第27話:魔王と機械科1
会長が初を圧倒し、鋳鶴が江を咆哮で下し、遂に場面は誠へと移っていく、彼の敵は何者なのか、そうもうあと一人。いや、一体しかいないッ!
「他の連中を気にするならまずは、己の心配だ……。あいつらもすぐにやられちまうような玉じゃねぇしな」
誠は防衛を負かされた小部屋の一室で敵との遭遇を心待ちにする反面。他の面々のことを気にかけていた。
付け焼き刃とは言えど、彼らは相当な訓練を積んだ。それは確かに誠も彼らの様子を見て気づくことが出来るぐらいには成長している。他の人間からすれば、何処が変わった。と聞かれても答えることは出来ないだろう。
しかし、誠は彼らが成長したか。と聞かれれば、はい。と即答する事は出来る。魔力量も個々が得意とする能力の技術も上がっていた。
元から実力と、一定以上の能力がある一平、鋳鶴、歩、影太、桧人に比べ、麗花、詠歌、涼子の三人の成長は特に目まぐるしい。
元から出来る者は、それをより、強固なものへ。持たざる者たちは、戦力の底上げをしようと、鍛錬を重ねた。
鋳鶴と誠の二人は特にする事もなく、ほぼほぼ力の制御という事だけで鍛錬を終えている。 と言っても二人は己の中に巣くう同居人との同調も必要になるが、そこは二人ともそれと会話をする事は不可能ではないので、それなりの報酬を彼らに掲示し、制御権をもらっている様な状態だ。
そして普通科と、機械科。それぞれの面子が激戦を迎える中、仲間の事を考えていた誠の前に機械科の相手が現れる。
轟音を辺りにまき散らしながら、それは誠の目の前で着陸した。
彼の目の前に降り立ったのは、全身が桃色で塗装され、身長約2mを誇る誠を凌駕する体躯の二足歩行のロボットである。
全身にガトリング砲や戦艦などに備え付けられている様な重火器を満遍なく、配置し、そのすべてを誠に砲門を向け、着々と彼を打倒する算段を立てていた。
「やぁ、私の相手は君かな?」
「おう。まさか、ロボットが俺の相手なんてな。お前幸運だぜ」
「何故だい?」
「何故?そりゃあ機械科のお嬢さんたちを傷つける訳にはいかねぇだろ?それにだ。お前が機械なら男も女も関係ないしな」
「素晴らしい。戦闘意欲の塊の様な人だ。君の様な男性には機械科に是非とも来てほしいものだ」
「沙耶が居る限り行かねぇよ」
「冷たい男だ。それで私が君の相手で何が幸運なのかね?」
「あぁ、それか、そりゃあ。俺がお前をスクラップにしてやれるからな」
開口一番とともにエンジンを温める様に魔力を充填させていた両脚の魔力を爆発させて噴射する。すると誠は浮き上がる様に全身が一瞬だけロボットの頭を越える。
一度の跳躍でロボットの頭部付近まで迫った誠は、落下速度をロボットの顎に狙いを定め、一瞬で右拳を振り抜いた。
誠の拳は鬼の力で硬質化し、ロボットの強度に負けず、衝撃によってロボットを押し負かす。
「人間の力ではないな。それなりの強度はあるはずなんだが」
「お前を殴る瞬間に、俺は拳から魔力を放出して弾き飛ばしたんだよ。一応、人間相手なら中まで傷つける一撃にはなってるんだが、流石にロボットは無理か」
「確かに、顎にダメージは確認したが、損傷はしていない。むしろ君が私の相手で良いのかね?」
「いいんだよ。俺は普通科最強の男。機械科相手でもロボットの方がちょうど良いぐらいだぜ」
「私は、機械科の叡智を結集して作られた兵器だ。それに君は鬼という力を使用するとして私に勝てるとでも?」
誠は、地に足を付けてロボットを見上げた。
「君の名前は?」
「てめぇ。俺の思ったことを言いやがってムカつく野郎だ」
「ははは。やっぱり君は城屋誠だろう?」
「見当ついてんじゃねぇかよ」
「当たり前だ。制作者が君を最初に認識する様にしたからな」
「沙耶の奴……」
誠は右拳を握り、甲に血管を浮き立たせる。
「私は、マザーコンピュータ。今はこの機械にインプットされている。沙耶からしてみれば、私は父親の様なものでね。君は今、愛しの彼女の父と戦おうとしてる所さ」
「そうか、なら心置きなくお前を殴れるな。お義父さん」
上にではなく、誠は前に向かって跳躍した。マザーは誠の行動を予測しながら、装備された銃器の重みを感じながら、彼の動作に反応せしめんと全身に備え付けられたカメラで彼の動きを追う。
マザーの体には、肩に三門。腰に四門。脚に二門の大砲が備え付けられている。その他にも全身には隈無く重火器が備えられ、何処からでも誠を捉えられるようには出来ている。
