仕事は簡単に終わらない
この世界のゴブリンは見つけ次第
頭数の暴力で押しつぶすべき敵です
ダンジョンについて良く判っていないのは空間の歪みだけでなく、地下へ地下へと降りていく構造になっている事が共通している事とどこからともなく魔物や資源となる鉱石や植物が湧き出てくるという点だ。
こうしたより下層へと向かう場所には他の小部屋よりもしっかりとした作りの広場となっているので、冒険者ギルドはそこに拠点を製作して職員や商人にその護衛の冒険者達を雇うなどして出来るだけ地上への流入を阻止するようにしている。
しっかりとした宿屋の作りには冒険者達への依頼の一つとして搬入された物資で経営されている食堂などを併設した臨時受付などが設置されており、日が沈み始める頃合いに放浪者と女剣士は復帰支援の依頼を完了したとして報告を行う。
特に大きな被害があった訳でもなく表層のダンジョンは機能している事や図太く商売している商人達に被害がない事や討伐した魔物についてや売り物になりうる魔物の部位を証拠として引き取ってもらう。
あのキノコの魔物の身体の一部はキチンと処理をしてから焼くと肉厚ながら旨味を帯びたものになり、醤油と一緒に焼いて炒めたステーキは下手な肉よりも肉の味をさせる珍味として人気で戒律などで肉が食べられない人達に絶大な人気がある。
仕事終わりの食事として持ち入れた一部を買い取りしてもらわず、食堂の料理人に手渡して調理をして貰う。
焼けるキノコと醤油の匂いを楽しみ、流石に場所が場所なので酒は飲めないので果物ジュースで喉を潤し、唾を飲み込んで待って待ってキノコのステーキと麦飯の料理を頂く。
放浪者は大きく切った一切れ一切れにかぶりつき口の中に味を残しながら麦飯を頂くのに対して、女剣士の食事は一切れサイズに切り分けたものを少しずつ食べるものでとても丁寧な食事である。
その所作の一つ一つが丁寧で、悪く言えば整い過ぎていて冒険者に多い荒くれさとはかけ離れたものである。
こうした冒険者の中には貴族崩れやさる貴族のご落胤と言った話もあるが、それについてとやかく聞く気は放浪者にはない。
どうせこうした簡単な依頼をこなして実績が認められたらそれで終わりの関係だ、迂闊に踏み込んで今後の活動に支障が出るような事は避けたい。
つまりやぶ蛇をつついたつもりでワイバーンが出てくるような、寝ている虎の尾を踏むような失敗をしないように触れないというのも冒険者として必要な素養の一つなのだから。
そうして食事をしている所に酷く慌てた四人の冒険者パーティーが現れる。
余程の事があったのか受付の前に来ると倒れてしまい、食事をしていた別の冒険者から受け取った水を飲み干して一息つくと言葉を発する。
ゴブリンが中層各部で確認された、大至急本部に連絡して下層にも赴いて掃討をしなければならない。
その報せにセーフハウスの中が一気に沸き立つ、手頃な冒険者のパーティーが連絡役として徴収され大急ぎで支度を整えて外に飛び出していく。
宿屋としての方でもその報せを聞いた冒険者達が我先にと受付に赴き、自分達のパーティーこそ下層討伐にと名乗りを上げる。
ゴブリンは魔物の中でも厄介な性質を持ち合わせ、広い外の世界なら未だしもダンジョンでは特に特殊な閉鎖空間である事によってその厄介さに拍車が掛かり、知恵を持つ魔物としても面倒この上ない敵ではある。
数匹のメスが母体として何処かに巣を形成し、無数の子供達を使い潰すように活動を行い他の魔物を狩りをして生活する一面とそうして母体が成長して女王となれば更に繁殖力を伸ばし、あっという間にダンジョンの中を埋め尽くす。
そうなれば繁殖にょって増えた群れを維持する食事の量は爆発し素材となる薬草の類や魔物がゴブリンに食いつくされて碌に機能しなくなり、機能を取り戻すまでに掛かる時間は計り知れない。
だが放浪者にとっては至極どうでも良い話だ、それなら別のダンジョンなり国に移動して仕事をすれば良いだけなのだから。
周りの熱狂とは裏腹に我関せずと食事を続ける。
しかしこうした時に高ランクとしての肩書が許さない。
前線に参加しないとしても中層と下層の間での掃討作戦における遊撃を行い、やる気のある冒険者達が不意打ちで壊滅しないように見回りをして欲しいと依頼されてしまう。
今の仕事の延長戦として指示されれば受けている身としては受けない訳にはいかない、しかし女連れというのはゴブリン狩りにおいて避けたい要素だ。
ゴブリンは捕食対象としてメスを好むがこれは特に母体を成長させる要素ではないかと研究されており女性冒険者はゴブリン達に執拗に狙われてしまう、無論実力のある冒険者ならば多少の数などものともせず討ち取ってみせる。
だがそれでも死ぬ時は死ぬのだ。
弘法にも筆の誤り。
ワイバーンも青空から落ちる。
ペガサスも平地でコケる。
熟練者冒険者でもゴブリンに殺される。
それが冒険者とゴブリンの関係だ、人間はゴブリンを自分達の明日の為に虐殺し、ゴブリンは母体となるメスの食事として人間を食い殺し合う。
数ばかりの雑魚だとしても、不意を突かれないようにこちらも数と助け合いで補っても、不意打ちの一つでアッサリと死ぬ時は死ぬのだ。
どれだけしっかりした装備があっても頭を棍棒で殴られれば気絶するし足に突き刺されればそれだけで碌に動けなくれば待っているのは急所の喉などを噛み千切られて死ぬ未来だ。
出会って日の浅い相手の命を背負う重みは乗せたくない、しかし依頼となれば引き受けるしかない。
女剣士もあくまでも遊撃支援や無理に戦わずやる気のあるパーティーが中心となってくれる事を条件として依頼を引き受ける事を納得する。
他のパーティーには悪いが組んで日の浅い相手同士でゴブリンとの戦いはしたくないというのは女剣士も同じだ、これで放浪者を死なせてしまうような事態になれば自分の冒険者稼業は再起不可能になってしまう。
本格的な討伐作戦は援軍が到着してからとして、パーティーなどによって下層の本隊に加わる為に暗くなり出すにも関わらず下る者や念入りに準備を始めるパーティーなどを横目に二人は宿屋に一部屋とって翌朝に備えて早めの時間から寝る。
女剣士が何か言おうとするが、その言葉が出てこない。
放浪者が言葉を上手くかけられないように、女剣士もまた悩んでいた。
自分に必要以上に話しかけず身の上についても訪ねようとしない事を、優しさと思っている。
ゴブリンとの戦いに対して嫌がっているのに自分の為にその依頼を受けねばならないのに、自分には何も言わずただ先達としての背中を見せて助けてくれている。
きっと自分の事は何も告げずにこうして依頼を続けて、別れを告げて、自分が秘めている問題に彼を巻き込むべきではないのだ。
最近見ている作品が削除されている事が多い
凄く悲しい
何があったのか判らないけど、やっぱり読んでる作品が無くなるのは悲しい