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魔法職の双刀使い  作者: 香月 燈火
Episode1 サービス開始と双刀使い
6/32

6. 隠し効果と依頼

本日2話目です


掲示板とかはあった方がいいのだろうか……

「それでシエル、これからどうするつもりなのかしら?」

「どうするって?」



 不意にハルハルから投げかけられた質問の意図が分からず首を傾げていると、レイクとカレンさんが「あー」と遠い目をしている。2人には分かったようだ。



「分からないの? シエル、あの戦い方だとパーティプレイが出来ないわよ?」

「え? なんで?」

「あのな、お前の戦い方って、要するにあの回転攻撃で攻撃を受ける前に倒すってことだろ? あんな回転で常に敵と密着してる上に動かない。しかも、すぐに敵が溶けると来た。んなもん、俺も援護しようがねえよ」

「レイクは元よりノーコンでしょ?」

「今それを蒸し返すんじゃねえ!」



 でも確かに、言われてみればあの戦闘スタイルを貫く限りはパーティプレイは出来そうもない。だとすれば、パーティプレイ用に新たに戦い方を変えるか、そのままソロプレイでぼっちコースまっしぐらで突き進むか……。どっちみち、今すぐ変えることが出来そうもない。まあ、まだレベルも低くて技能の取得量も初期と変わっていないんだから、何とかなるだろう。



「じゃあ、今はソロでいいよ。レベル上げてたら、割と何とかなるかもしれないし」

「ついにぼっちプレイを……」

「たまには、わたしが組んであげてもいいわよ?」

「心配しなくても、ボクは仲間だからね」

「わたしに対してはいつも辛辣だよね。カレンさんも乗らなくていいからね?」



 達観したような目で見つめてくる3人は差し置いて、今後のことを考えてみる。最優先でやることはレベリング。今は【マナショック】を主体で戦ってるけど、もしレベルを上げていけば何かいい技能に派生してくれるかもしれない。このゲーム技能にも特定の条件を満たせば特殊な上位技能に派生することがあるらしい。

 パーティプレイの妨げになってるのがあの反動のせいだからね。だからといって反動がなくなるというのはナシ。問題は、【マナショック】の技能レベルやレベルが上がることによってINTが上昇し、反動も強くなるってことだけど……まあ、これはその都度慣れていけば問題はないだろう。そう思いたい。



「とまあ、結局シエルは完全ソロプレイで行くことになったが……どうする? またフィールドに戻ってレベリングでもするか?」

「ソロプレイって言っておいてそれ?もうシエルが今のスタイルを貫く以上、レベリングにはわたし達は邪魔って決まったじゃない。それに、わたし達はわたし達でやらないといけないことがあるでしょ?」

「ああ、そうか……すまんシエル、そうとなっちゃ、俺らもやらないといけないことがあるんだ。これでも攻略組の一員なんでな。フィールドボス討伐のためにさっさとレベルを上げる必要があるんだよ」



 攻略組、ねえ。



「誤射……」

「おいやめろ。本当にやめてくれ」



 悲痛な顔でそれ以上言わせまいと止めようとするレイク。でも実際、事実を述べようとしただけだから止めても逃げてるだけにしか見えない。

 ハルハルにもジト目で睨みつけられているのに気付いていないようだ。



「それでシエル、今日はもうソロでやるのかしら?」

「他に一緒にやる人が居ないからね」

「そう……じゃあ、せめてフレンドになりましょ? それなら、いつでもダイレクトで連絡が取れるし」

「俺からも送らせてもらう」



 2人からフレンド申請が送られてきたので、承認する。丁度良かったとばかりにカレンさんにも申請を送っているようで、カレンさんの指も宙の操作パネルを動かしているところだった。



「じゃ、わたし達はもう行くわね。基本的に北門からのフィールドで狩りをしてるから、会ったら宜しくね」

「じゃ、達者でな」

「その暫くは会えないみたいな感じの挨拶はやめない?」



 そのまま、レイクとハルハルの2人は部屋を出ていった。



「さて……じゃあ、ボクからも聞きたいことがあるんだけど、いいかな?」

「答えられる範囲なら」

「ありがとう。じゃあ、さっき刀と杖の両方を装備してるって言ってたけど、隠し効果はどっちが反映されてるのかな?」

「隠し効果……?」



 聞き覚えのない単語にキョトンとしていると、カレンさんが「あれ?」と首を傾げた。



「もしかして、武器や防具の種類によってステータス表記に左右されない効果値があるって、知らなかった? 例えば、刀だったら敏捷が上がったり、杖だったら知力が上がったり、防具だと軽装なら敏捷、鎧とかなら丈夫さが上がったりとかね」