その筈、と思考を巡らせながら、マザーは足下で暗躍する誠に向けて射撃を開始した。
「悪く思うな。将来の息子よ」
「うるせぇ!義父がロボットって何だよ!」
「OK!良いツッコミだ。君の良い所はそういう正直に人に意見を言い。物怖じしない所さ。沙耶から良く聞いているよ」
「こいつ」
逃げ回りながら複数回に分けて誠はマザーの脚をひたすらに殴打する。彼の射撃に合わせて直感的に直撃するであろう一部分に魔力を集中させて誠は銃器による攻撃から身を守る。が、彼の攻撃はそれでも苛烈を極め、幸運なことに致命傷や星が、警告音を響かせることはないものの。確実に誠の精神と体力を奪っていった。
脚部の銃器を狙いながら誠は、拳を突き出し、脚を振り、それらを的確に破壊していく。丈夫なのは本体だけで、マザーに備え付けられた銃器は鬼の力で十分に破壊が可能な物ばかりだ。
「私も芳賀三姉妹と同様に、沙耶を優勝させたい。その一心で機械科の業務を投げてまで協力している。だから彼女の隣に居るべき君も私は倒さなくてはいけない。親心というか、何というか。何より、まだ私は君を認めてはいないからね」
「認める。認めないじゃねぇだろ。一番は本人たちの希望だろうが!」
「なら君に問う。君は沙耶を幸せに出来るか?」
「出来ねぇなんて言う訳ねぇだろ」
「君なら言わないだろうな。強情だし」
「義父面してんじゃねぇぞ!」
誠はマザーの脚下で彼の砲門を一つ、力任せに引きちぎり破壊してみせる。破壊された箇所からはケーブルの様な線が無数に現れ、辺り一面に錯乱した。
「良いパワーだ。その力があれば、沙耶を守れるだろう」
「何処までも義父面しやがってムカつく野郎だ」
「それは仕方のない事なのさ。君は沙耶と戦うという道を選んだ。という事は、君と私は戦う宿命にあったし、現にこうして拳を交えて戦っているじゃないか」
「俺は拳だけど、お前は銃とかばっかだけどな」
「確かに」
彼が挑発している間、マザーの機体から出たケーブルたちは生き物の様に蠢き、植物の芦が建物や電柱に絡みつき、誠の脚を拘束した。
瞬時にそれを引き剥がそうと、誠は両脚に魔力を込める。が、ケーブルは突然青発色に輝きだし、誠に電気ショックを与えた。
「君が魔力を消費するのは一向に構わない。むしろ私は、破壊されてもまだ利便性がある程に完成された機体なのだよ。無闇やたらに破壊してくれて感謝しているよ。自慢のボディが若干剥がれてしまったのは残念だがね」
「どうりで……だが、この脱力感は……?」
「私のケーブルは特殊でね。私は内蔵バッテリー以外に魔力を使って動く事も出来る。仮にバッテリーが無くなったとしてもケーブルを介して魔力を入れてもらうか、相手から奪うかすれば、問題なく動くのだよ」
「あぁ、これか。どれくらい魔力を吸えるんだ?」
「それを教える訳にはいかないな。これは、あくまで体育大会。君が味方なら教えていただろうが。今の君は私の敵だ」
「なら、ケーブルが耐えられない程の魔力を吸ってみるかぁっ!?」
全身を震わせて誠は魔力を放出する。マザーのデータには誠の魔力量も存在したが、それを上回る魔力がマザーのケーブルに浸食していく。
「それは不味い!」
マザーは、ケーブルを瞬時に断線し、誠の魔力放出から自身を守った。すべてのケーブルは中途半端に彼に纏わり付いたまま引きちぎられている。
「人間ってのは、予想外なんだよ。あんたならわかるとは思うがな」
「あぁ、理解しているさ。特に君、いや、君ら普通科の人間は特にデータが役に立たない様な根性持ちが多いからね」
「わかってるじゃねぇか」
「勿論、この前、私をバイクさんと言っている普通科の彼女に教えてもらったからね。君らの素晴らしさというか、しつこさというか、根性持ちばかりで奇怪な面子が多い事は、麗花もその通りで君らと一緒さ。何処か謙虚すぎる気もしたが、芯の強い女性だったよ」
「ふっ、バイクさんか。あいつはお前をマザーコンピュータと知らずに接してた訳なんだな」
「あぁ、むしろ彼女にはマザーではなく、ずっとバイクさんと呼ばれてた方が心地良いがね」
「なら、ずっとバイクでいやがれっ!」
マザーとの会話中に、誠は脚に纏わり付いたケーブルをすべて剥がした。
ケーブルを全力の力で剥がした彼に、マザーは無数の弾丸を射出する。
