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年上王子が呑気過ぎる。  作者: 四季
2章 遊園地
21/53

21話 ぷかぷか浮かび

 私たちは、遊園地に来るなり、メリーゴーランドを堪能した。数回乗れたし、馬車型も馬型も経験できたため、満足だ。


「次はどこへ?」

「あっちの乗り物はどうかな」


 リンツが手で示したのは、メリーゴーランドからは少し離れたところにある別の乗り物だった。


「ぷかぷかする乗り物だよ。乗ってみないかね?」

「え、ぷかぷか……? まぁ、リンツさんが乗りたい感じなのなら、乗りましょう」

「よし! では乗ろう!」


 私とリンツはそっと手を繋ぎ、そちらへ移動する。

 正直、わざわざ手を繋ぐ必要はないと思うのだが、リンツが自ら繋いできたから仕方がない。



 今度の乗り物は、メリーゴーランドとはまた違う形だった。

 水で満たされた細いレーンに、今から乗るのであろう物体が浮いている。浮いている物体の横幅は、レーンの横幅とほぼぴったり。この感じだと、水に浮いていても転覆することはなさそうだ。


 が、メリーゴーランドと違って人は並んでいない。


 そこだけが、少し不気味である。


「何だか不思議な乗り物ですね」

「ははは、そうだよね。僕も最初は、なかなか乗る気になれなかったものだよ」


 自分さえなかなか乗る気になれなかったものに、私をいきなり乗せるというのね……。


 私が複雑な心境になっていることなど微塵も構わず、リンツは手を差し出してくる。


「なに、一緒に乗れば怖くないとも」


 差し出された手を、取るべきか否か。

 私は暫し迷った。


 そして、迷いに迷った末、その手を取ることにした。


 水に浮いているものに乗る経験なんて、滅多にできないだろうと思ったからである。


「決まりだね」


 その後、リンツが係の人に「乗りたい」ということを伝えてくれた。


 私とリンツは一つの乗り物に乗り込む。子ども用だったのか、大人二人となるとかなり狭い。密着する、とまではいかないが、体が触れるくらいの近さにはなってしまう。


 もっとも、既に結婚した身ゆえ問題ないわけなのだが。


「狭くないですか、これ」

「そうかな? 僕としては、キャシィさんと傍にいられて嬉しいのだが」


 なんのこっちゃらである。


 今は一般人のふりをしているとはいえ、王子なのだ。一国の王子ともあろう人が、数十も年下の女に対してそんな甘いことを言って良いものなのか、謎である。


 私がそんなことを考えている間にも、私たちを乗せた乗り物はぷっかりぷっかり進んでいく。


 進む速度自体はゆっくり。けれど、右に傾いたり左に傾いたりを繰り返すため、気は抜けない。

 レーンの幅が狭いため、乗り物が横倒しになってしまうことはないだろう。しかし、こうして乗っていると、「水に落ちそう」なんて不安になってしまうものだ。


「リンツさん」

「何かね?」

「これ、意外と怖いですね」

「ん? そうかな」


 リンツは呑気だ。ちっとも不安になっていない様子である。

 元々の性格もあるのだろうが、こういうことはやはり、慣れというのもあるのかもしれない。


 ——ガタン。


 唐突に、音がした。


「え。リンツさん、今何か音がしませんでしたか」

「うむ。確かにしたね」


 ——ガタガタッ。


 またしても鳴る、謎の音。


「大丈夫ですか、これ」

「心配ないよ。これはいつものことだから、気にしなくていいとも」


 私とリンツを乗せた乗り物が、徐々に上がっていく。


「え、え、あの。これは一体? 浮いて……」

「滑り台みたいなものだよ。ただ上がっているだけなんだ」

「はぁ」


 よく分からない——そう思っているうちに、どんどん高くなってゆく。視界が地面から離れていっている。

 私は信じられない思いで、宙を見つめた。一体何が起こるというのか。


 ——ガタン。


 ほんの少しの、停止。


「来るよ、キャシィさん!」

「え?」


 刹那。


 私たちを乗せた乗り物が、一気に急降下。


「えええ!?」

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