122日目 舞踏会(5)
ううう、『シエル以外の人物を投票フェーズで指名させる』だとか『起爆装置を作動させる』だとか、もうめためたのめたんこに悪役ムーブじゃないですか……。
ただまあ辛うじて善意を感じるのは、ボーナスミッションでシャンタちゃんを守るよう仕向けてきていること。だとしても本線は容疑の擦り付け、そして舞踏会の爆破だからなあ……。
あとは、シエルちゃんの嘘? 真の願い?
んー、「実は犯人が私っていうの嘘でーす。起爆装置なんてものもありませーん」っていうのが理想ではあるけど、さすがにそれは楽観的過ぎか……。
真の願いっていうと、やっぱり貴族の殲滅……あ、ダメだ。思考がどんどんマイナス方向にむかっちゃってる。
なんてふうにうだうだ悩んでる内に、フェルケ姫から準備時間終了の知らせが発されてしまった。
うーん、もうここまで来ちゃったんだからしょうがない。とりあえず腹を括って、ゲーム進行の流れに身を任せよう。
シエルちゃんにとっての本当のハッピーエンドがあるっていうんなら、きっとプレーしていく内に見えてくるよね!
「皆様、準備はよろしいでしょうか。それでは皆様に調査を開始していただきます。ここから最初の調査フェーズが始まります。第一調査フェーズでは、行動範囲をここ胡蝶の間に限らせていただきます。皆様は室内を探索したり、同じ容疑のかかっている方、またそのパートナーとお話することにより、調査を進めてください。ご自身の成すべきことが分からなくなった方は、マルチタブレットから“デートツアーガイド”をご覧ください。制限時間は20分です。それでは、開始します」
「20分か~。短いね~」などとミルクキングダム氏がぼやき、言うなり彼はさっさと部屋のあちこちを調べ始める。それを皮切りに、他の四人も各々動きだした。
え、みんななんか話の飲み込み早過ぎ。ゲーム慣れし過ぎ。
私からしたら20分が短いのか長いのかすらも分からないよ。けどみんなの行動の早さを見るに、多分ほんとに短いんだろうな。
で、もたもたと出遅れてたら、「ビビアさーん」と声をかけられた。ゾエ君だ。
その緩い雰囲気に、ちょっと気持ちがほっとする。
「いや~多分シエル枠で参加してるだろうな~とは思ったものの、まさか同じ卓になるとは」
「うん、ほんとほんと。ゾエ君がいて助かったよ。だって他は――――――……」
と、うっかり言いかけて、私は言葉を濁す。
いや、特に他意なく「他は全然知らない人だもん」って言おうとしたんだけど、よくよく考えればそうでもないんだよね。
けど、胸張って知り合いですって言えるレベルの人達でもないから、どう表現しようかな、って考えてる内、なんか変な空気になっちゃった。
周りに聞こえてないかな、って目を走らせたらば、ちらっちらってヨシヲがこっちを気にしてるふうだし……!
ゾエ君はそれに気付いて、目を眇めた。
「あーー、その節はご迷惑おかけしましたわ、ほんと。まあビビアさんが許すっていうんで俺も許しましたけどね。次やったらティンバリー湖に沈めてポリティギャングの餌にしますんで」
「え、あ、う、うん……? その件はいいんだけど、なんか彼、様子おかしいなって思ってて。やっぱあのこと気にしてて、どうすればいいか分かんなくなっちゃってるのかな」
「はっはっは。あいつ元々阿呆で挙動不審なんで、ビビアさんが気にすることないっすよ。とりあえず無視が一番効くと思います」
そ、そうなんだ……?