誠は、弾丸を数発は受けたものの、体の正面を魔力でコーティングし、身を守った。
「……ッ……!」
弾丸を受けた箇所に魔力を込め、傷口を塞ごうと躍起になる誠だったが、傷は瞬時に塞がらず、血が滴り続けている。
「ケーブルに巻き付かれた時に、いや、それよりも前から、君は魔力を消耗している。全力とはほど遠くなっているのがお分かりかな?」
魔力による傷口の治癒が不可能な程、誠の魔力は減少していた。意識はある。体も問題なく動く、もし致命傷を受けようものなら即座に強制退出だっただろう。
攻撃時の魔力の扱いならお手の物な誠でも自身の傷を治癒する魔力の使い方を理解していない誠は、これまでも大雑把且つ、本能的に傷口を治癒しているだけだった。
マザーの放った弾丸は、どれも何の変哲もない弾丸である。特に細工も無ければ、彼が工夫して射撃している節もない。
肉体の硬質化は得意な誠でもそれは、範囲を決めていない全身だけ、範囲を決めてその部位のみを硬質化させる事の方がより労力を使うが、より強固なものになる。
しかし、魔力の制御を極端に苦手とする誠には至難の技であり、それを何度も行っているとなると、今の状態に陥るのは必然。
「ちっ、めんどくせぇ分析野郎だ」
「それは私を褒めていると受け取るが?」
「そう思えばいいさ。てめぇはやっぱりスクラップにしてやるからな。このクソッタレ」
「果たしてスクラップになるのはどちらかな?」
誠が拳を振るうと、マザーも同時に拳を振るう。誠の拳はあくまで人間の物。それを硬質化させてマザーの拳よりも高い強度を誇る拳を作らねばならない。
「やっぱかてぇわ」
「私の拳は機械科特製のカーボンで作られているからね。硬いのは当然という事だ。君の減らず口と体。先に崩れるのはどちらか!」
マザーは機体を震わせ、拳に電力を送る。
「なっ!クソがっ!」
マザーの全身は、瞬時に電撃に包まれる。
彼に触れていた誠は、一瞬だけその電撃を味わいながら、即座に退いた。
電撃を浴びせられた右腕は赤く腫れ、誠は手首を押さえる。マザーから離れても誠の拳は痙攣し、手首を押さえる左腕までもが痺れていた。
「おいおい。マジかよ……」
「流石に丈夫だ。鬼の力というものは大変素晴らしい」
「それはどうもよ!」
拳で駄目なら。と考えた誠は右足を硬質化させ、そのままマザーの胴体に蹴りを放つ。魔力の放出とともに、誠の蹴りの威力と、硬質化の影響でマザーは数m後ろに後退する。
電撃を帯びていたマザーに対し、全力の蹴りを浴びせた誠の右足は、右腕同様に赤く腫れ上がり、着用している陽明学園指定のズボンが直接引き裂かれたかの様になっている。
「たけぇんだぞ!この学生服!」
「これは、体育大会だ。学生服の替えぐらい用意してくれると私は思うが」
マザーは誠の体力と精神力に感服していた。そしてすでに限界に近いであろう魔力の消費を恐れぬ硬質化と魔力放出の併用。彼の覚悟をそれなりに沙耶から聞いていたマザーは誠のことを見直していた。
沙耶の義の父役として、母の代わりとして、マザーの中で徐々に男同士としてではなく、相手を娘婿として見ている自分が居る事に気づく。
彼女は独りぼっちではない。機械科の生徒たちに囲まれ、母と比較され、尊敬の念で見られる事が多い彼女ではあるが、同時に母を越えられないという事を常に考えてしまい、劣等感を抱えながら生きていた。
決して彼女は劣等ではない。という事をマザーは知っている。むしろ、士気の上げ方。機械科に対する奉仕の精神は彼女が歴代最高の生徒会長だとマザーは機械科歴代生徒会長のデータベースを閲覧しながら、常日頃それを頭の中に入れながら、沙耶と会話をしている。
彼女は強い。むしろ、歴代最強の可能性を秘めている可能性もある。
だからこそ、マザーはこの体育大会に不本意ではあるが、参加したのだ。彼女の為という事も十分な理由だったが、一回戦の相手が学園史上初の異能力を持つ普通科の相手だったからである。
ここ二年の様に一平だけの普通科ではない。彼らには横に手を広げ、力と自信を付けた。友を呼んだ。鬼を招いた。
マザーにとって鬼を招くなどという行為は日本では禁忌とされているのでは?と疑問に思うほどである。
沙耶だけでなく、普通科と魔法科。彼を認める者たちの多さにマザーは、鬼と対峙する事を決意した。
そしてその鬼を沙耶が求めるのなら、節分の様に豆を投げ、彼を追い払うのではなく、彼を受け入れて、沙耶の為手に入れよう。
