしかしたら後で話せるタイミングがあるかも分かりませんし」
うん、そうだね。
今はとにかく時間が惜しい。自分にできることに最大限取り組もう。
胡蝶の間を見回すと、ササはダム氏と密談中。ユカ嬢とヨシヲの姿はないので、既に城内の探索に乗り出しているようだ。
私も負けてはいられない。まずは沢山の紳士淑女で賑わう大広間に向かって、関連のありそうな人に話を聞いてみよう。
ライバル達の、何かよさげな弱味を見つけられるかもしれない。
人混みの中視線を走らせていると、とある人物が目に留まった。銀色の冠を頭にいただき、骨の左半身を持つそのキャラクターは、舞踏会の最初のムービーでも独特な存在感を放っていた。
確かバルコニーにて、シエルちゃんと二人きりで話している場面があったと記憶している。
ハンドアウトの内容から察するに、恐らくこの人が――――――と、ネームプレートを表示させ、確信する。うん、レスティーナ王国第三王子、ニルアン君だ。
わざわざ名前を挙げて書かれていたくらいだ。きっと何か情報を持っていそうだよね。
早速話しかけてみると、ニルアン王子はにこっと優男の笑みを浮かべ、シエルちゃんに挨拶してきた。
「やあシエル。計画は順調かい?」
私は目を瞠る。そんなこと言うってなると、この人――――――。
「しっ。あまり大きな声をださないでちょうだい」
「つれないなあ。君の野望を果たすため、僕は大義を成したというのに」
「ふふっ。感謝してるわニルアン様。ビビア、一応紹介しておくわね。ニルアン殿下。起爆装置を前もって王城に運び込んでくださった、とってもイイ方」
――――――き、共犯だあああああ~~~~~~っ!
******
【きまくらゆーとぴあ。トークルーム(非公式)・ダムの配信をリアタイで視る部屋・コメ凸するほどでもないチラ裏用・他鯖・他視点からのネタバレ禁止】
[レナ]
Bさんのよろしくショット助かる
[アリス]
ユーザー投票できまくら。正史が決まるんだよね?
ってなると革命イベでもあるってことで、これ上手く功労者になればリル様また一旗挙げられるんじゃないの
[KUDOU-S1]
ダム~~頑張れ~~
不遇令嬢リル様を貴族社会の頂点に伸し上げるのだ~~
[MSR@SK]
まあ少なくともリルに票が集まるってことはないだろうからな
あとはシエルかシャンタかアントワーナか、そこら辺から犯人見繕ってクリア
イージーゲームよ
分かってるな?ダムよ
[3745]
>>MSR@SK
うん…言いたいことは分かるよ…
あの人怖いとこあるからね…
[檸檬無花果]
え
[明太マヨネーズ]
草
[Itachi]
なんかyuka嬢が訳分からんこと言いだしたんだがwww
[ロッタ]
悪党装った義賊か~w
一周二周回った感あるね^^
[msky]
ブティックもついにその域まで来たか…
[ちょん]
おいリンリン、ただでさえBさんのステータス欄ややこしいことなってんのにもっと複雑にすな
[リンリン]
( -`ω-)✧ドヤッ
[ポワレ]
その内神格化されそう
[しーまき]
運営チームの一人とか言いだす奴いそうw
[吉野さん&別府]
Bさんはきまくらゆーとぴあ。の広告キャラクターだよ
みんな、次の人気投票はBさんに入れようね
[ドロップ産制覇する]
ダム、笑ってないでフェルケの話ちゃんと聞け








