21. クエスト攻略談義
今後は更新間隔をもっと短くしたいと思います……出来たらいいなぁ
デスペナないものの、長時間の戦闘によりかなり疲れが溜まっていたわたしはすぐにログアウト。
兎も角再挑戦してやると心に決めたので、その前にまずは挑戦するためのメンバー集めをすることに。
え? ソロでやらないのかって?
流石に100体もソロで連戦は無理無理。10体ですら倒すのに30分はかかるのに100体となると5時間はかかっちゃうじゃん。現実時間だと1時間くらいしか経ってないけど、集中力が保つ気がしないよ。そんな面倒なことするならやりたくもないね。
とまあ、そんなわけで翌日、コミュニケーションも交えて玲と悠に昨日あったことを全部話した。
玲達ならこの話に食いつかないはずもなく、玲は少年のごとく目を輝かせ、悠も無関心を装いながらちらちら視線を向けてきていた。あまりの分かりやすさに苦笑する。
「てことで、手伝って?」
「おうおう、そんな面白そうなこと、参加しねえわけがないだろ? なあ、悠」
「えっ? わ、わたしは参加したくないなんて一言も言ってないし」
「なんだ、参加しねえのか?」
「そんなこと一言も言ってないわよ! しょうがないから、どうしてもって言うからわたしも行ってあげるだけよ!」
一見怒っているように見えるが、これは実のところただの照れ隠しなだけだったりする。悠は一般的に言われるツンデレなのだった。
ニヤリと笑みを浮かべる玲は何度も悠の肩を叩こうとしているのを悠が払い除ける。このやり取りはいつになっても変わらないな。
「んでも、それシークレットクエストなんだろ? 発生条件分かってんのか?」
「うん、一応確認してみたから分かるよ」
受注クエスト、もしくは過去に受注してから完了及び未遂のクエストの内容は、メニューから確認することが出来る。それは発生条件からクリア条件までである。シークレットクエストも例に及ばず、わたしが受けた数少ないクエストの中に紛れていた。
過去に受けたクエストの内半分以上がシークレットクエストって、やっぱりわたしはトラブルメーカーなのかもしれない。
それよりもシークレットクエストって書いてあるのに内容明かしちゃっていいの? それに例のゴーレムとあの遺跡のクエストは発生条件が「???」ってなってたから実際には分からなかったのに対して、今回のクエストにはしっかりと条件まで書いてあった。この違いは何だろう?
そう、今回のシークレットクエストの発生条件だけ同じく分からないんじゃないかと思っていたのだが、何故か、この今回のだけしっかりと具体的に書かれていた。
それは『ブラッドグリズリーの連続50体討伐』というもの。正直、ものすごく面倒臭い。そもそも連続の定義がよく分からないし、やはりボスというだけあって1回1回にすごく時間がかかってしまう。
わたしは無駄に火力特化だからソロで1体倒すのにも5分程度で済む。けど南のフィールドボスと言っちゃ、まだほとんどの人が未攻略のボスなのである。まあ、正直北に流れてるってだけで、今のところ攻略組は北を中心に進めてるってところなんだろう。やろうと思えば既にレベル差が凄い攻略組が細心の注意を払えばたかが18レベルのボスに負ける道理はない……なんてことはないが、少なくとも油断さえしなければ負けるような相手ではない。
ただ、それでもやっぱりボスはボス。1体倒すのにもかなり時間が食われるのは確か。
それに、ボスを倒して美味しいのは初回討伐での経験値ボーナスと初MVP報酬くらいで、それ以降はレアドロップ狙いでもない限りはそこまで美味しくなかったりする。
実に攻略組のみにしか利がない経験値ボーナス、初討伐のみは獲得経験値がなんと5倍にもなる。わたしもそのおかげで1体倒しただけでもレベル上がったしね。
それに何より、初MVP報酬。これはパーティでも特に貢献したと看做された人だけが貰えるものではあるが、貰えるのはレアドロップ以上の効果を持つ装備が、獲得者のステータスや所持技能に合わせたステータスで貰えるという何とも魅力に溢れた仕組みなのだ。
敏捷とはかけ離れたブラッドグリズリーからあんな髪飾りが落ちた理由も、そのせいだったりする。
あれって、どうやってどういう基準で決めてるんだろうね。運営が見てるのは間違いないとは思うけど。
ただ、初討伐さえされてしまえばボスに魅力はなくなる。東と西はもうボスは倒されたらしいし、ちょっと現状スタートダッシュ勢が有利すぎるような気がする。運営はどう対処するつもりなんだろう。これで今のところ、それらに関する批判を見ないのだから不思議だ。とは言っても、既に運営が対処して回っているという可能性もなくはないので、どちらにせよやり手ではある。
経験値はわたしくらいの速さで討伐出来ないなら同レベルの野良モンスターを倒していった方が効率がいいし、レアドロップも確率が低すぎて正直旨みがほとんどない。もうそれだけボスが倒せるのならその素材でオーダーメイド装備作ってもらうのも簡単だしね。
話が逸れたが、ボス連戦というのは現時点でのメリットははっきりいって少ない。攻略組の人達は北のボスを倒すのに2、3分とかからず倒せるらしいが、まだスタイルの確立していない人はまずそんな異常な速度での攻略は厳しいように思える。
このゲームで一番大成しやすい方法は、自分なりの固有スタイルを貫くことなのだから。
もちろん例に漏れず、玲や悠も変人としか思えない身の振り方をしていた。初めて聞いた時は、わたしも目を丸くしたくらいには。
「そうか……でもそれって、面倒なんだろ?」
「うん。ブラッドグリズリー……南のフィールドボスね。あれを連続50体討伐」
「「うわあ……」」
2人揃って、変な目を向けられてしまった。明らかに「お前何してるんだよ」と言いたげに変なものを見たかのような目だ。
流石に失礼じゃない?