そう念じながら、彼女と手を組み、彼らと対峙した。
異常という事はとうに気づいている。自分が。という訳では無く、相手が。という意味で、先日の魔法科から退避した時の一件から、マザーは麗花と友人同然の関係を築き、彼女から言われたことを思い出す。城屋誠だけが、危惧するべき敵では無い。それ以上の相手がこの普通科には居る事。
「君を義父として認めてあげたいのは山々なんだが、私を越えられない程度では沙耶はやれないな」
「うるせぇな……。ならお前の核でも何でも破壊してやるよ……。人間の土俵に立って俺と殴り合えって言っても無理だからな……。でもお前を倒さねぇと、あいつらに楽させてやれねぇからな!」
誠は己に渇を入れる為、地面を全力で殴打した。
「普通科最強の男として、あの馬鹿どもに頼まれちゃあ、お前を倒さずに負けれるかよ。鋳鶴が居るって言ってもあんたにゃ敵わねぇかもしれねぇしな。別に信用してない。っていう訳じゃあない。ただ、俺には俺なりのけじめっていうか、俺に向かって来た奴は全員ぶっ倒すって決めてるからよ」
「誠。悪いことは言わない。やめておけ。君は沙耶の彼氏。我々と争う理由や意味は無い。魔法科でもなく、普通科でもなく、機械科に来るんだ。そして彼女の傍に居てやってほしい」
「嫌だね。ただ、隣に居るなんて案山子や人形で十分だろ。俺は、これからも普通科でやってくんだよ。あそこが一番、俺が過ごしやすい場所だからな」
誠は右拳を固め、魔力を込めた。
「誰かの事を気にせず、自分の欲望のままに他人を巻き込む馬鹿が二人も居たら、普通科なんてもたねぇだろ。俺の欲望は誰にも迷惑をかけてない筈だったんだがな。それにマザーだっけか、お前じゃあ俺は止められないだろうからな」
「何?」
「お前は確かに優秀な機械だ。だが、機械っていうのはどうも頭が固くていけねぇ。製作者の性格がきっと、そのままになってんだろうな」
「機械として考えれば私の思考能力と処理能力はどんな機械にも負けない人間に近い思考を導き出していると思えるがね」
「そういうところが駄目なんだよ。お前じゃあ俺を魔法科から掬い上げれると思えねぇし、何より機械を毎日相手にするなんざぁ御免だね」
「ふっ、麗花といい、君といい、普通科はあまりにも一直線過ぎる。だが、そこが良い。沙耶の敵としてちょうど良い上に、君たちは卑怯な事はしない。私はそう思えるからこそ、安心して戦える」
「卑怯な奴ねぇ。一応、科のトップがすげぇ卑怯だとは思うぜ。外道ではないが、そういう線引きはあいつも出来てるだろうし、それにあんたも正々堂々とやってるじゃねぇか。でけぇ銃ぶら下げながら、さっきから全然撃ちやしない。俺を倒さなきゃ沙耶に怒られるんじゃねぇのか?」
マザーは頷いて、銃口を誠に向けた。だが、一向にその銃から弾丸が射出される事はない。「最初はそれこそ、君を殺すつもりで撃っていた。でも君のあまりに一直線すぎる性格に私はいつの間にか、引き金の弾き方を忘れてしまってね。それならもう、四肢を使うしかあるまい?」
「それでも機械かよ!ポンコツ野郎!」
誠の拳に合わせてマザーも全身を躍動させながら、彼に向けて拳を放つ。彼の拳は装甲になっているマザーの拳よりも固く、威力もあるように感じられた。
人間には、限界というものが存在する。成長性は生まれ落ちた瞬間に決定され、一定まで達すると、それはもう成長を止める。
マザーのAIにはそう記録されていた。
誠から言わせてみれば、それはAIだからこその意見であり、そんなものはこれまでのそいつの人生によって変わると言う。
そんな事はない。と思うマザーだが、AIにだって間違いはある。
かつて自分を製作した人間がそう言っていた様に、マザーも彼女が最初にかけてきた事を思い出し、誠の拳と向き合う。
「「機械に間違いはあっちゃいけない。けれど、私の様なポンコツ制作者が作ったんだから、もしかしたらポンコツな部分がいつか出てきちゃうかもね」」
沙耶に似ているその少女の嬉々とした表情は、今もマザーのAIの中に、鮮明に記憶されている。
最初は、機械科の為ではなく、一人の少女が楽をしたいが為に作られたコンピュータだった。それが、彼女の卒業を迎えるとともに、不要になった訳では無いが、マザーは機械科を統括するマザーコンピュータとして機械科に迎えられた。
