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放浪者と彼方の文通  作者: トモナ
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培われたモノは決して裏切らない

登場人物を喋らせます

ただ作者が喋らせたいってタイミングなんです

それ以外で喋らせる気は全くありません

 負傷した足をいとわず、頬から流れ落ちる血を躊躇わずひたすらに逃げる。

 しかし下層から脱出する道の至る所がアルラウネの根による壁で覆われていた。

 幾ら切ってもすぐに再生する壁は突破出来ない、先に逃げた熟練パーティーの姿はなく無事に逃げおおせた事を祈るしかない。

 逃げられない、あるいはあちら側にこちらを逃がす気はない事を悟って決意を固め決死の戦いを仕掛けるしかしかもう道はない。

 近くの小部屋に逃げ込んでアイテムボックスから回復魔法のかけられたポーションを傷口に浴びせて無理矢理傷口を塞ぐ。


「私のせいです、あれは私を狙ってます」


 女剣士は剣を手にしてそう呟いた。


「でも……もし私の予想通りならアレは私を殺しはしない、だから私が囮になります」


 剣を手にするその細い身体は震えている。


「依頼でたまたま一緒になった貴方に迷惑はかけられません、これは私の問題です」


 精一杯の強がりの笑顔だと判る。

 どう頑張っても女剣士の剣ではアルラウネは倒せない。

 急所を捉えたとしても心臓と呼べる部分を破壊するだけの力が得物に備わっていない。


 それが判っていても、精一杯の言葉を絞り出して放浪者を逃がそうとしている。


 放浪者としてもアルラウネを倒せるとは思っていない、しかしあちらが徹底してこちらを仕留めようとしているのは判る。

 臭い爆竹ももう数発あるだけでこれも逃げる為の物で、戦いに使えるとしてももうアルラウネの隙を作れるような効果は期待出来ないだろう。

 知性がある魔物ならばもう臭い爆竹が攻撃ではないと学習している筈だ、つまり投げたとしても臭いをばら撒いたとして躊躇わず攻撃を続けるだろうから。



「……ふざけるな、まだ依頼の途中なんだぞ」



 勝てないであろう相手に対する考えと復帰依頼として女剣士を見捨てられないという言い訳が混ざって放浪者の口から言葉が零れる。



「依頼を放棄するような奴だと思うのか、たとえ仕事だとしても仲間を見捨てるような奴だと思うのか?」


「でもこれは私の……」


「うるさい、うるさい!事情なんて知るか!一人よりも二人で戦えば勝機だって上がる、逃げられる可能性だって上がるってのも判らないのか!?」



 頭はぐちゃぐちゃなのに、それなのに身体が訴えかけるのだ。

 冒険者として受けた依頼から逃げるような事はしない、ましてや失敗するように仕組まれた依頼ならいざ知らずこれは偶然強い魔物が現れただけの事なのだ。

 復帰依頼に失敗して女剣士を見捨てて逃げかえったとなれば名声は地に落ちて、次から冒険者としてまともな依頼を受けられなくなるのは明白なのだから。

 だから逃げる必要はない、持てる力の全てを持って、お前の道を遮る大木を切り倒してしまえば良いだけの話なのに、どうして逃げる必要があるのかと。



「この依頼は引き受けた以上は完遂してみせる、アルラウネだって今までも倒してきた……そうさこれは放浪してきた今までと変わらない事だ」



 だから一緒に戦おう。


 依頼失敗なんて恥をかくのは嫌なんだ。


 女一人見捨てて逃げかえるなんて冗談じゃない。


 あの程度の敵なんて屁でもない。


 言葉が出てこない、気の利いた言葉が浮かばない、強者らしい余裕のある言葉が思いつかない。

 ただ放浪者自身でも判らない感情が頭をぐちゃぐちゃに引っ掻き回して、震える身体のケツを蹴飛ばして戦う決意を作り出している。

 訳の分からない感情は種火となり、戦う決意が材木としてその火を強くして、一撃喰らわしてくれたアルラウネへの怒りの火となり、それは殺意として恐怖を焼き払き未来を照らし出す。


