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魔法職の双刀使い  作者: 香月 燈火
Episode2 封印の遺跡と魔獣の秘密(第一回イベント)

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26/32

26. スキルの可能性

2 ね ん




……おーう。

とりあえず言わせてください。

超お待たせ致しました。

 カレンさんによる理不尽な暴力をわたし達は呆然と見守った後、カレンさんだけはシークレットクエストに参加せずに別れることとなった。

 が、最後にカレンさんはわたし達に助言をくれた。



「言っておくけどね、さっきのは君達からしたら無双してたように見えたかもしれないけどね、もしシエルさんとボクが1対1で闘ったら負ける方はまずボクだと思うよ。さっきのはボクがちょっとというか、完全なずるをしたお陰で勝てただけ。レイク君とハルハルさんはそもそも戦闘スタイルからしても1対1向きじゃないからね。そしてシエルさんに関しては……正直、さっきあれだけシステムの向こう側やら偉そうに講釈たれちゃったけど、シエルさんはもう()()()()だからね」

「えっ……? でも、わたしそんなの意識したこともないんだけど?」

「それがシエルさんの凄いところなんだよねぇ……正直、ボクでもシエルさんの戦い方にはびっくりさせられたよ。ボクでもあんな戦い方は出来ないからね」



 カレンさんはそう言うけど、わたしの戦い方ってそんなに変かな?

 やってることと言えば、剣を持って回ったり跳んだり吹っ飛んだり……おかしいね、自分でもまともだと思う戦い方がひとつもないんだけど?

 多分わたしが微妙な顔になっていることが分かったんだろう、カレンさんはクスクスと口に手を当てて笑った。



「うん、やっと自覚出来たようでよろしい。システムの向こう側というのはものすごく大まかに言うなら、本来のシステム上で行使すべき使い方とは異なった使い方のことを言うんだよ。さっき、ボクは色んな技術を習得してるとは言ったけど、流石にあんな無茶な戦い方は技術だけでは無理だからね。だからこそ、8割スキルを頼ってあんな戦い方をしているわけだけど」



 なるほど、とやっと合点がいった。

 一体、どうやったらそんな技術を習得出来るんだろう、なんて思っていたけど、その答えはなんてこともない、要は「ただひたすらにスキルを使うのがめちゃくちゃ上手い」だけだったらしい。

 スキルのクールタイムを完全に理解し、そしてひとつのスキルをあらゆる方面から使い方を模索する。

 ゲームの裏側や仕組みというのは、このゲームは確かにあくまでゲームではあるが、リアルを突き詰めた自由さのことを言っていたのだろう。

 スキルというのは決してひとつの効果を発揮するだけのものではなく、使い方次第で効果が形を変えることもある、ということらしい。

 それが、カレンさんのあの言葉。

 カレンさんの戦い方はスキルではないけど、本来ならただ便利なだけの機能を本来とは異なった使い方をすることで、あれだけの無双を見せつけた。



「それにね、実はボク、戦闘系のスキルや魔法はなにひとつ持ってないんだよね」

「「「えっ?」」」



 いきなりの爆弾発言に、わたし達は耳を疑った。

 というか、そんな状態でカレンさんは仮にもボスモンスターである敵と単騎で戦ったっていうこと?



「まあ、さっきのあいつなら元より()()()()()()()()()からあれだけ上手くいったけどね。確かにショートカットを使っての戦い方は上手くいくと確かに強そうなんだけどね。実際問題、最低でもボクレベルで実戦的な技術がないと普通にひとつの武器を使った方がいいし、何より決定打って言えるものがない。それに加えて、ボクには戦闘スキルがないからそもそも手の内自体がほぼないと言ってもいい。初見対応力に関して言えば、ボクは既にレイク君やハルハルさんには遥かに負けてるよ」