そうしてくれと頼んだわけでも無く、そうなりたい。そう願った訳でもない。一人の少女の楽をしたい。という気持ちから生まれた一つのAIは、時を超えて彼女の娘とともに、今、戦場に立っている。
「そう。私はポンコツだ」
「おう」
拳を交えて漸くマザーは気づく、この男だからこそ、沙耶は一緒に添い遂げたい。と思うのか。と
「AIとして失格ではあるし、何よりも私にとって一番大事なのは、私がこのイケボを半永久的に出し続ける事が出来るのが一番大事なんだ」
「はぁ?何言ってんだ」
誠はマザーの発言に呆れながらも抜かりなく拳と蹴りで彼を後退させていく。
「ポンコツならば、ポンコツで結構だ。非道でなければならないのに、君は私にそうさせてくれない」
「俺のせいにすんのかよ」
「あぁ」
「沙耶が改修してるだけあるよな。お前」
「それは褒め言葉と受け取っていいのかね?」
「あぁ、まるで人間みてぇな感情を持ちやがって、ま、わかるけどな。あぁいう何かに熱すぎる馬鹿が居るとよ。こっちも感化されるっていうかさ」
誠の拳により力が入る。マザーは一瞬だけ気を緩ませていた。それが仇となり、誠の拳に全身を押し負かされる。彼の力に反発すればするほど、マザーの脚は地面に埋まり、誠の拳に膝や腰が悲鳴を上げる。
「私の耐久性を超えようとするか……。私は一向に構わないが、それでもこの力は異常だ。嬉しいようで辛いようで、これが人間の感情に近いものか」
「すげぇさ穏やかなんだよ。今、俺はお前と戦ってるけど、それが間違ってるとも思ってねぇし、むしろお前らと戦う事は正しいと思ってる。まぁ穏やかっつってもちゃんとお前をぶん殴るってことと、魔力を込めるのは忘れねぇけどな」
魔力が滾る。血が躍る。筋肉が弾ける。
目の前に存在する鉄塊を砕かんとマザーの強力な両拳に真正面から正々堂々と突く。頑丈さでは敵わない事を誠はとうに理解している。
勿論、攻撃力でも彼には、敵わないだろう。ただ、「純粋」な攻撃力では、誠に勝算は無い。
「何がしたいんだ。城屋誠。諦めた方が君の為だ。私の耐久力では、君の自慢の拳も自身を傷つけるだけの道具になる」
「確かにそうだ。でもお前には見えてねぇのか?今のお前の状況が。俺は確かに拳を血まみれにしながらお前を殴ってるけどよ。何か異常でも出てねぇのか?」
「なっ!」
マザーの機体は警告音を響かせながら、ランプの様な物が赤い光を放ち、輝いていた。原因は魔力の逆流と表示されているが、マザーの機体自体には異常は何らない。強いて不安視するのなら、誠の力で押し込まれた両脚のみだ。と思っていたマザーだったが、誠の拳から彼の全身から抽出された魔力をマザーが捨てたはずのケーブルから吸収されている。
「無意識に吸っちまうのは、ポンコツだと思うぜ。マザーコンピュータさんよ」
「馬鹿な!捨てたケーブルは確実に断線している!何より、繋ぐ理由と動機が私にはない!はっ……!」
「お前のケーブルは魔力を吸うことが出来る。お前も魔力で動くんだからよ……。俺の魔力をケーブルに吸わせとけば、ケーブルは動かす事程度は出来るんだよなぁ!?」
地面に減り込んだマザーの両脚は衝撃と、誠の殴打に耐える為、若干損傷している。そこに誠は、マザーの捨てたケーブルを放り込み、誠の魔力放出の力をマザーの拳に向けてではなく、自分の拳からマザーの脚部に接続していたのだ。
「ぐっ!」
「魔力でガッチリ食い込んでんぜ……!銃で闘ってりゃあ、こんな事にはならなかった。お前の負けだ。って格好つけたいのはあるが、お前の慈悲に感謝するぜ。俺は負けを認めてやる。勝負には負けたが、戦いには勝つってな」
未だに、マザーは誠に銃撃を行おうとはしない。ケーブルを解除する事に気を取られるのが嫌なのか。そう考えているうちに、誠は一瞬だけ手を緩めた。
「あぁ、それが人間の弱さだ。私が銃を撃たなかった。勿論、今も撃てないのではなく、撃たないという選択を取っているだけさ。君が気にしてほんの一瞬だけ、力を弱めると思ってね。だからこそ、私は君の性格を見たんだ。確かに、君の作戦は素晴らしかった。私も大分体を損傷したし、尚且つ、銃もいくつかおじゃんになったからね」
「はっ……!」
誠が巻き付けたケーブルに彼自身が破壊した物、マザーから引き剥がした物が彼を捉えて全てが同じ方向に向いている。
「楽しかったよ。僅かな時間だったけれど、娘婿との拳での対話は非常に得るものも多く、何ものにも代えがたい時間だった。ありがとう」
「なぁにが……楽しかっただ!ボケ!」
