122日目 舞踏会(8)
「フェルケ姫は起爆装置のほうをあまり心配していないようだが、俺としてはそっちも気がかりなんすよね~。となると、城内でなされた誰のどんな行動にも注意深くあったほうがいいと思うんです。簡潔に事実が聞ければそれでいいんですよ。後ろめたいことがないっていうんなら、言えるでしょう? 隠すほうが時間の無駄、議論を滞らせていると、そう思いますけどね~」
うん、うん、と頷く私。
現状シエルちゃんとシャンタちゃんは対立してるっぽいけど、こっちの立場からしたら全員敵でもあるわけだからね。自分に利がある意見には、誰が発言者であろうとひたすら乗っかっていく所存である。
ゾエ君もなんかそんなかんじだし。
……あれ、そう考えると、もしかしてゾエ君のミッションと私のミッション、目的が結構似てたりする? ……あるなあ、これ。
そんな思いつきはさておき、ゾエ君の追及、そして皆の視線を受けたササは、顔を硬くして渋々答えた。
「……テレジアはあの時、人と会っていた」
「誰と?」
「それは言えない。これ以上はプライバシーの侵害とみなす」
それだけ言って、彼は唇を引き結ぶ。
いいかんじに怪しいね~。これはいい擦り付け先を見つけたぞ。
他にも何か攻撃できるところがあったかな? と、ハンドアウトを眺めていると、今度はがた、とユカ嬢が立ち上がった。
「わわわ、私からも意見があります……っ! 私は、状況による証拠もそうですが、動機からの考察も大事だと思います! シエルさんとシャンタさんはかねてから貴族社会に不満を持っているとお聞きしました! このカードに書いてある文面なんて、まさしくあなた方の願うところなんじゃないですか!?」
「あら~、お姫様のパートナーはそんなふわふわした理由で私達を犯人にでっち上げると言うの~?」
「フェルケ様、思慮の足りない犬は橋の下にでも捨ててらっしゃい。後ろ足でご主人に泥をかけることしかできないんだから」
「なっ……!」
顔を真っ赤にして、私を睨み付けるユカ嬢。
いやいや違う違う! 今の私じゃなくてシエルちゃんシャンタちゃんの台詞だから。
それに相方プレイヤーにも非があるって言うんなら、敵意の矛先をゾエ君にも向けなきゃおかしいでしょ。色々ヒドい。
「そちらがそう言うならこちらも言わせてもらうけど、動機なんて他の方々にだってあるわ。ねえ、ビビア?」
「え!? う、うん」
急いでハンドアウトに目を走らせる私。ただヒントになる文章はこれだろうなっていうのは分かるんだけど、責め方が分からない。
いや、シエルちゃんの期待に応えたい! とりあえず気になった情報、ばんばん提出していこう。
「えっとえっと、『リルステンの母ヴァナ伯爵夫人がアントワーナの母オデッタ子爵夫人らから嫌味を言われている』……のを、シエルちゃんは目撃しています! なんかこう、それで、色々嫌になっちゃったりしちゃったんじゃないでしょうか!」
「そう、この国の社会体制、自分の置かれた立場に不満を抱いているのは、何も彼女等だけではない」
一瞬場に変な空気が流れかけたが、すかさずゾエ君がフォローしてくれる。ナイス!
「アントワーナ嬢はある一件により家格を落とされ、苦々しい思いを抱いている。特にリルステン嬢と自身を押しのけ家格を上げたマルスラ家には、並々ならぬ感情がありますね? リルステン嬢も、置かれた状況はエドヴィーシュの双子令嬢と大差ないんじゃないすか? 一般階級の出であるヴァナ伯爵夫人、そして彼女の娘であるリルステン嬢は、血筋を重んじる貴族の者から日々圧力を受けています」
「そっ、そんなふわふわした想像で、お二人を追及すると言うのですか!?」
「その言葉、そっくりそのままお返ししまーす」
「くっ……なんて、小賢しい……」
ぎり、と奥歯を噛み締め、私を見据えるユカ嬢。だからなんでそんなに私だけ嫌ってくるのー!
こうなってくるとさすがに不思議に思えてくる。私が覚えてないだけで、何かこの子に失礼なことしちゃったりしたのかなあ。
なんて考えていたらば、ユカ嬢はいよいよ標的を私そのものに絞ってきた。真っ直ぐにこちらを見つめ、彼女は朗々と宣言する。
「リンリンさんはああ言ってましたけど、私は騙されませんからね! あなたが……表で悪党を演じつつも、裏で弱き民草を助けるため日夜暗躍している義賊だなんてそんなこと――――――!!」
目を瞬かせるワタクシ。
噎せるダム氏。
「ソウダッタノカー」とにこにこするゾエ君。
「……そうだったのか?」と首を傾げるヨシヲ。
無表情で何も言わないササ。
「制限時間に達しました。これにて、第一会議フェーズを終了いたします」
フェルケ姫の事務的な声が響いて、私達の討論は終わりを告げたのだった。
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【きまくらゆーとぴあ。トークルーム(非公式)・木本澄香の配信をリアタイで視る部屋・チラ裏用・他鯖からのネタバレ禁止】
[ナルティーク]
>【テレジアのパートナー】
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>
>あなたは容疑者である令嬢の一人、テレジア・ユーリヤナのパートナーです。
>
>ミッション
>①テレジアがニルアン王子と密会していたことを最後まで隠し通す
> 達成条件:[情報カード:ニルアン王子]をフェルケの前で公開しない、若しくはさせないこと
>②テレジアの容疑を晴らす
> 達成条件:投票フェーズでテレジアを指名させないこと
>
>ボーナスミッション
>①起爆装置の作動を阻止する
> 達成条件:???
>②新しい恋を見つける
> 達成条件:[情報カード・?人目の恋人]を入手し、最後まで公開しないこと
>③真犯人を突き止める
> 達成条件:投票フェーズで正しい犯人を指名させること
[おろろ曹長]
真犯人の追及が優先順位最下位なの彼女らしくて草
[陰キャ中です]
自分>>男>>>>>>>真実
( ˘ω˘ )
[ミラン]
スミカ「狂人キタコレwww」
飲み込み早くて助かる
[ポワレ]
メイン配信者が明らか脇役視点ってのもどうなのって思ってたけど、これはこれで面白くなってきたじゃないのw
[ジャガイモ]
この手のポジションはそんな難易度高くないこと多いし、いい塩梅かもね
問題はボーナス完遂をどこまで突き詰めるか
[モシャ]
テレジアちゃんトワの腰巾着としてしか認識してなかったけど、こんな強キャラだったんだw
かなり好感度上がったわw
[椿ひな]
狂キャラにして凶キャラ
[ロッタ]
うんうんいいよ
怪しまれてはいるけど浮きってだけで最クロではないこの立ち位置ね
[エルネギー]
ただミッションの都合上完全な白証明はできないから、黒位置からの強い反撃が来た場合どこまで耐えられるか
[慶]
キマクラ卓はコモラン配信だったんだ
同接ヤバいね
[めのし]
ホットワードも載ったよ~
[にゅー]
あれ?
このコラボ、もしかして成功してる?