 苦笑しながらそういうカレンさんに、わたしは反論しようにも出来なかった。

 カレンさんには卓越した技術があるのはさっき見ただけでも充分に感じ取れた。

 けど、戦闘系スキルを持っていないのなら……確かに、今のわたし達でも充分対策は立てられると思う。

 なにせ、戦闘系スキルを持っていないということはつまり、攻撃手段が通常攻撃しかないということだし。

 わたしは魔法で撹乱しながら戦えばいいし、レイクなら規模の大きな範囲魔法を使ってしまえばまず避けられない。

 ハルハル相手だったら、そもそもスキルを使ってしまえばカレンさんの攻撃力じゃ火力不足は否めない。



 カレンさんのずば抜けた強さというのは、あくまでも護身という範囲内での強さのことなんだろうね。



「ま、そういうことだよ。だから、シエルさん。ボクが君に言いたいことはたったひとつ……キミはまだ、スキルを無理矢理使ってるだけに過ぎない。けど、もしボクが言うようにスキルを、魔法を使いこなすことが出来たら……ボクはおろか、他の3人すら圧倒出来るようにもなるはずだよ」

「そうなのかな?」



 正直他の人たちに関してはさっき名前すら知ったばっかだからよく分からないけど……どうやらカレンさんはその人たちをよく知ってるみたいだから、そうなのかもしれない。



「それに、今のシエルさんの戦い方はなんていうか、見ててハラハラするんだよね。なんていうか、猪みたいで」

「流石にそれはひどくない?」



 実はこの前、別でも同じことを言われただけに腹が立つ……。

 隣でニヤニヤしているレイクの表情を見れば、誰が言ったのか分かると思う。

 ……なんか癪だし、後でレイクは一発殴ることにしよう。



「まあ、兎に角だよ、シエルさん。君に覚えておいて欲しいのは、魔法はイメージだってことなんだ」

「魔法は……イメージ?」



 なんか、いきなりラノベでよくあるような説明が出てきたね……。

 ラノベだと、魔法はイメージで発動するやらなんやらかんやらはよく出てくるけどね。



「例えば、さ。火魔法にファイヤーボールってあるでしょ? あれもね、ボールって付いてるけど、実はイメージで形を変えることが出来るんだよ」

「ちょっと待て、ボールなのにか? それじゃ、ファイヤーボールって名前はどういうことだ?」



 この話に食い気味にきたのは、案の定レイクだった。

 レイクは典型的な魔法型の後衛なだけあって、やっぱりこういう話は気になるんだろうね。

 けど確かにレイクの言う通り、それならファイヤーボールって名前は変だよね。



「ファイヤーボールというのは、あくまで便宜上その魔法の形を口に出してイメージしやすいように命名されてるだけなんだ。他にもファイヤーアローとかもあるけど、あれに関しては、ただファイヤーボールの形を変えただけにすぎないんだよ」

「だけど、それだったらファイヤーボールとファイヤーアローの威力が違う説明がつかないんじゃ……」

「それも無意識下でのイメージの違いだよ。そりゃあ、丸いだけの弾をぶつけるのと、矢をぶつけるんじゃ、どっちの方が強いかなんて、君たちも分かるだろう?」



 カレンさんが言うには、結局は皆、矢の方が強いイメージを持つから、ファイヤーアローの方が強くなってしまうということだった。

 このゲームの中でのファイヤーアローは、一般常識的にはファイヤーボールよりも威力が高く、そしてMP消費も多くなる……らしい。

 ただそれは、イメージを強くしている分MP量が増えて威力もかさ増しされているだけとのこと。

 要は、MP消費が多ければ多いほど威力は上がり、そしてイメージすることでそのMP消費も自由に調整出来るようになるということだった。



「けどよ、なんでそんな話が、ゲームの中で広まってないんだ? それに、カレンさんはなんでそんなことを知っているんだ?」



 レイクはカレンさんが習得してもいないスキルについてそこまで認知していることについて、疑問を持っているようだった。



「それに関しては、ボクの知り合いにとことんまで魔法を研究した人が居るからかな。それに、別に広まってないわけじゃないよ? まあ確かにそれほど知ってる人は居ないけど、それでも知ってる人は知ってることさ」