誠は吠えた。
両腕は自身の腕は真っ赤に染まり、更には殴り付けた衝撃で血が飛び、カッターシャツも真っ赤に染まっている。
マザーの目には彼の体力、精神、肉体はもう限界に近い。星が警告音を辺りにまき散らし、誠の危機を煽っている。
誠の咆哮は、警告音を掻き消す程の大きさで周囲に轟き、彼は精神力を取り戻す。それはただの咆哮ではなく、マザーの仕掛けたケーブルとともに、絡みついている銃を同時に破壊した。
「馬鹿な。肉体からではなく、魔力そのものを咆哮として拡散し、私のケーブルを再び破壊するどころか、接続していた箇所と、ケーブルに巻き付けていた銃器も破壊するとは」
マザーを覆っていた脚部の装甲はケーブルの断裂が間に合わず、銃を固定していたケーブルが誠の放出した咆哮の魔力を吸収し、その衝撃に耐えられなかった基盤が露わになり、電撃を放ちながらショートしている。
誠は基盤が放っているわずかな光を見逃さず、そこに詰まっていた無数のケーブルを無言で引き剥がし、マザーの露わになった基盤に右腕をねじ込む。
これにはマザーも反撃せざるをえない。
即座に銃器を全身から展開し、そのすべてを誠という照準に合わせる。基盤はいざとなったら切り捨てる事が出来るが、マザーは脚を失えば、背部に設置されたスラスターで宙に浮きながら移動する事を強いられる。
思考を巡らせると、己の脚を諦めるという結論よりも誠を仕留めるという結論に至った。その方がマザーにとっても好都合な上、自分だけで尻拭いする事は出来る。
銃撃されるより前に、誠はマザーの基盤に体内に残存する放出可能な魔力を一斉に放出した。
彼の身体から放出された最後の赤く発光する魔力は、マザーの右脚を完全に焼き切り、ついにマザーは顔面から地に伏す。
「はぁ……はぁ……」
「時間の問題だ。私はまだ動くことが出来る。星も健在だしな」
「星は流石に破壊出来なかったのかよ。畜生、ちゃっかりしやがって……」
「右脚を失ったが、私は機械だ。君たち人間と違って設計によるが、私は脚を失う程度では今後に支障はでない」
咆哮によって喉は掠れ、四肢はもう動く事はないだろう。全身の魔力も残りわずかな誠は、マザーを横目で見つめながら大の字でその場に倒れ込んでいる。
「お前を……、破壊出来なかったか……」
「まさか、右脚を持っていかれるとはな。流石に君の事を舐めていたのかもしれないな」
「ったく、機械は流石にイレギュラーだろクソッ!」
「魔力を通して、今の君の気持は聞かせてもらったつもりだ」
「そうかよ」
「誰の為に戦っているのかも、沙耶の言っていた人物の事も君が一人の友人の為にこうして戦っているのは義父としても胸を張れるというもの」
マザーと誠による激しい戦いのせいか、辺りの壁や床は大きく損傷し、小粒だけでなく、大粒のコンクリートの破片が錯乱している。
二人の戦いは未だ、終わっていない。
「もう動かねぇよ」
「奇遇だな。私も少しだけ、こうしていたい」
「機械の癖に」
「機械だからこそ。さ、機械は人間と違ってもっと熱を持つものだからね。君よりも私のクールダウンの方が長い」
「知るか、もっと丈夫に作れって言っとけ、俺が破壊できねぇぐらいのな」
「そのつもりでありますよ。城屋殿」
二人が倒れた小部屋の入り口から沙耶が二人を見下ろしながら、手を後ろで組んで見下ろしていた。
「俺の負けだ。お前抜きで負けちまうなんて、情けねぇ」
「そうは言うでありますが、ここまでマザーを破壊されるのは想定外でありました。彼も馬鹿正直なところがあるでありますからなぁ」
「止めてくれ。若気の至りというやつさ」
「若いって吾輩より年上のはずでありますが……」
大の字で横たわる誠は沙耶に向けて自身の星を投げ渡した。
「どういうつもりでありますか?」
「やるよ。さっさと潰すなりなんなりして俺を退出させやがれ、全身がいてぇし、無様な姿をあんまり見せたくねぇしな」
誠は天を仰ぎながら、欠伸をした。マザーは誠の健闘を称え、手を伸ばす。それは純粋に伸ばされたアームだった。
人間だったのなら、城屋誠という男がどれほどか、もっとより深く理解できたものの。とマザーは思いながら誠の手を握る。
「勝手に握りやがって」
「沙耶、結婚を決めるなら城屋誠しかいない。私はそう思うぞ。早く婚姻届けなりなんなり出したらどうかね?」