とか言いつつも、実は自分でもそろそろおかしいんじゃないかとは思いつつある。そもそも、シークレットクエストに数回ぶちあたって、かつつい先程失敗したものを除き、本来なら失敗は許されないのにほぼクリア不可能と言われているシークレットクエストを単独クリアしたこともあるのだから、既に他人から見たら体のいい話題の元になってしまうのも分かる。
「でも3人じゃまだ足りないよね……」
「そうね……攻略組からあと2人メンバー連れてくる?」
日常では基本のほほんとしている悠ではあるが、その正体はハイクロにおける攻略組の1人でもある。そのせいか、わたしとは違ってゲーム内のパイプは相当なものであることも分かっていた。べ、別にわたしは1人でもいいし……。
ただ、今回ばかりは1人だけは心当たりがある。
「わたしの方からもグストさんに聞いてみるよ」
グストさんはわたしの数少ないフレンドの内の1人で、【反城】の二つ名を持つ攻略組だ。一度成り行きでパーティを組んだことがあるので戦闘スタイルはよく分かっているが、やはりというか、彼もわたしと同じくらいに変な戦い方をしていた。
特にグストさんのあの時の素の攻撃はわたしが今全力を出した時の火力と相違なかったように思える。戦闘中はほとんどその場から動いてなかったし、やっぱりあの人極振りだと思うんだよね……。
ただグストさんの戦闘方法はカウンター一筋だと専らの噂。ずば抜けた反射能力を利用して、両手斧を相手の動きに合わせて振るという至って単純な攻撃なだけに、本来なら機動力に優れた敵相手にはついていくのも一苦労だろう。
ただグストさん、あの時の反応からして多分わたしの動きすら見切ってきそうなんだよね……正直、わたしも勝てるかは分からない。天然チートだよあの人。
玲と悠は一瞬驚きを見せるものの、すぐにああそうかと納得した。
「そういやお前、あの人とフレンドだったな」
「正直、今でも紫江ちゃんがグストさんとフレンドなんて信じられないねぇ……」
「なんで2人ともそんなにわたしの繋がり否定してくるのかな?」
いや、確かにフレンド少ないけど……少ないけども!
「けどさあ、グストさん呼んだらわたしの役目がねぇ……」
「それは大丈夫。シークレットクエストでは同時に3体まで出てくるから」
「そんな無茶振りをソロでやってたのかお前は……」
玲は肩を竦め、呆れたように呟いた。
いやいや、そこまで難しいことじゃなかったよ? いくらボスとはいえ、あの熊は攻撃力特化で動きはそこまで速くないからね。
3体も出てきたとはいえ、わたしのAGIなら……あれ? よくよく考えたらボス相当モンスターを3体同時に相手どるって無茶苦茶なんじゃ……考えないようにしよう。
「まあ、おおよそのことは分かった。俺達も喜んで手伝おう。んで、メンバーは1人引っ張り出してくればいいんだな?」
「うん、大丈夫?」
「おうとも。それくらい任せろ」
こういう時の玲はやっぱり頼もしい。持つべきものは友達とはよく言ったものだよね。それでもこの玲の態度は体良く「俺も混ぜろ」って言っているのだと分かっているとしても。
その日は簡単に日時指定してから解散した。グストさんも常に居るわけじゃないから、参加の旨を尋ねるとともに時間も合わせないといけないから、3人だけで話し合うわけにはいけないと思ってのことだった。
いつも通り学校を終え、わたしは家に帰ると、すぐにゲームの世界へと旅立ち、グストさんへと詳細と具体的に話し合いたいことを簡潔に書いたメッセージを送り、準備を始めるべく行動を起こすことにした。