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魔法職の双刀使い  作者: 香月 燈火
Episode2 封印の遺跡と魔獣の秘密(第一回イベント)

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32. この国は

また1年過ぎてる……そして書かなさすぎて設定はともかくキャラの名前を覚えていなかった……


幸いメモに設定残してるので読み直したけども!

「は……? 領主代行?」



 わたしが戸惑っているのを分かっているのか、一度お茶を口に含むと、一度エイベスさんに目配せした後視線を戻した。



「如何にも。ウィンティアという街はかなり特殊でな。その前に話さないといけないことがあるのだが……エイベス」

「はっ、こちらに」



 いつの間にそんなものを持っていたのか、一枚の羊皮紙らしき書簡がエイベスさんの手に収まっていた。ロバートさんは鷹揚に頷くと、エイベスさんから手渡された書簡を広げ、一度深く息を吸う。



「此度、シエル殿のウィンティア領領主拝命により、貴女へ一代限りの栄誉、騎士爵を与えるものとする」



 そう言って巻物のように丸めてから皮のような紐で結びつけると、今度はそれをわたしへと持たせた。何やら預かり知らぬところでトントン拍子に話が進んでいったせいで呆然としていると、ロバートさんは満足そうに「うむ」と頷いた。って、



「いや、うむじゃないですからね!? こんなのいきなり渡されてもわたし何にも出来ませんから! ってか、領主なんて無理ですって! わたし、もっと冒険するつもりなんですからね!?」

「心配召されるな。一度落ち着かれよ……とはいえ、説明もなしにこのようなことに巻き込んだことには申し訳ないと思っている。が、正直な話、一刻を争う事態なのだよ。聞いてくれるか?」



『ワールドシークレットクエスト【失われし風を求めて】を進行致しました。続行致します』



 なんかクエストが続いたみたいだけど……それだけ?

 いずれにせよ、話を聞かないっていう選択肢はなさそうだ。仕方ないといえば仕方ない。流石にプレイヤーの動きを制限するようなシステムは流石に組まないだろうし、まあなんとかなる……んだよね?



「まず領主代行と言ったが、正確には領主代行という立場は実際には存在していない。あくまで名目上の飾りの立場であり、実質的な自治権というものはほとんど存在していない」

「ほとんど、とは?」

「領主代行とはとあるものを必要とされて置かれた特殊な立場なのだ。実際は、元々所有していた貴族が(まつりごと)を行う権利を保有している。そのため、普通は代官を置く。が、その貴族が領主代行は有能であり民からの信任を受けていると判断すれば、その限りではないというわけだ。まさに、わたしの娘がそうであった」



 簡単に言うなら代官を置かなくてもその領主代行自体が領地経営のトップとしても優秀ならそのまま領主としての職務に就くことも出来るというわけね。

 でも、わたしはぽっと出のプレイヤーでしかないし、そもそもウィンティアという街には行ったことすらない。領地経営のやり方なんてものも分からないし、やる気もない。前領主であるサムエルさんが領民に慕われていたというし、やっぱりそれに成り代わるようになし崩しに選ばれてしまった私が領地経営なんてすることはなさそうだし、ひとまずは安心か。



 ロバートさんが少し寂しそうにしているように見えるのは……やはり娘の訃報を聞いたからかな。最初は凛と貴族らしい佇まいであったが、やっぱり堪えているのが分かる。貴族という立場が表面上に出ないようにさせているんだろうね。



「代行に必要なものというのは……いや、シエル殿ならなんとなく分かっているのであろう?」

「フィーとの契約の証、だよね?」



 恐る恐る返すと、ロバートさんは頷いた。良かった、合っていたようだ。というか、こういう前振りは間違えた時恥ずかしすぎるから正直やめて欲しい。心臓に悪い。

 前領主代行がサムエルさんだったって改めて分かってからは、なんとなく分かってはいたけども。



「精霊と契約している人間は極わずかで、ほとんどおらん。更にその中でも四大精霊と契約している人間などはこの世にはたったの4人。つまりは、それぞれの四大精霊の契約者である1人ずつしか居ないのだ。それ以上の精霊として精霊王という存在も居るには居るが、過去に契約することが出来た人間は存在していない。故に、人として契約出来る精霊は四大精霊こそが最高位というわけだ」

「へえ……そうなんだ。凄いね、フィー」

「えっへん」



 わたしが素直に感心して横で無言でジュースを飲んでいたフィーに視線を送ると、彼女は無表情のまま、何処か得意そうに胸を張った。

 その様子に皆が微笑ましそうにしながらも、話は続く。



「時にシエル殿よ。この国の正式名称は知っているか?」

「国? そういえば大陸とか街の名前は知ってても国は聞いたことがないかも」



 そもそもベータテストの頃も王都に進むまでは行かなかったらしいから、国ごと絡むイベントがなくて知る機会がなかったのかもしれない。

 でも適当にNPCに聞けば普通に教えてくれそうなもんだけどね。



「諸氏、異世界からの来訪者達はまだ来てから浅い故、仕方がないことだろう。ましてや、略称として知っていても正式名称として知っている者はこの国の貴族や諸外国でも外交官に近い者くらいしか知らないほどだ」

