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魔法職の双刀使い  作者: 香月 燈火
Episode1 サービス開始と双刀使い
12/32

12. 学校でのお話

今晩は用事があるのでちょい早めの投稿です

定時投稿とは一体……


あとリアル回でもあります

現状だとまだ全く話の内容は掴めないですが、まあ追追ということで……(震え声)

「ちょっと話がある」



 昼休み、怜に呼ばれたわたしは食堂へ向かう。いつもは教室で家で作った弁当を1人で食べているのだが、たまにこうして一緒に食べることもある。本当は、仲良く食べてると何処からか変な視線を向けられているような気がして、嫌なんだけど……。



「こっちだこっち」



 席がほとんど埋まってるせいで見つけられないでいると、向こうから呼びかけてくれたので、やっとの思いで見つけることが出来た。何故か悠も居るので、もしかしたらゲームの話なのかもしれない。

 これだけの人が居ると座れないんじゃ、と思っていたら、ちゃんと席は空けていてくれていたようだった。



「それで、悠も居るってことは……」

「おう、ハイクロの話だ」



 そう言って清々しくニカッと笑う怜に、何処となく嫌悪感を覚える。この表情をする時は、大抵何か変なことを考えていることは、既に承知の上。

 この勘は、あながち間違いではないとは思ってる。怜の悪巧みは基本的にろくなことにはならないから、こういったことに対する危機管理能力は日々磨かれていくものなのでたる。



「おう、聞いたぜ? 俺と悠がボス攻略してる時に、何か面白いことをしてたんだってな?」

「あれは面白いって言えるのかな? ってそれより、怜達、あの北のボス攻略に参加してたの?」



 その返事に、あれ? と首を傾げる怜。食事をしていた悠ですら、ぽかんとしている。

 え、何ですかねその反応は。



「おいおい、カレンさんから聞かなかったのか? 俺らはカレンさんからお前が何かしたって聞いたぞ? 何でも、本当に面白いから直接本人から聞けって言われたが」

「カレンさん……」



 信じていたカレンさんに裏切られた瞬間だった。カレンさん、アレだけ情報は隠せだとか言ってたのに……衝撃の真実に、がっくりと肩を落として項垂れると、本気で心配になったのか、怜が肩をゆすってきた。



「い、いや、あれだ。俺の方から聞いたんだよ。すまん、まさかそこまで落ち込むとは思わなかったんだ。本当にすまない」

「うん……いいよ。別に、怒ってはないし」



 ただそれよりも、その横で我関せずと食堂のうどんをすすり続ける悠が気になって仕方がない。そもそも、悠まだ1回も喋ってないよね。何のためにここに?



 じっと見られていたことに気付いた悠は、口にうどんを流し込む途中で固まった。



「ひょひたの?」

「……いや、何でもない」



 ゲームの中に入るとあれだけ暴れ回るくせに、現実だといざこうのんびりした性格なのが悠らしい。悠はゲーマーとかによく居る、ネットの世界とリアルで性格とか口調が変わるタイプだった。リアルでは結構気軽に喋ってくれるのだが、いざゲームのボイチャやチャットになると、ツンツンするのである。



「えーと、それで怜と悠は攻略に参加したんだっけ? 味方に魔法ぶつけたりしてないよね?」

「んなわけあるか。流石に2度も同じヘマはやらかさねえよ」



 疑惑の目を、腹をさする悠へと向ける。丁度食事を終えたようで、ナプキンで口元を拭いていた。お嬢様気質なのかのんびり屋の性格でいくのか、せめてどっちかで固めて欲しい。悠は肩を竦めながら、表情を不本意なものへと変えた。



「残念だけど、怜が言ってることは本当なのよねぇ……」

「おい。残念ってなんだ、残念って」



 頑張れとは言ったけど、まさかゲーム内時間で約1日程度で克服するとは……やっぱなんだかんだ言って怜は廃ゲーマーなんだなぁ。としみじみと納得しながら、いがみ合う2人を見てこのまま本題を忘れていてくれないかな、と祈る。



「で、カレンさんの言ってた話なんだが……」



 ……やっぱり駄目でした。



 結局怜達の尋問によって洗いざらい自白されたことでわたしは頭を抱え、怜と悠は顔にしわを寄せることとなった。



「なあ、その……シークレットクエストをクリアしたってのは、確かなんだよな?」

「何? わたし、そんなに信用ないの?」

「いやな、信用がないわけじゃないんだよ。ないんだけどな……」



 怜が言い淀んだところで、何故か見るからに不機嫌な表情になっている悠へと目配せする。いや、不機嫌ってより、駄々をこねる子供みたいに拗ねてるのかな? この怜の態度からして、なんでこうなってるのかの理由は知っているみたいだ。

 少しでも視線を向けられたことで、なおのこと嫌悪感を面に出す悠。



「どうせ、わたしなんてβテストでシークレットクエストに挑んでコテンパンにされた見た目プレイヤーですよーだ……」

「……え!?」



 何か今、聞き捨てならないようなことを聞いた気がする。悠が、βテストでシークレットクエストに挑んだ? それで、コテンパン? そういえば、カレンさんもシークレットクエストに挑んだのは攻略組の1人だけだって言ってたのに、妙に詳しかった。悠はカレンさんとは依頼をするくらいの仲で、また攻略組の一員でもある。言われてみれば、悠は条件の中には完全に合致していた。



