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魔法職の双刀使い  作者: 香月 燈火
Episode1 サービス開始と双刀使い
1/32

1. プロローグ

3/18 文を大幅に修正(内容変更なし)

9/18 ステータスの設定を大幅に変更(以降反映)

 インターホンが鳴ったので、わたしは早速扉を開ける。



「はーい!」



 心を弾ませながら、届いた郵便物を手早く受け取り、早速マイルームでダンボールを破るように開ける。



 中に入っていたものの正体は、ヘッドギア型VR端末。装着者の脳波を検知、操作しあたかも装着者をその場に居るように錯覚させることで現実感のあるオンラインマルチプレイを可能にした史上初のゲーム機なのである!



 ……って、説明書には書いてあった。



「はぁ〜……ちゃんと届いて良かったよぉ」



 うっとりするように眺めるこのゲーム機の中にはセット購入していた史上初のVRMMO【HighroleハイロールChronicle(クロニクル)】。

 これをプレイする為に、怜と悠に連れられてあのパンケーキ屋かってくらいに長い行列を並んだんだよねー。特に最前列に居た人なんて、3日前から店の前で寝泊まりしてたって言ってたし。偶然盗み聞きした時は、ちょっと引いたけど。



 キャラメイク、ジョブシステム、そして魔法など、RPGでは基本的に存在するシステムが数多く存在し、βテストの応募数は優に100倍を超えたという通称【ハイクロ】は、異世界を体験したい、動けなくなった身体でまた走り回りたい、リアルで出来ないことを仮想空間でやってみたい、なんて多種多様な視点から体験したいという人が、人気を生んだ……と怜が熱弁してたっけ。



 βテスト特典については能力差で不平等にならないようにと、装備とかを配ることはせずにテスターはもれなく専用モデリングのVRMMO端末が貰えるらしい。わたしも欲しかったけど、残念ながら外れてしまった口なのでとやかくは言えない。怜と悠は2人揃って当選してたけど……。



 さて、このゲームを始めたきっかけは元々幼馴染の楠木怜(くすのきれい)遥悠(はるかゆう)から誘われたものだった。まあ、これは建前で実は本当の理由もあるんだけどね。



 誰もが憧れたVR、ファンタジーの世界で自在に動き回り、武器を振り回して魔法を撃ち、世界を冒険出来るなんて夢物語だと思ってたけど、まさかVRとして実現されるなんて……正直RPGとかはあんまり手を出したことはなかったけど、そんなわたしですら本当に今日という日が待ち遠しかったくらいだから、昨日なんて遠足前を思い出すくらいには興奮したって人も居るはず。ちなみに、わたしはしっかりと爆睡しました。いくらなんでも、寝不足で途中寝落ちなんてことがあったら本末転倒すぎる。



 とかなんとか用意していたら、ケータイの通知音が鳴った。どれどれ……怜からか。



『よう! いよいよ始まるな! 紫江(しえ)はもうどんなキャラクリにするかは決めたか?』



 怜も楽しみで仕方がないらしい。わたし達3人の中でも一番楽しみにしてるようだったから、なんとなく察してはいたけど、まるで子供みたいなはしゃぎよう。

 怜には『まだ。アバターはリアルモジュールで行こうと思うけど、技能とかは初期設定から決めるつもり』と簡単に送っておいた。

 リアルモジュールにしても見分けはつかないだろうし、普通に考えればただの一般人である自分が住所特定されることなんてないはず。

 まず、そんなことをされるような状況になったらゲームなんて続けてらんないよ。



 悠もかなりのゲーマーだから『届いたわよ! ほら!』とか何とか言って5枚くらい別角度からの写真を添付して送ってきたりしそうだけど、言ってこないってことは多分今頃どんなキャラにするのかとか考えているんだろうな。

 ちなみに2人ともβテスターなので、わたしだけが事前に調べた攻略情報以外、何も知らない初心者プレイヤーとなる。ちょっと悔しい。



「……応募で外れただけだから仕方ないよね」



 口に出して呟いてたけど、今部屋にはわたししか居ないから虚しいだけだった。

 元より怜と悠はこてこての前線攻略スタイルだったのに、基本的にわたしは自適悠々のんびりとしたいタイプだし。

 ゲームまで急いてやりたいとは思わないわたしと、もはやゲームイコール人生と化してるあの2人とは、もはや毛色が違うから熱意で負けるのは仕方ないか。

 何せ2人とも家に居ればひたすらゲーム漬けの廃人プレイヤーだからね。



 そもそも、わたしがこのゲームを始めた理由がーー。



 って、また怜からメール?



『お前、1人で何か悩んでないだろうな……まあ、今はいい。それより、お前も先に型は決めておけよ。調べればすぐ出るから、さっさと決めておいた方が後が楽だぞ』



 相変わらず、勘だけは鋭い。頭の方は中身空っぽだけど。



 時計を見てみると、サービス開始時間は18時なのに対して、今は大体30分頃。

 まだちょっとだけ時間はあるか……どうせ開始までは待つだけだし、言われた通り、今のうちにどんな構成にするのか考えておこうかな。



 そうと決まれば、パソコンを鳴らして初期技能の検索をかけてみた。



「へー。こんなにあるんだ」



 画面にはずらっと並ぶ職業と、装備出来る武器の欄が。ずっと見てたら頭が痛くなりそうだ。

 初期職業は【ウォリアー】【メイジ】【プリースト】【アーチャー】【召喚士】【料理人】エトセトラ……。

 多すぎてちょっと見きれない。初期職業だけでこんなに作る必要があるの? 全部で20種類は軽く超えてるけど……しかも、これでまだ初期職で、これから特定条件下で分岐したりして隠しジョブが解放されるパターンもあるというのだから、合計して数百はあるってことだよね……自由度というよりも、運営の闇の方面がうっすらと見えてきた。



