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13日目 革命イベント(前編)

ログイン13日目


 本日もレシピ&スキル探しをしようと、王立図書館へ立ち寄ってみる。

 すると、受付の顔がいつものエミリアさんというお姉さんではなかった。黒い大きな翼を持つ、眼鏡のイケメンお兄さんだ。

 彼は眉間に皺を寄せて、分厚い書物を捲っている。

 そして話しかけようとすると、こんなメッセージが現れた。



 革命イベントを起こそうとしています。よろしいですか?

 →・はい

  ・いいえ



『革命イベント』……? なんか大ごとそうな響きであるが、とりあえず、はい。



 公開動画の記録を開始します。ダミーアバターを使用しますか?

 →・はい

  ・いいえ



 公開動画……だと……?

 え、いや、まさかね。まさか自動且つ強制的に私の動画が公開されるとか、そんな仕組みじゃあないよね。

 よく分からんけど、今できる選択はこの質問にはいかいいえで答えるという、それだけだ。

 ダミー……偽物の、アバター? 動画を撮るに当たって私の姿を代役で隠せるとか、そういう?

 ……万が一のことを考えて、『はい』を選んでおこう。


 そこでダイアログは消え、眼鏡お兄さんが本から顔を上げる。彼の名前はギルトアというらしい。


「図書館利用者だね。入館許可証を見せたまえ」


 いきなり大事件が起こるとか、大変災が生じるとか、そういうわけではなさそうだ。一旦胸を撫で下ろした私だったが、ふいに、メカに文字を打ち込むギルトアの手が止まった。


「ん? この、番号は……」


 彼は勢いよく立ち上がるや否や、カウンター越しに私の腕を掴む。


「おまえ……これをどこで手に入れた……!?」


 鬼気迫る蒼白な顔に、私は固まることしかできない。


「このIDは我等が同胞、失われし友、マグダラのもの……図書館創設の際、私が彼女に贈った最初のナンバー……おまえのカードではない。そうだろう!? なぜおまえがこれを手にしている! 答えによっては……いや、どんな理由があるにせよ、ただでは帰さん! 許可証詐称は立派な犯罪であり、且つおまえのしていることは尊き友への侮辱だ!!」


 え、ええ? この許可証、マグダラ本人が使ってたものってこと? それを売ってたの? で、その行為は詐称罪に当たると?

 そんなの知らないよー! 私は被害者だよー!

 そうは思っても、彼の気迫に押されて、喉は上手く動いてくれない。けれども幸いこれはゲームで、シナリオ上私が喋らずとも大丈夫だったみたい。


「何……? マグダラ本人からこれを受け取った、だと?」


 呟いて、ギルトアは私を掴む手から力を抜いた。


「まさかマグダラが、生きている、とでも……? いや、待て、騙されないぞ。証拠を見せろ」

「そ、そんなこと言われても……」


 ここでようやく私も、このイベントを楽しむ余裕が生まれてきた。

 周りに、他プレイヤーの姿はない。個別イベントモードに移行したことに気付いた私は、次第に落ち着きを取り戻す。

 声を聞かれる心配もないし、たまにはちょっと、物語の主人公気分に浸っちゃお。


「彼女はどんな容姿をしていた?」

「ええ? あんまり覚えてないなあ……。舞踏会みたいな仮面と、しゃがれ声のインパクトが強過ぎて……」


 ギルトアは黙り込む。彼の思い描いている人物像と一致したのかもしれない。


「おまえ、名は何と言う?」

「ビビアです」

「何か身分を証明するものは持っていないのか」


 そんなのないよー、と思いきや、いつの間にか手中に、指輪を通したネックレスが握られていた。

 ギルトアはそれを受け取ると、指輪に彫られた紋章を確認する。そして目を瞠った。


「……君は、テファーナの弟子なのか」


 この人も、私のお師匠様と知り合いだったらしい。師匠って結構有名人なのかしら。

 ギルトアは指輪を返すと、カウンターから出てくる。


「来なさい。話を聞かせてもらう」


 既にギルトアの手から解放されてはいるものの、こちらを見る彼の眼差しには有無を言わせぬ威圧感が漂っている。一応振り返ってみると、図書館の入り口には大柄な司書さんが佇んでいた。

 逃げられなさそう。


 私は静かに彼の後に従った。




******




【きまくらゆーとぴあ。トークルーム(公式)・コミュニケートミッションについて語る部屋】



[YTYT]

正直ここのところはスキル集めとかどうでもよくなってきた

代表的なのと自分の職業に関係あるスキルは大方集めきったし

今は推しの観察と推しに貢ぐものの製作にしか興味湧かないわ


[ウィック]

ゲームのモチベがキャラ愛に偏るとそうなるよな

始めた当初は全然魅力感じなかった料理人が今や羨ましいまであるんだぜ


[アラスカ]

結晶系アイテムの次に好感度上がるのが料理系なんだっけ


[マ ユ]

そういうことになるのかな

ただデートイベに関しては換算が別枠になってる説濃厚

不人気キャラに毎日好物あげてた人でなく結晶一個あげただけの人がデート権勝ち取ってたの、いつか話題になったよね


[ササ]

結局世の中カネ


[まことちゃん]

このゲームに限って料理人がトップカーストなの草


[YTYT]

富豪ランクで言ったらな


[ミラン]

経済は料理人が回している


[ウィック]

まあ、料理人を転がす大商人もいるわけだが


[まことちゃん]

あれはキングな


[マ ユ]

キングというよりラスボス


[否定しないなお]

ワールドマーケットで商品全部パラダイスミントティーで埋め尽くしてる人複数いてぞっとした


[ミラン]

なんで?

高く売れんの?


[たかぎとも]

ヒント:某お嬢様の大好物


[ミラン]

理解した

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[一言] すごく面白いです!
[良い点] 淡々とした雰囲気が好きです。
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