「ほえ〜」



 つい気が抜けるような相槌を返すと、ふと、ロバートさんは視線を窓の外へと向けた。



「すまない、どうやら思っていたよりも話が込んでしまったようだ」



 つられて窓の外を見ると、さっきまでは青々とした空が気付けば黄金色になるまでに緋色に染まっていた。ファンタジーで中世的街並みなだけあって、現実よりも一層神秘的に見える景色をもう少し堪能したいところではあるけど、現実時間の方も思っていたより押している。

 ついでにと言っちゃなんだけど、メッセージボックスを確認してみるとフレンド登録している何人かが送ってきているのに気付き、そういえばわたしはロウさん達と別れてから一度も連絡を取っていなかったことを思い出す。

 別にまた待ち合わせる約束とかはしてなかったけど、もし何かあった場合にすぐ合流出来るようにか、宿泊場所と今後の大まかなスケジュールまで送ってくれていた。戦闘能力は低いけど、相変わらずロウさんはこういった気配りが上手い。

 若干申し訳なく思いつつ後で返事を返そうと思いながらも、メニュー画面を閉じた。



「して、シエル殿。時間の方は大丈夫だろうか」

「……ちょっとそろそろ厳しくなってきた頃です」



 あまり長々と話されると本当にログアウトが遅くなってしまいそうなので、ここは正直に答える。



「やはり、そうか……では、ここから先はかいつまんで簡単に説明していくことにしよう。まず、この国の名前だが……」



 それからの話はおおよそ5分ほどで終わり、今からでは宿を探すのも大変だろうということで屋敷に泊まることを提案され、なんなら屋敷でログアウトしてもいいとまで言ってもらったので、お言葉に甘えさせてもらうことにした。

 案内された部屋はまだ屋敷に居た頃のサムエルさんの部屋のようで、私物はウィンティアの方の屋敷に持ち込まれているのか、物はほとんど置かれていなかったが部屋は隅から隅まで掃除が行き届いており、まるでいつでも帰って来ることが出来るような状態だった。



 殺風景な部屋に、今はわたし一人。フィーはまだロバートさんとお話があるらしく、生憎今はこの場には居ない。



 外面には出さなかったものの、正直ロバートさんとの対談中は緊張でいっぱいだった。

 それに、色々と……多分、今後のストーリーにかなり影響がある話も聞くことが出来た。

 恐らく、イベントにも関連するような話が。



 話を聞いていて思ったのが、これは絶対一人では対処出来ないんだろうなということだった。



「【アウラ王国】……それに【風霊国アウラ・シルフィード】」



 ロバートさんに聞かされたこの国の名前。

 前者が対外的なこの国の名前。そして、後者こそがこの国を表す本当の名前らしい。

 何故名前をわざわざ詳らかにしないのか、それはロバートさんも教えてくれなかった。

 それに、国の名前に含まれているわたしもよく知っている名前。



「フィーが何かに関係してるってことだよね」



 ほんの少し前に会ったばかりの、実は凄い存在なんだという見た目は幼女にしか見えない精霊。

 聞いたところによると、どうやらヨルムンガンドとも何か繋がりがあるらしく、でもまだそこまで信頼されていないのか、はたまたストーリーが進めばいつか教えてくれるようになるのか、分からない。



「……カレンさんに連絡を入れておこう」



 フレンド一覧を見てみると、カレンさんはまだログインしているようだ。他にはグストさんにロウさんもまだゲームをやっているみたいだから、せっかくということでこの2人にも今日のうちに知った情報は言っておこうと思う。

 教えてもらった話の中には実は王都の行き方なんかもあって、きっと皆知りたがるだろうから。

 それに、



 そう思って送ったのだが……。



『教えてありがとう。とても有意義なことを聞かせてもらったよ……ボクにとってもね。だから、次会う時にはしっかりとグストに絞られるといいよ』

『シエルの嬢ちゃんにはどうやら情報の重要性というものをもっと教えておくべきだと今更ながらに理解した。ところで、ゲームの中で次はいつ会える? さっき聞いたことについて、顔を合わせて話し合いたい』

『シエルさん! この情報、こんな気軽に教えていいことじゃないですよ!? とにかく、もっと擦り合わせたいので次に会える日を教えてください! あ、リアルの時間でですよ!』



「え、ええ?」



 すぐに返事が来たかと思えば、まさかの揃いも揃って呆れの声だった。

 教えたことなんてフィーのことだったりこの辺りの街とか地形だったり、あとは王都の話くらいなんだけど……。

 フィーはどうせわたしが連れ歩くことになるからすぐにバレるだろうし、残りの話は多分現地民に聴けば普通に教えてくれると思うからそこまで大切でもなさそうなものだけどなぁ。



 微妙にやり切れない感情を抱きつつも、ふて寝の代わりにその日はログアウトすることにした。

久しぶりの更新なのに微妙に蛇足回になってしまった。


とりあえず次話から動かしてその次で本作最初の掲示板入れます。

あとポイントくれると嬉しいです。嬉しいです(2度言う)。

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