「生きて帰るんだ、先に逃げ延びたあのパーティーが援軍を連れてくるかもしれない」


「……絶対に無理をしないでください」


「無理をするのは今みたいな時なのに逃げ腰でどうする、あぁそうさ無理せずに戦えば勝てる」


 決意の錫杖を右手に、殺意の愛剣を左手に、勇気をくれる魔法のバックパックを背負って戦いに挑む。

 女剣士も悲壮感漂わせる弱気を剣を二・三度奮って切り裂き、騎士の如き凛とした構えをとって意志を固める。


 小部屋から走り出してアルラウネに臭いを追わせ、戦いやすい広さの大部屋へと誘導する。

 逃げずに待ち構えている二人をアルラウネは嘲笑しながら見下している。

 自分の強さが良く判っているからこその余裕だ、嬲り殺す側であるという自負が、散々逃げ回っていた相手が震えているのを見抜いているからこその嘲笑なのだ。


 小手調べとばかりにアルラウネの下半身の花から無数の根の触手が放たれる。


 放浪者は錫杖を鳴らして土の壁を作って防ぎ、女剣士は軽やかな足取りで槍の突きが如き攻撃を掻い潜っていく。

 凛と鈴飾りの音がするとそこには無数の火球が放浪者の周りに浮遊し、部屋にチリチリと焼け焦げるような熱量をアルラウネに放つ。

 アルラウネは女剣士から視線を外して火球から我が身を守る様に無数の触手で壁を作り出して直撃を防ぎ、燃え盛る炎が触手を伝って本体に伝わる前に別の触手でこれを切り落とす。


 トカゲの自切の要領だ、危険に対して自分の守る為の防護機能。


 アルラウネにはそれをする知性がある、幾らでも消耗出来る触手での行動を中心にする事で本体へのダメージを徹底して防ぐようにする。

 間合いを詰められないように根の触手による攻撃は、どれだけ切り落とされようと焼き払われようとアルラウネ本体へは届かない。

 炎に気をとられている間に女剣士は距離を大きく回り込み背後へと回ろとするが、行動の自由を許さないとばかりに触手がまるで熊手のように広がりながら地面に叩きつけられる。


 女剣士へと意識が向いた瞬間に放浪者が一気に間合いを詰める為に突撃する。


 向かってくる触手は片手間に放たれるもので、そこまで正確な一撃ではない。

 そんな一撃に当たるほど放浪者も弱くはない、愛剣をアルラウネに叩き込む為に更に突き進む。

 凛と鈴飾りの音をわざと鳴らして注意を向けるとアルラウネは間合いを詰められている事に気付いて鞭のように触手を横薙ぎに放つ。

 しかし放浪者の剣は竜鱗すら切り裂く業物だ、軽く振るえば触手を容易く切り飛ばし更に間合いを詰める。


 叩きつけや横薙ぎで放浪者との間合いをなんとか詰めまいとしているアルラウネの顔が苛立ちを表す。


 凛と鈴飾りの音の音が鳴るたびに魔法が飛んでくるかと思えばそうでない時がある。

 火球が飛んでくる事があれば、土の壁に触手を遮られ、何か来ると警戒すれば何も飛んでこない。

 リンリンリンリンリンリンリンリンっと音が鳴る事に歯噛みし注意を逸らした、逸らし過ぎてしまった。

 女性体は放浪者との距離を維持する為に下がり過ぎた。

 そこには熊手のような叩きつけを回避して見せた女剣士が剣と共に飛翔して振りかざしていたのだ。

 肩口から心臓の位置まで到達する一撃がアルラウネの女性体を捉える、核となる心臓に一撃でも入れればそれで魔物にとっては致命傷となる。


 しかし、女剣士の剣が心臓を切り裂く事はない。


 刀身が溶けた……アルラウネの体内に流れる毒性の体液に刀身が耐えられなかったのだ。


 少なくともアルラウネにそのような能力があるとは聞いたことがない。


 その油断を突かれて首を捕まれる女剣士を助ける為に踏み込む放浪者の足元からこの戦いで一度も使ってこなかった真下からの触手が錫杖を弾き飛ばす。

 更に自分が女剣士を殺す様子を見せつける為か無数の触手が放浪者の動きを止める為にその場から動けないように、まるで槍の突きのように剣で切り落とされないように放たれる。


 苛立ちで歪む顔が愉悦に変わる。


 鋭い爪が生えるもう片方の手には丁寧に傷口から零れる毒液を塗りたくり、ゆっくりと女剣士の胸へと近づける。

 しかし女剣士の闘志は死んではいない、それがアルラウネの愉悦に水を差したのか大きく振りかぶった一撃で心臓を貫こうと考えたのだろう。


 そうして生まれた強者と有利の余裕が致命傷となる。


 何かが風をきる音がしてアルラウネのその腕に突き刺さる。

 それは放浪者がドワーフの国で加工して貰った【毒液などへの対策コーティングが施された解体包丁】であり、何なのかと油断して突き刺さっているそれをアルラウネにとって何なのか理解するような時間はない。

 素早く女剣士が解体包丁を奪うと毒液が流れ出す傷口にコーティングされた切れ味を叩き込む、当然ながらそれはアルラウネの心臓まで容易に達する。



 旅で得たものは、そうそう無駄にはならない。



 解体包丁が心臓を両断した事によって毒液の体液が噴き出し、アルラウネは絶命する。

 その一部を浴びてしまった女剣士は放浪者の無事な姿を喜びながら意識を手放した。


あれおかしいな、凄くあっさり戦闘が終わった

登場人物を強い設定にしすぎたかなと思ってしまう

てか武器が強すぎるのかな……別にチートしてる訳でもないのに

戦闘書く能力がないのかも



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