表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
年上王子が呑気過ぎる。  作者: 四季
2章 遊園地
20/53

20話 回る回る

 メリーゴーランドに乗りたい人たちの列に並び、しばらく。ついに私たちに順番が回ってきた。列に並んでいた間、私は、楽しそうにしている人たちをたくさん見た。それもあってか、期待で胸がいっぱいだ。


「こっちだよ、キャシィさん」

「ありがとうございます」


 リンツに手を取ってもらいつつ、私は馬車に乗り込む。

 かぼちゃのような馬車の中には、二人ずつが向かい合って座れるような座席があった。私とリンツは、そこに、向かい合うように座った。


 外から見ていた時はそうは思わなかったのだが、意外にも、馬車内は狭い。二人だというのに、狭いのだ。


「なんだか狭いですね」

「確かに。言われてみれば、狭いような気がしてきた」


 可憐な旋律が流れ出す。それとほぼ同時に、私たちを乗せた馬車型の乗り物はゆっくりと動き始めた。


「あ、動き出した」

「本当に動くのですね……!」


 ただ座っているだけなのに、視界がどんどん変わる。

 足を動かしていないのにこんなにもスムーズに移動できるなんて、かなり驚き。


 時折、ギシィだとかキィだとか、軋むような音が鳴る。壊れないか少々不安だ。けれど、リンツが慌てていないところを見ると、「軋むような音が鳴るのはよくあることなのだろう」と思うことができた。


「面白いですね! リンツさん」

「気に入ってくれたかね?」

「はい! この乗り物、結構好きかもしれません!」


 なぜだろう、妙に心が踊る。


 未知の体験をしているから? リンツと一緒だから?

 そこはよく分からない。


 ただ一つ確かなのは、今この瞬間が楽しいということ。


「今度は馬にも乗ってみたいです」

「では、この後もう一度並ぶかね?」


 膝が触れる距離。

 手を掴めそうな距離。

 私とリンツは、今、呼吸する音さえ聞こえてくるほど近くにいる。


「良いですね! ぜひ! ……あ。けど、リンツさんは他のところへも行きたいのでは……?」

「もちろん他も回りたいよ。でも、時間はたっぷりあるからね。何も慌てることはない」

「では、後でもう一度並ぼうと思います」

「名案だね! 悪くない!」


 その頃になって、流れていた曲が止まった。それからしばらく、馬車の動きも止まる。そして「気をつけてお降り下さい」とのアナウンス。


 どうやら、終わったみたいだ。


「降りればいいですか?」

「そうだね。そして、もう一度並ぼう」

「はい。ありがとうございます」


 降りる時、リンツが「先に降りてくれたまえ」と言ってくれたため、私が先に降りた。踏み外さないよう慎重に。


 まだ慣れないけれど、私はちゃんと降りることができた。


 一方リンツはというと、勢いよく立ち上がりすぎて天井部に頭をぶつけてしまっていた。

 慣れていてもそういうことは起こるのだな、と、私は一つ学んだ。


 それから私たちは、もう一度列に並ぶことにした。


 列は長い。わりと混雑しているためそこそこ時間がかかりそうだ。しかし、リンツがいるから退屈はしない。だから、少々待つことになっても苛立ったりはしなかった。


 そして、今度は馬型に乗った。


 先ほどの馬車型とは違い、馬型は座席が細い。しかも、つるん、としている。馬車型よりさらに未体験の感覚で、ワクワクするのと同時に、ハラハラもした。落ちたらどうしよう、なんて考えてしまって。


「馬はどうだったかね?」


 何とか落下せずに馬型に乗り終えた私に対し、リンツはそう尋ねてきた。


「落ちるかと思いました」


 私は正直な気持ちを述べる。

 するとリンツは、愉快そうに、ははっ、と軽く笑う。


「僕も最初はそう思ったよ」

「つるつるしてて、少し不安になる感じでした」

「そうだね。僕は初めて乗った時、途中で落ちたよ」

「ですよね——って、え?」


 落ちた?

 本当に落ちた人がいたというのか……衝撃だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