「……まじかよ。俺、知らなかったんだけど……」



 一応は攻略組として常に最前線に居たレイクなだけあって、そんな重要なことを知らなかったことに少なからず衝撃を受けたみたいで、がくりと地面に膝をついた。



「そんなに肩を落とすことでもないよ。それに、君は今それを知れたんだ。それなら、今後頑張ればいいこと。そうじゃないかい?」

「……ああ、確かにそうだな。っし!」



 カレンさんの激励に再燃した様子のレイクを見て、単純だなぁと苦笑していると、わたしの頭にカレンさんの手が乗せられた。



「君もさ、シエル。魔法を使うのはレイク君だけじゃないんだ。これは先駆者からのお節介でもあるけど、本音を言えば、君が強くなることで他のプレイヤーたちにどんな影響を与えるのか、ボクはそれに興味があるんだ。だから、君には期待してるんだよ」



 それに、その刀をどう使うのかも気になるしね、と後を継ぐカレンさんに、やっぱこの人は根っからの鍛冶師なんだなぁとしみじみと感じさせられた。



 ふと、カレンさんはメニューの時間表示を見て、あ、と呟いた。



「ごめんよ、ちょっと想定よりも長居しすぎちゃったみたいだ。ボクはもう戻るけど、君たちは今からシークレットクエストに挑戦するつもりなんだろう? というわけで、ボクから予言しておくね。君たちは、シークレットクエストでボコボコにされるよ。それだけは断言出来る……じゃあ、また今度ね」



 と言い残すと、嵐のような速度で場を去った。

 あまりにも突然居なくなるものだからわたし達も呆然としたが、暫くして我に返った後、3人で揃ってシークレットクエストへと挑戦した。



 結論を言うと、カレンさんの言った通り、シークレットクエストには手も足も出なかった。

 元々からボスモンスターだった敵を100体討伐とかなんて無茶振りか、とは思ったけど、今回に至っては300体討伐な上に同時リポップが9体という、前回と比較しても全てが3倍にまで増加している内容に明らかに無茶振りを通り越して無理難題としか思えない。

 前が100体の討伐、そして同時リポップが3体までだったのに加えて私達のパーティも3人なのを考えたら、十中八九、メンバーが3倍になったから単純計算で3倍になったことは間違いないと思うけど、これは流石に頭が悪くない?



 これに関して導き出したわたし達の答えは、パーティーメンバーが増えれば増えるほど、難易度が倍々……いや、それ以上に上がるといったものだった。

 要は、シークレットクエストというのはソロで挑む前提で設計されてるってことなんだと思う。

 流石のレイクやハルハルも、これには頭を抱えてしまい、揃ってシークレットクエストの攻略を辞退することに決めたみたいで、悔しそうにしている。

 レイクなんて「こんなの無理ゲーだろ無理ゲー。やってらんねー」と半ばヤケクソ状態。

 2人とも、ソロで戦えるようなステ振りじゃないし、仕方ないよね……。



 わたしはというと、まあそう遠くない内にあのシークレットクエストに挑戦するつもりだったりする。

 カレンさんの助言のおかげで、なんとなくわたしの新しい戦闘スタイルのとっかかりが掴めてきたのと、同じくカレンさんのおかげで、新魔法をひとつ新しく考えたから。

 もしこの魔法が成功すればだけど、わたしの弱点だった大きい隙が、一気に改善される。

 ダメージを受けることも少なくなるだろうし、HPポーションを入れていた枠を、MPポーションに入れ替えることも出来るかもしれない。

 それなら長期戦にも対応出来るようになるし、あの無茶なシークレットクエストにも耐えきれるだろうというのが、わたしの考えだったりする。

 それからはキリのいい時間まで3人でサウストの街の散策を楽しんでからログアウトした。



 次の日、プレイヤー全員を対象に、運営からひとつのメールが届いた。

結構探る探る書いたけど、2年前どんな書き方してたのか覚えとりゃん……

もしかしたら辻褄が合わない部分もあるかもしれないので、しばらくはちょっとずつ更新しつつ、過去の話も改稿していこうと思います。


てか、やっと話がまともに動くって場面でエタるとかほんま何やってんですか自分。



とりあえず先に告知しておきますと、明日も更新します

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― 新着の感想 ―
[良い点] ワクワクしてます。 [一言] ストーリーは忘れました。でも、とっても面白かったことは覚えていました。読み直さなきゃ!楽しみです。
[一言] おかえり
[良い点] 更新再開したこと [一言] 頑張ってください 応援してます
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