「そうなんだ」



 ごめんなさい、全く聞いたことがありませんでした。そんなことは攻略サイトにも載ってなかったけど、結構知られてることなのかな。

 とか思っていたが、そうでもないようだ。



「まあ、知らなくても仕方はないと思うよ。隠し効果に関しては運営からも明言されてないし、βテストでも偶然発見された、いわば公然の秘密みたいなものだからね。まだはっきりとしたことは分かっていない以上、攻略サイトにも載っていないと思うし」



 そりゃ知らなかったわけだ。でも、目に見えない効果ってどうやって分かったんだろう? 何かしらの検証を行ったのであろうことくらいしか分からない。最初に見つけた人は凄いね。



「で、どうやって確認するの?」

「今は2つとも装備してるんだよね? それなら、ちょっと設定で鑑定不可を外してくれたら僕が鍛冶派生技能の【分析(アナライズ)】で確認するよ」



 あれ……目に見えない隠し効果って言ってたのに、技能で見れるんだ。

 と思っていると、突然宙に『鑑定の許可を求められています。許可しますか』と現れた。許可しなかったらどんな反応するか……ちょっと興味もあるけど、今は早く装備の効果が知りたいから許可する。

 ちなみに、名前自体は表示させるか否か、設定で自由にオンオフを決められるようになっている。わたしは当然オフだけどね。

 本名ではないとはいえ、知らない人から名前を呼ばれるのって何か嫌だったからね。

 一見【分析(アナライズ)】スキルがあれば相手の対策も簡単に出来るんじゃないかって思ったけど、そう簡単なことではないらしい。見れるのはステータスだけで、付加技能などは見れないらしい。もっとも、わたしは付加技能がついた装備なんて持ってないし、サービス開始からまだ1日しか経ってない状態で持っている人が居るとは考えにくいけど。



 言われるがまま、鑑定不可をオフにする。フレンドになったことで既に名前を知られてるカレンさんには隠す必要はないから、特に問題はない。



「【分析(アナライズ)】。どれどれ……これは!?」



 まるで自分の趣味に没頭する研究員のように楽しげな笑みを見せていたカレンさんの表情が、一気に驚愕に染まる。指がパネルを行き来している辺り、何度も確認しているようだ。少ししてようやく納得がいったのか、パネルを閉じてふぅ、と溜め息を吐いた。



「素晴らしい! シエルさん、これは大発見だよ!」

「えっ? えっ?」



 さっきまでの真剣な表情はどこにやら、御満悦とばかりの満面な笑みでそんなことを言うカレンさんの迫力に押され、たじろいでしまう。



「本来なら1つしか装備出来ない……そんな常識があったせいで、まさかこんなことになるとは思わなかったよ。シエルさん、君には刀と杖、両方の隠し効果が付いてたよ。ああ、でも確かに、剣と盾を装備したら両方の隠し効果がつくから、それと同じ……? しかも、セット効果なのか、本来の数値よりも更に大きくなってたな……このセット効果の仕様についてはおいおい検証していくとしよう。偶然とはいえ、これは世紀の大発見だよ!」

「そ、そう?」



 トッププレイヤーの1人だというカレンさんがそう言うのだから、きっと本当のことなのだろう。

 でも、正直わたしが発見したわけじゃないからなぁ。実質、気付いたのはカレンさんだったし。だから凄いのはわたしじゃなくて、カレンさんだと思う。



「あ、そうそう」



 ……ん?



 気のせいかな、カレンさん、申し訳なさそうな顔をしつつも、目がギラギラしてるように見えるんだけど。おかしいな、この流れでそんな顔になる要素が分からない。



「さっき鑑定不可を外した時にチラッと見せてもらったよ。シエルさん、もうレベルが9なんだね。攻略組並だよ。それをソロでって、凄いねぇ」

「そ、そう?」

「そんな強いシエルさんに、ちょっと西の森のファレーナのレアドロップである『白蛾の鱗粉』が欲しくて……その、鍛冶のレベルを上げるための素材には効率が良くてね。厚かましい頼みだとは思うんだけど。その報酬といってはなんだけど、その素材を使ったアクセサリーを僕が作るから、ね?」

「は、はあ……」



 カレンさん、欲望を隠せてないよ。分かりやすい顔しちゃってるよ……。




 わたしはどうも押しに弱いらしく、断ることも出来ずに了承してしまった。とは言っても、元より西の森に籠るつもりだったし、そのついでに対価も手に入ると思えば決して悪いことでもないからまあいっか。

 それに、アクセサリーってのも気になるし。

今までは深夜でしたが、次回からの更新は19時前後主体とします。

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