なんかゾエ君の言ってることもよく分かんなかったけど、でもこの時の彼には謎の圧があって、私も深く追及しようとは思えなかった。
それに、今は悠長に世間話してもいられないからね。
えーっと、ゾエ君シャンタちゃんも調査対象ってことだよね。とりあえずじゃあ、シャンタちゃんに話しかけてみようかな。
って、思ったらば。
「ちょっとビビア。こんな奴とのんびり話してる場合じゃないわ。あなたは私のパートナーなの。私の言うことちゃんと聞きなさい」
と、シエルちゃんがぐいっと私の手を引っ張り。
「ゾエベル、何してるの。こっち。シエル達なんて相手にしてる暇ないわ。あなたは私の従者なんだから、私の近くにいなきゃダメなの」
と、シャンタちゃんがゾエ氏の手をぐいっと引っ張る。
私とゾエ氏の視線が交差して、確信する。多分今の私達、考えてること同じなんだろうな。
ずきゅーーーーん!! って、ハート真っ直ぐ射抜かれてるんだろうな。
それが証拠に、彼は私に向けてぐっと親指を立てて、シャンタちゃんに引きずられていく。私もサムズアップを返して、シエルちゃんに引きずられていく。
もう、シエルちゃんたらなんてやきもち屋さんでいじらしい子なの。こんな子の言うことだったら、擦り付けでも爆破でも何でも聞いてあげたくなっちゃう。
けれどその時私は、ふと気付いた。シエルちゃんが一瞬振り返って、明後日のほうへ笑みを向けたことを。
彼女の視線の先では、同じくにやりと笑うシャンタちゃんの顔があった。
でも瞬きをした次の時にはもう、二人は別々の方向を見ていて、シエルちゃんは「全くビビアは仕様のない子ね」などとぷりぷり怒っている。
二人は喧嘩中……なんだよね? 今の、気のせいだったのかな。
ま、いっか。怒ってるシエルちゃん超可愛い~~~~!
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【きまくらゆーとぴあ。トークルーム(非公式)・ダムの配信をリアタイで視る部屋・コメ凸するほどでもないチラ裏用・他鯖・他視点からのネタバレ禁止】
[レナ]
これは本格的にマダミスらしくなってきたな
[チャーリー]
(((* ॑꒳ ॑* ≡ * ॑꒳ ॑* )))ワクワク
[マリン]
全員Bさんのこと超意識してるかんじ笑う
あと委員長頑張れ
いや頑張るな
頼むから下手なことしないでくれ
[MSR@SK]
ダ「いや~これは迂闊なことできない卓ですわ」
ほんそれ
[くるな]
結社二人を率いたBさんの圧が凄いブヒ(・Ꙫ・)
[msky]
>>レナ
どーせ犯人は六人以外のとこにいるんでマダミスではない(鼻ホジ)
[いりす]
だろうね
そのキャラのファンを集めたイベントでそのキャラを貶める話作るとかほんとにヤバ運営なのよ
[おでん]
いや、きまくら。ならやる
俺は信じている
[陽子@SK]
割とイイ性格のご令嬢が揃ってるからなあ
ゾエさんが起こした革命イベとかそれこそトワが成敗される話だし、ないとは言いきれないところ
[千鶴]
どっちかっていうと真のヤバ運営ポイントは、悪役になり得るキャラに好感度データ付けてくるところなのよ
[くまたん]
成敗はされるけど反省してなんかエエ話ふうになってめでたしめでたし~みたいな流れはありそう
[キリサメ]
メタ考察は萎えるからやめるのじゃ
[もも太郎]
ストレートに犯人考えたら動機ありそうなのはトワ、シエシャンだよね
トワはリルと家格逆転したことに不満持ってるだろうし、シエシャンは貴族嫌いだし
[賢者ビスマルクの息子]
動機はともかくとして恋愛狂テレジアちゃんもやらかしてておかしくはない
…あれ、なんか普通に悪役令嬢全うしそうなメンツ多くね?
[とりたまご]
シエシャンは双子発覚後人気急上昇してるから犯人だったら運営呪われる
ってか呪う
[水銀]
悪役だったら悪役だったで美味しいと考えるファンもここにおる
らしく生きればいいのよ
[ポワレ]
これでリル犯人エンドだったら神運営と褒め称えるわ
[ハロー]
よくやった
骨は拾う
[송사리]
きまくら。終了のお知らせ(´;ω;`)








