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年上王子が呑気過ぎる。  作者: 四季
2章 遊園地
16/53

16話 築いてきたもの

 そして、遊園地へ出掛ける日が来た。

 私はローザが用意してくれた柿色のワンピースを着て、リンツと会う。


「うわぁっ!!」


 目と目が合った瞬間、リンツは大声をあげた。


 彼の態度に、私は不安になる。

 ワンピースが驚くほど似合っていないのだろうか、と。


「リンツさん?」

「あ……す、すまないね……」


 彼はそんな風に謝ってくれるけれど、私としては、謝罪よりも驚いた理由の説明が欲しい。なぜそんなに驚いたのか、気になって仕方がない。


「いえ。それより、その……なぜ驚いたのか教えていただきたいのですが」

「あ、あぁ」


 白ブラウスに黒のズボンというシンプルな服装のリンツは、一度ふぅと息を吐き出してから、私へ視線を向けた。


「いや、いきなり失礼なことをしてしまったね。すまない」

「気にしていません」


 まぁ、本当は気にしているのだけれど。


「それより、どうして驚いたのか、教えていただけますか?」

「あぁ、それはね」


 数秒空けて、彼は続ける。


「キャシィさんが、いつもよりずっと大人の魅力に満ちていたからだよ」

「はぁ」

「あ! いや! もちろん、いつもだって魅力的ではあるがね!?」


 慌てたように言葉を発するリンツ。


「ただ、いつもは、大人の女性というよりは娘さんという印象だったのだよ。けど今日の君は大人の女性だった。だから驚いたのであって……変な意味で驚いたわけではないよ」

「本当ですか」

「もちろんだとも!」


 すぐには信じられなかったけれど、彼の様子を見ているうちに、彼の言葉が本当であると信じても問題ないような気がしてきた。


「なるほど、そういうことだったのですね」

「信じてくれたかね!?」


 私は首を縦に動かす。

 すると、リンツの全身から、ふっと力が抜けた。


 転倒するほどの脱力ではないものの、目で見て分かる程度の脱力。


 私は「変だっただろうか」と不安を抱いていたが、もしかしたら、彼は彼で「誤解されたかもしれない」などと不安になっていたのかもしれない。


「「良かった……」」


 私とリンツが漏らした安堵の声が重なる。


 奇跡とも言えそうなくらいぴったりと重なったので、正直驚いた。

 だって、練習の一つもしていなかったのよ。偶然なんかでこんなぴったり揃うわけがないじゃない。


「はは、見事なまでに揃ったね」


 先に話し始めたのはリンツ。


「本当ですね。練習もなしにここまでぴったり揃ったのは、初めてな気がします」


 こちらから話しかける、というのは、私としては難しい。もちろん、やろうと思えばできないことはないのだが、余計なことを考えてしまってタイミングを逃すというパターンが定番だ。

 そんな私にとって、自ら話し出してくれるリンツはありがたい存在。

 彼の方から話し始めてくれれば、私の方も、比較的自然に話し始めることができる。


「僕たちの心は一つ、ということが証明されてしまったね」

「それは言いすぎでは……」

「ま、いきなり勝手な解釈をするというのも問題かもしれない。僕としては、キャシィさんと一つになりたいくらいなのだが、ね」


 私も、常に歩み寄ろうとしてくれるリンツのことは嫌いじゃない。

 好きかと問われれば自信を持って「好き」とは答えられないだろうけど、信頼してはいるし、一緒に過ごせることを嬉しいとも思う。


 結婚した当初は「親が決めた相手」という考えばかりが浮かんできていた。でも、今はもう、そうではない。始まりは親の勝手な契約であったとしても、その後ここまでの関係を築いてきたのは私たち二人だ。


「では行くとしようかね」


 目の前に差し出される、リンツの手。

 私はその手をそっと掴んだ。


「おぉ!? まさか本当に手を繋いでくれるとは! 予想外!」

「……繋がない方が良かったですか」

「いやいや! それはもう、繋いでくれる方がずっと嬉しいとも!」

「なら良かったです」


 こうして、私とリンツは歩き出す。


 いざ、遊園地へ!

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