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魔法職の双刀使い  作者: 香月 燈火
Episode1 サービス開始と双刀使い
9/32

9. 対ゴーレム戦②

早めにストーリー進めたいので日付回った時にも投稿します。

 技能の発動を中断させられたことで、やむなく屈んで、回避に努めた。

 今まで反応なんて出来ていなかったはずのゴーレムが、何故か完璧に動きに合わせてきた。これが意味することはひとつ。



「まさか、速くなってる?」



 自分でも、顔が引き攣っているのが分かる。そうだとすれば、なんてソロ殺しなボスなのだろう。強制的に穴に落とされた結果が圧倒的ソロには不利なクエスト。もちろん拒否は不可。いくらゲームの中で日本ではないとは言っても、拒否権くらいは欲しかった。



 立ち上がった時にはゴーレムの右腕が攻撃のモーションに入っていたので、体勢の整っていない状態から無理矢理跳んで躱す。

 ゴーレムの右腕が足の下を通り過ぎ、体勢を整える前にがら空きの頭上へと杖を振る。



「【マナショック】!」



 今回は見事に命中し、一発目の打撃には相変わらず反応を示さなかったものの、大きかった頃なら多少動きを止める程度だったが、やはり小さくなったせいで衝撃には弱くなっているらしく、大きく仰け反った。HPも、1割減っている。



 ……あと2発!



「まだまだ……! 【マナショック】!」



 好機である今を逃さないために、体勢を立て直させることは絶対にしない。身体を捻り、クールタイムギリギリで間髪入れずに再度放った【マナショック】が、今度は右腕へと命中した。衝撃によって、腕の岩ががらがらと崩れ落ちる。HPは1割削れ、もはやゴーレムの命は風前の灯となっている。



 ……あと1発!



 だがそこで、反動を流しながら着地したわたしの腹部に、残ったゴーレムの左腕で迫っていた。



「くっ……うっ!?」



 咄嗟に杖を滑り込ませることで、直撃は防ぐことが出来た。それでも衝撃は全て全身に伝わり、当然踏ん張る力のないわたしは吹き飛ばされ、壁へと激突してしまい……何より、杖が完全に壊されてしまったのだった。



「ああ、もう壊しちゃった……」



 本日で3つ目のポーションを取り出し、身体へと振りかける。今のダメージでHPが残り1割にまで減ってしまっていた。杖がなければ、今ので一発ノックダウンだった。たった2日程度の短い期間だったが、もはや相棒と言っても過言ではないくらいに役立ってくれた。あの杖を見繕ってくれたカレンさんに感謝しながらも、激闘でボロボロになったゴーレムを倒す方法を模索する。



 ゴーレム自体のHPは1割程度。杖での【マナショック】だと、一発で削れるくらいの体力だ。ただ、この刀で一発かと言われると、正直微妙としか言えない。

 実のところ、杖と刀で【マナショック】を行使した際の威力は、杖のそれの方が大きいのである。

 今まではそこまで体力の高くない敵、また特に気にならなかったことから、何故そんな違いがあるのかを考えたことはなかった。

 けど、ゴーレムと戦って、はっきりとその理由が分かってしまった。何故なら、ゴーレム戦では特に()()が顕著だったから。



 愛用してきた【マナショック】の力の正体……なんてことはない、それは()()()()である……何を当たり前なことを、と思うだろう。だが、これが意外に重要な事実なんだと確信した。

 音の振動が大きくなればなるほど、威力は上昇する。音は空気中を通過し、そして物体へと浸透する。

 杖での攻撃の方が威力が高かったのは、単純に打撃攻撃であったがために振動が大きかったから。元々発生させた振動を魔力で増幅させ、表面を伝って相手のボディに衝撃としてダメージを与える。



 【マナショック】というのは外部からの攻撃ではなく、内面を攻撃するという魔法のスキルだった。



 さあ、どうしようか……。



 自分の武器は、初期に配布されたこの刀だけ。振動を起こすには、些か拙いものがある。杖も壊れてしまった以上、杖装備による隠し効果も切れていると考えていいだろう。どれほどの効果値があったかは知らないが、結構な火力が落ちていそうだ。

 とはいえ、衝撃というものはどこでも攻撃を加えれば一定のダメージを与えるというわけではない。どこかしら、一番効果的にダメージを発生させやすい部分というものがある。



 天が味方……いや、この場合は運営とでもいうべきか。ゴーレムの胸元には、突き刺してくれと言わんばかりにお誂え向きの穴が空いていた。そこに、この刀を突き刺して【マナショック】を使うことで、内部から衝撃を発生させ、完全に破壊する。