「やなこった。それより、まだ俺たちは負けてねぇ。まだ三人も残ってるはずだぜ。俺と結婚でもしてぇなら、奪って見ろよ。なぁ、沙耶」
誠は首だけ起こし、後ろ姿を向け続ける沙耶に向かって声を掛けた。彼女は振り返らず、ただ、そのまま天井を見上げる。
「沙耶?」
「マザー、あいつは自分の欲望のままに戦ってる。俺には分かる。彼氏面してる様に見えるかもしれねぇが。あぁいう時のあいつは開発につまずいたか、何か不味い事でも起こっている時、真実を知られるのを怖がってる時だ」
「沙耶、どういう事か説明してほしい。沙耶?」
沙耶は両肩を振るわせるだけでマザーの呼びかけにも応じない。
「結だろ。望月結。お前はあの女に踊らされてんだ。普通科を倒したら、俺を貰う。そんな感じの条件でも提示されて乗ったんじゃねぇの?三姉妹とマザーはお前に巻き込まれてる。俺と言う景品を前にしてどうにかなっちまったりしたんじゃねぇの?答えてみろ。沙耶」
マザーは沙耶の力の入れ様を思い出す。まるで何かに取り憑かれたかの様に研究や開発に没頭する姿を見せた事もあった沙耶の背中を思い返すと、マザーは誠の発言は正しいものである。と考えた。
でもそれでは、この事実が公に晒されているのなら、非難や中傷は免れないだろう。本当に誠を手に入れる為の努力だったのなら、幻滅する者も現れる。その現象を恐れたマザーは無理に立ち上がり、沙耶の前まで足を引き摺りながら移動した。
「私だけに、答えてほしい。沙耶、他の者たちには言わない。勿論、君のフィアンセにさえ秘密にしておく、だから沙耶。私にだけは言ってくれ、私だけには言わなくては、これ以上今の君は見ていられない」
真実を明らかにされた犯人程見ていられないものはない。沙耶だけでなく、機械科の生徒とともにテレビなどを見るマザーにとって、今の沙耶はその状況に陥っている。
二時間サスペンスの終盤でよく犯人役が見せる演技。今の沙耶は演技するなどという精神状態ではないだろう。
「自分勝手なのは……分かっているであります」
「大丈夫だ。私が擁護する」
「城屋殿が欲しかったのであります!機械科に!吾輩の傍に!」
「んなこたぁ分かってるよ。わざわざ言わなくても、大事にしてくれやがって、そんな事して俺を手に入れて嬉しいか?あの馬鹿女みたいになんぞ?」
会場は大荒れの極みであった。沙耶のファンである機械科の生徒たちによって誠に対しブーイングが会場中に飛び交っている。
「へ?」
「俺は純粋に何かに没頭するお前が好きなんだ。だから、あんま変な事考えて開発するな。戦うな」
沙耶の肉体が誠の発言とともに伸縮した。彼女が着用している特殊な制服は彼女の自在に変化する体躯に対応して大きさを変える。
マザーも恐怖と怒りを感じ、誠に離れろ。と叫び声を上げた。
「よぉ。刈愛」
「私の出るタイミングを理解しているとは食えない男だ」
誠を見下ろす様に長身の女性が彼の前に現れる。マザーも彼女の登場に焦りながらも傍らに寄り添い、刈愛と誠を見下ろす。
「どうせ出て来るもんだと思ってたぜ。お前も沙耶と同じ、馬鹿野郎だからな」
「黙れ、危うく沙耶の心を動かされる所だった。マザー、お前もお前だ。私が誠に不意打ちするとでも思っていたのか?私は正々堂々戦う女なのにも関わらず、私を疑ったのか?」
「あぁ、城屋誠を不意打ちで倒すと思っていたさ。卑怯な女性ではないが、君は何を考えているか私には分からない。それに、君の考えは沙耶と違って複雑すぎる。複雑怪奇な人間は好きだが、君は沙耶の中でも何かが違うからね」
「お前も喋りすぎだ。いい加減にしろ」
「手厳しい」
「芳賀三姉妹でもないお前は私の駒に過ぎない。私の為に働けば良い」
「そこまでにしといてやれよ」
誠はもたつく両脚に掌を当てながらゆっくりと立ち上がった。汗と血にまみれた彼のカッターシャツはくたびれて力を失っている。
とうに鬼の力も消失している彼の身体は普段の血色に戻り、筋肉も同様、元の大きさに戻った。伸縮した筋肉の後遺症で誠の両腕はまるでダンベルを持っているかの様に上がらなくなっている。
普段から誠は、沙耶のもう一つの人格である刈愛を気に入ってはいない。美人と思う事はあるものの彼女の性格を考えると、誠にとって彼女は好みのタイプではない。沙耶と違って思考が読めないというよりも態度が気にいらないという結論に至る。
体格も性格も全くの別人の如く変わる二人は、誠の対応も変えさせる。沙耶の時も素っ気なく、刈愛の時も素っ気なく見えるかもしれないが、二人での明確な差はわざと素っ気なくしているか、そうでないかの差だ。