 まったりやってくと決めたのはいいものの、生産系はやるつもりはないので料理人以下は除外。

 必然的に戦闘系になるけど、せっかくのゲームだし魔法を使いたいから【メイジ】になることにしよう。多分怜か悠のどっちかも同じくメイジになると思うけど、パーティに一職のみって決まってるわけじゃないから別に問題はないでしょ。



 次は武器。これまたとんでもなく多い。わたしよりも、運営の方が心配になってきた。どれだけ考えたんだろう……。

 実はこのゲーム、ジョブによる武器制限がないらしい。魔法使いでも斧や大剣を持ったりも可能なんだって……誰得?

 敷き詰められるようにずらりと並ぶ武器の欄。うーん……【長剣】【大剣】【長槍】【短槍】【短剣】【短杖】【弓】他色々かぁ……特に長槍と短槍なんて、違いすらも分からないよ。長さが違ったら何があるの?



 数多の欄を流し読みしていく内に、ふと目に留まったものがあった。日本のロマン、【刀】。武器に日本刀なんてあるんだ……ちょっとかっこいいな。じゃあ、わたしは刀にしよう。



 とか思って【刀】を選んだら、更に種類が出てきてしまった。そろそろ酔いそうだ。

 ご丁寧に刀の種類で分かれていて、短刀、脇差、打刀、太刀の4種類。

 わたしが選んだのは一般的なイメージで知られている大きさの打刀。刀を選んだ理由? もちろんロマンです。



 後衛職を選んだのに刀。早速魔法使いたいとか言ってたのを否定する結果に……でも、人と違うことをやるのは楽しいから、メイジから変えるようなことはしないでおこう。



 でも下手したら地雷プレイになりそうだから、暫くはソロプレイヤーかぁ。とは言っても、怜と悠以外にパーティを組む予定はないし、ソロでなら誰にも迷惑はかけない……はず。皆がやらないようなことをやる方が面白くなりそうだからって理由だから、いつかは挫折するかもしれないけど、暫くはこれで始めよう。



「あ、もうこんな時間か」



 考えることに没頭していたせいだ、もう時間が50の数字を指していた。まあ、丁度を回ってからでないとログイン出来ないから、そこまで慌てる必要はないかな? てことで、続き続き。



「ステータスバランスの設定? ステ振りじゃないんだ……」



 どうやらよくあるMMOのステータスポイントの割り振り仕様とは違い、今後の才能としてそれぞれのステータスの才能値というものを決められるらしい。ステータスはそれぞれSTR(筋力)、INT(知力)、VIT(体力)、DEX(器用)、AGI(敏捷)、CRI(特攻)と分けられていて、才能値は0から10あり、この割り振りで貰えるポイントは10。つまりその10を全部1つのステータスにつぎ込んでしまえば俗に言う極振りになるし、満遍なく割り振ってしまえば器用貧乏になる。最も、育成の仕方によっては才能の関係なしにステータスを伸ばせるようだ。ステータスの落差があまりに大きすぎると、他のステータスは伸びにくくなるらしいけど。極振りだと、他のステータスはほぼ全くと言っていいほど伸びないらしい。だからといって器用貧乏にすれば全部のステータスの伸びが悪いみたいなので、これといった典型ステータスが強いとかいうのはないようだ。

 MMO自体あんまりやったことはないから詳しくはないんだけど、これは斬新なんじゃないかな。



 もっと悩みたいところだけど、生憎ゲーム開始まで後5分程度しかない。もう魔法職なわけだしINTに4。次は……AGIにも4にしようかな?

 すぐ死ぬのも嫌だからVITでいいかなとか思ったけど、それだと足が遅くて袋叩きになる可能性もあるし、何よりAGIが高ければ攻撃を避けられそうだしね。わたし、足癖の悪さだけは取り柄だと思ってるし。当たらなければどうってことはないのだよ。

 残りの2はDEXにつぎ込むことに。魔法職には器用も必要になるらしい。うっかりしてた。



「うん。もうこれでいいや」



 まだ技能選択とかが残ってるけど、もう時間ないし、後でいいや。そういや、性別は変えられなくて、種族とかは初期は人族しか出来ないらしいね。性別はまあ、違和感の差異が出来ないように、種族は後々ドロップアイテムやイベント報酬とかで進化出来るようになるらしい。種族ボーナスとかもあるらしいから、ぜひわたしも積極的に進化させたいところ。



「時間来た!」



 時計はジャスト59分。既に準備万端なわたしは、刻一刻とヘッドギア型の端末を手に取り……ちょっとだけ机の傍に飾ってある写真を見てから、ばふんと音を立てベッドにダイブ。ログインには、同封されていたリモコン型のスイッチを押せばいいらしい。



 時間が迫る。あと30秒。

 3……2……1……。



 スタート!

 その途端、視界の景色は吸い込まれるように変化していき、身体の感覚もなくなっていく。初めての感覚で、ちょっと面白いかも。



「ようこそ。Highrole (ハイロール)Chronicle(クロニクル)へ」



 電子ボイス特有の抑揚のない声に迎えられて、ゲームの世界へとやってきた。

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