 そのために近付く必要は出てくるし、片腕を失ったとはいえまだもう片方の腕も残っている。【マナショック】の誤発動がないように、突き刺してから技能を使わなければならない。出来るだけ、刺してから技能発動までに時間の隙間が出来ないようにする必要がある。



「これで、最後……」



 ふぅ、と息を吐いてみる。不思議と精神的にはそこまで参っていない。リアルの時間がゲーム内での時間の3分の1の長さで流れているからか、はたまた……。



「よし、やろう」



 気がそれかけたので首を振って払うと、余計な思考を払うように再度集中を巡らせる。

 目標を見据え、刀を構えて……真正面から突っ込んだ。



 そうなれば、当たり前なことにゴーレムは迎撃してくる。そのままいけば、まともに喰らってしまう軌道……。



「舐めてるんじゃないの?」



 ぶつかる直前、しっかりパンチの軌道を見極めることで、すんでのところで急ブレーキをかけることが出来た。それにより今、ゴーレムの腕は完全に伸びきっている。ゴーレムは腕を戻そうとするが、引っ込める動きよりもわたしが突っ込む速度の方が速い。残念ながら、もう間に合わないよ。



 刀を地面と並行になるよう、傾ける。それと同時に、技能のために口を動かすことも忘れない。



「【マナ……」



 そこで、一気に胸に空いた穴へと刀を突き刺した。すっぽりとハマった刀は見事、綺麗に突き刺すことが出来た。ゴーレムが腕を振り下ろそうとする。わたしは不敵な笑みを浮かべ……残りの言葉を紡いだ。



「……ショック】!」



 刹那、流れる一瞬の沈黙。1秒にも満たない時間だけ静寂が訪れ……ゴーレムの身体はと大きな音を立てて完全に崩れ落ちた。

 ゴーレムの腕が振り下ろされていたが、内部から破壊されたことにより、攻撃がわたしに届くことはなかった。HPゲージも真っ黒……つまり、0になっている。



『深緑のゴーレムを撃破しました』

『シークレットクエスト【地下空洞の巨岩兵】をクリアしました』

『プレイヤーがMVPに選ばれたため、MVP報酬が渡されます』



 ああ、やっぱりソロで来るところじゃなかったんだね……あの落ちた時の穴の大きさといい、強制的に開始されたクエストといい、調整ミスじゃないの? これ。楽しかったし、MVP報酬も貰えたからいいけども。他にも、ボスの素材らしきものも少々インベントリに入っていた。



 クエストに関するアナウンスが流れた後、今度はレベルアップのお知らせが。



『プレイヤーのレベルが上がりました』

『【マナショック】のレベルが上がりました』

『【一刀流】のレベルが上がりました』

『【杖術】のレベルが上がりました』

『派生スキルが発生しました』



 一気に脳内をアナウンスが流れていく。



 おお、凄い。レベルが2も上がってる。流石ボス。【マナショック】と【杖術】もレベルが一気に3、【一刀流】も2と、かなり上がっていた。1回の戦闘で1しか上がらないと思ってたけど、思い違いだったみたい。しかも、派生スキルが発生だって? もしかしたら、【マナショック】のレベルが10になったからかな? 地上に戻ったら、1度確認してみよう。



 ふと、ゴーレムが最初に鎮座していた位置に、魔法陣が光っているのが見えた。多分、あれが地上に戻るための魔法陣かな?

 早く試してみたい気持ちもあったけど、その前にこの部屋の最後のチェックを忘れるわけにはいかない。もしかしたら、何かいいのが隠されてるかもしれないしね。立つ鳥跡を濁さず……やってることは空き巣に近いことは言わないことにする。



 特にめぼしいものがなかったので、早速魔法陣の上に乗ってみる。途端、周囲の景色が光で白く染まっていき、何も見えなくなる。そして光が収まってくると、気付けば穴に落とされた木のすぐ近くに立っていた。落ちた穴は、既に塞がっている。



 ここでようやく、長い戦いの末に戻ってこれたのを実感することになった。座り込みそうになったところで、こんなことになった原因を思い出し、さっと立ち上がる。



 ここは敵が居るから、1回街に戻ってからその時に戦利品の確認でもしよう。そう決めて踵を返して街に足を向けたところで、脳内でポーンという音が。



 これはあれだ、アナウンスが流れる前のSEだ。



『お知らせします。北のフィールドボスが討伐されました。これにより、北の街ノーウルへと到達するプレイヤーが現れました』



 うんざりする程聴き慣れたアナウンスの声が、そう告げるのだった。

名前:シエル Lv12

職業:メイジ(1次職)

スキル:【一刀流Lv9】【風魔法Lv2】【杖術Lv7】【マナショックLv10(進化可能)】

装備:鉄の刀、アイアンロッド、旅人の服(上)、旅人の服(下)、旅人の靴

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