いつも誠は沙耶に常々言われている。刈愛とも仲良くしてほしい。と。しかし、今の刈愛を見ていると、とても仲良くなどという関係にはなれそうにない。義父の様で鬱陶しいマザーの存在は誠にとって面倒そのものだったが、彼は誠と全力で戦い、結果を残した。
沙耶ならきっと、先程の様マザーの事を労い続けただろう。
「はぁ、もうひと踏ん張りしろってことか?」
「そこで倒れておけ、城屋誠」
「嫌だね。そういえば、てめぇも居た事を忘れてたんでな」
死中に活を求める様に誠は立ち上がり、自身の頬を二度叩いた。刈愛を倒すまでは行かないものの。残されていくメンバーの為に誠は大きく深呼吸をして背筋を立てる。
刈愛は、そんな誠の様子を冷ややかな目で見つめながら、マザーの機体に取り付けられた銃を一丁引き剥がす。
「城屋誠……」
「よかったじゃないか。お前の為に立ち上がったかもしれないぞ?」
「俺も焼きが回ったもんだぜ……」
誠は青空や雲の見えない天井を見つめながら、ここ最近の出来事を思い返す。誰のせいでこんな状況になったのか、二人だけ鮮明に顔が浮かぶ。責任者二人、ずっと気持ちよく魔法科の生徒に暴虐の限りを尽くすつもりが、こうして大舞台で戦わされ、彼女とも戦わされるなどと、決意をしていた筈の誠は本音を言うと、心底嫌な事であった。
だが、それも沙耶が敵。という事があったから、今の敵は沙耶ではなく、刈愛である。沙耶であるが、沙耶ではない。見た目も声も体形も性格も全て彼女と正反対でもう一つの彼女の形である。
もう魔力は全て振り絞った筈なのに、誠の体の何処か奥底から魔力が溢れ出て来る感覚に襲われた。しかし、その魔力を放てば、星が起動してこの場には留まれなくなるだろう。と誠は直感で読み取った。
誰かの為に、何かの為に戦う事に重きを置くのは今でも大馬鹿野郎だと、誠は心底思う。
戦いというものは自分の為だけに行ってこそのもの。
「頼んだぜ、大馬鹿ども……」
誠は刈愛に向けて右腕を左腕で抑えながら、ゆっくりと広げる。彼女は沙耶の彼氏である誠にも加減を知らず、マザーに格納された手榴弾をありったけ取り出して、誠に向けて全てを投擲した上で、更に両腕にマシンガンを抱え無慈悲にも躊躇や迷いを一切見せず、トリガーを引いた。
「お前を殺しはしないけどよ。多少は打ち抜かせてもらうぜ」
誠の掌には赤く小さな光が現れた。あまりにも小さいのだが、その光の強さは目を見張るものがある。手榴弾が破裂した時に起こる火花よりもマシンガンから出る火花よりもそれは色鮮やかに、力強く、誠と刈愛の間で光り輝いていた。
右手首を掴んでいる左手に力を込め、誠は照準を刈愛に向ける。
光がまるでそこから飛び出る様に眩い光を放ちながら、彼女に向けてレーザーの様な一筋の線が放出された。
刈愛はそれを回避しようとも考えず、誠への視線をずらさず、動じないという覚悟を見せる。
レーザーは刈愛の腿を掠め、マザーに吸い込まれる様に直撃した。
「ぐっ!」
「頑張れよ。クソ義父」
誠は弾幕に包まれ、消えた。刈愛の放った手榴弾はすさまじい爆音を繰り広げながら、二人だけの空間に鳴り響く、確認せずとも誠は星の機能で強制退出させられただろう。どの道、あの手傷では時間の問題だった。
刈愛は無言で沙耶に肉体の操縦権を譲ると、そのまま彼女の深層心理の中に入って行った。
「マザー……」
「何も言うな。君は何も悪い事はしていない。刈愛は刈愛。君には君のやり方がある。私はそれを否定しないから、顔を上げてくれ」
沙耶の目元に若干の涙が溜まっているのを確認したマザーは彼女に気を遣わせまいとそう言い放って彼女の精神が落ち着くのを待った。
土煙が完全に消えた頃には沙耶は誠の様に両掌で両頬を殴打し、気を取り戻す。
そしてマザーが敵情報の画面を表示し、そのまま次の小部屋へ視線を向けた。この先に存在するのが歩だと確認すると、沙耶はマザーの脚部背部スラスターの出力をあげ、肩の損失したスラスターが存在している時の様に機体を宙に浮かせ、歩の待機する小部屋に向けて操縦桿を両手で慎重に押し倒した。
遂にマザーコンピュータと沙耶の二人しか残っていない。という事でタイトルをかえさせていただきました。沙耶にとっての三年間の出来事をぶつけるのも今後の展開になります!お楽しみに!




