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放浪者と彼方の文通  作者: トモナ
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雪山を降りてドワーフの国への道筋

 放浪者は返り血を浴びていた。

 雪山を降りる道にてあの熊と出会って戦ったからだ。


 狼がいなければ勝てると思ったのだろう。


 だが甘かった、放浪者は【一人で旅できる実力者】だったのだ。

 恐ろしい魔物が跋扈している世界で単独行動というのは一種の実力がなければ到底出来ない技術なのだ。

 魔法という神秘の存在する世界で生存競争を繰り広げる魔物達が縄張りを形成する土地をたった一人で突破していく。

 これがどれほど異常な事かは言うまでもない、単純な装備だけでなく敵に感づかれない移動経路の選択や休憩などが可能な場所を見つけられる幸運が必要だ。


 放浪者は全てを兼ね備えていた、装備も魔力も経験も旅路で手に入れた。


 熊は積もる雪を物ともせず疾走する。

 彼は逃げ出した現実から逃げ出せなかった。

 だから戦い抜いてきた知性が生涯の終わりを見誤った。


 自分の巨体をぶつけ、牙を、爪を、脆弱な人間に突き立てハラワタを喰らいつくす。


 そんな終わりは訪れない。

 

 錫杖の音が凛と鳴ると魔法が発動し火球が熊に向かうが熊は物ともしない。

 だが必要なのは一瞬でも視界を塞ぐこと、目を守る為に目蓋を下ろした瞬間に放浪者は魔力を込めて飛んだ。

 凛ともう一度音が鳴ると地面から鋭い柱が現れ放浪者はそこを利用して三角飛びを行い熊の首に剣を突き立てる。

 振り落とす間もなく剣は喉仏を切り裂いてしまい、血が噴き出す、それでも動けるのは魔物の意地でも意地では放浪者は殺せない、首は既に切り落とされた。

 

 鹿と違って担ぐ余裕もないので放浪者は高級品として扱われる腕と討伐した証として切り落とした頭を持って下山した。


 熊はそれなりの人間を食い殺して味を覚えていたが中々に戦う姿勢を取らず逃げ出す判断をされて討伐出来ずに隣街では頭痛の種であったが、放浪者によって討伐されたのはまさに朗報という他になかった。

 街の犠牲者遺族からは大変感謝され、組合からも特別報酬の金貨を支払われ隣国への移動には馬車の手配と通行手形のおまけまでされて放浪者も思わず微笑んでしまったほどだ。

 本当ならばすぐにでもドワーフの国に向けて旅立つつもりであったがせめて一夜だけでも嘆願され街の宿屋の一番格式あるモノの特別ルームに案内され、手に入れた熊の腕も街一番のシェフの手で調理されそれはそれは美味であった。


 柔らかいベットに暖かい風呂に地元の料理のフルコースを堪能して一夜を明かす。


 出発の際には再度被害者遺族から頭を下げられ、ドワーフの国に向けての手土産として年代物のワインまで譲られて思わず放浪者も涙ぐんでしまった。

 姿が見えなくなるまで手を振られながら揺れの少ない立派な馬車に揺られながらの何事もなかった滞在は終わり、国境の砦も手形のおかげでアッサリと越えることが出来た先も舗装された立派な道を何事もなく進んだ。

 製鉄や工業技術の発展しているドワーフの国だからこその大規模舗装道路などが敷き詰められた特色があるからこその旅の速さである。


 ドワーフの国は旅のしやすさが売りだ。


 問題があれば素早く鎮圧軍が派遣される事によって道中も問題らしい問題は起きない、特に酒やその肴に関する輸送にトラブルがあろうものならドワーフ達や飲兵衛な滞在者達から血祭に挙げられる事も安全を作っている要因。

 街はしっかりとした作りの家屋が立ち並び、土地ごとの様々な酒が販売されているので、首都圏に行けば全ての酒が揃う訳でもなく、その街に行かねば手に入らない酒が大量にあるのでそれを楽しみに観光する者達が多い。


 国境からほど近い街の程々の宿屋に止まる。


 観光客向けの料理と飲みやすい酒を楽しんで、公衆温泉を楽しんで部屋で一息をつく。

 酔っ払いの喧嘩もなく、ただ観光を楽しむ喧騒が街を賑わせ、魔法によって灯り続ける街灯の光が行き交う人々の姿を強く照らしている。

 問題が起きないから書くこともない旅路は緩やかな風となって放浪者の火照った身体を優しく冷やし旅というものの楽しみを改めて味合わせていた。

 

 そんな時にバックパックから音がする。


 中身を漁ると出てくるのは手紙と大きく頑丈なバケットに入った具材色とりどりのサンドイッチだ。



『今日は剣士の俺の担当だ

 先日は鹿の脚一本に祓い粉まで貰って助かったよ、あの後に盗賊討伐をすることになったんだが執念深くてすぐにゾンビやスケルトン化して討伐隊が苦労してな

 まさにそんな状況に突き刺さる打開策があったおかげで俺達のチームは大活躍して特別報酬まで貰ってウハウハだし、やっぱり装備や道具を充実させておくってのは周りからの評価な繋がるのかギルドからも評価が良くなったよ

 斧使いの奴なんて本当に助かったからって貰った鹿の肉と街で良い野菜やらなんやら仕入れて気合入れてサンドイッチ作ってたよ、出来るなら味わって食べて感想を送ってくれ

 あと弓使いの奴が出来るならこのリストの酒を仕入れて送って欲しいなんて図々しいったらありゃしないが、まぁそれもアイツの良さだし観光ついでに送ってくれると助かる

 これからも君とのこの文通が続く事を願ってる、何処かの大陸の、何処かの国の見知らぬ俺達の友である旅人さんへ


 追伸・出来ればドワーフ印の酒の肴も送ってくれ』



 放浪者はリストを見ながら貰ったサンドイッチとワインを夜食に吹き込む風を楽しむ。

 消えない灯りを持つ街の夜はまだ始まったばかり、夜を楽しみながら、次の行く先を考えるのも旅の醍醐味である。

 リストの名前と地図と資金を見比べながら放浪者はまた一切れサンドイッチを摘まんで考え出した。



ヤバい

良くある冒険ものみたいに事件がないと移動速度が半端ない

一話で国境ジャンプして観光都市まで移動するとかどうしよう

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