 でも、いくら負けず嫌いな悠とはいえ、ここまで露骨な嫌悪感を見せるものなのかな、と疑問を抱いていると、怜が肩を竦めて、理由を話し始めた。



「お前も知っているとおり、悠はシークレットクエストのボスに挑み、そしてボコボコにされた。その際、こいつにはクリアを期待されていたらしくてな。攻略組の奴らは次があるさとしっかり慰めてくれたんだが、情報乞食共がやれ見た目だけだのやれ置物プレイヤーだの散々言ってくれやがってな。幸い、最終的にはGMコールで全員排除されたんだが、その時のことをまだはっきり覚えてるんだろうな。ったく、自分らは後ろで蜜を啜るだけのやつらが、好き勝手言える立場じゃないだろうに」

「何、それ……いくらなんでも、酷すぎるよ」



 怜から聞かされたβテストでの出来事に、愕然としてしまった。今まではそんなことを引きずっている様子は欠片もなかったのに……。

 βテストに居たってことは、正式サービスになってもまだやってるのかな? もしかしたら、また人を罵倒するだけ罵倒しているかもしれない。現実の時間に対し、ゲーム内の時間は3倍あるので、わたしは怜達がまだ遭遇していないのも仕方がない。



 でもまさか、わたしの友達が謂れのない罵倒にあうなんて。流石にそれは、わたしも見逃せないかな……。



「っておいおい、なんでお前まで不機嫌になってるんだよ」

「そりゃそうだよ。友達を罵られて怒らないわけがないでしょ?」

「それでも、今出来ることは何もないだろ? 次にまた同じことをやってる奴が居れば、今度こそ仕返しすればいい。そもそも、あいつらの言ってることに共感する奴なんてほとんど居ねーよ」



 と顔を顰めながら呟く怜に、少し納得がいかなかったが、言っていることは正論なのでひとまず心を落ち着かせた。それより。いつもは馬鹿なこと言って脳筋みたく突っ込んでいるタイプなのに、ここぞとばかりに頼りになることを言う怜の方が何故か釈然としない。



「……おい、何か今俺の方が罵られた気がするんだが、気のせいか?」

「怜って、なんでいつも大馬鹿でゲームのことしか考えてないのにこういう時に限って変にまともになるのかなぁって」

「せめて隠せ!」



 暫くわいわいぎゃあぎゃあと言い合いをしているうちに、大分休憩時間がなくなっていることに気付いたわたしと怜は慌てて昼食を食べると、それぞれ教室に戻ることにした。わたし達は3人共教室が違うので。少し寂しいが仕方のないことなのである。



 怜や悠と別れる前、最後に彼らと少しだけ話を交わした。



「また予定が合う時、お前の可愛い可愛い巫女服姿、しっかり見せてくれよ!」



 そんなことを言って退ける怜。それ、自分で言ってて恥ずかしくないのかな。いや、そんなことを廊下で言われたわたしの方が恥ずかしいんだけども。

 怜が立ち去った後、今度は悠が振り返ってこう言った。



「全く、変な言い合いをしてる紫江達を見てると、ただ悩んでるだけのわたしが馬鹿らしく見えるじゃないの……でも、ありがとう」



 何処か吹っ切れた様子の悠は、リアルなのにゲームの中に居る時のような挑戦的な笑みを浮かべていた。



 その日、特に何事もなく授業は終わり、わたしは帰宅する。

 家に到着し、着替え終わったところでメールの音が部屋に鳴り響いた。怜からだ。

 また冷やかしか何かかな? と思いながら開いてみると、その内容はいつもとは毛色が違ったものだった。



『お前は、ハイクロを楽しいと思ってプレイしてるか?』



 突然の質問に絶句する。わたしはゆっくりと文字を打ち、ただ『どういう意味?』とだけ返した。その返事も、すぐに返ってきた。



『分かってるんだろ?』



 それだけの、非常に簡素な一文は、わたしから否定の方法を消し去ってしまった。

 怜の言う通り、はっきりと分かってる。分かってはいるんだけど、それを肯定することが出来ない。



 たった一言だけ、返事を返す。



『楽しいよ』



 これは本心からの言葉。怜からの返信には『そうか』とだけ返ってきた。以降、怜からのメールはなかった。時計を見ると、今の時間は大体17時くらい。わたしや怜達は部活には入っていない。そもそも部活動なんてやっていたら、とてもではないがゲームなんてする暇がない。



 今日は後3時間くらいならやれそうかな……。

 お母さんは優しいから、多少時間を過ぎていても何も言われないのがちょっとだけ不安だったりする。もっと、自分のことも考えて叱りつけて欲しいんだけどな。流石に、ゲームをやりすぎている時はちゃんと止めたり怒ったりはするんだけど。



 わたしは机の上に置いてあるVR端末を手に取った。

 あと3時間だけやろう。そう思いながら、再びゲームの世界へと降り立った。

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