3人の男
3人の男がいた。
1人は正直者で、世界は善意に満ちていると心から信じて疑わなかった。
もう1人は嘘つきで、自分以外はすべて不幸になったり損をすればいいと願っていた。
最後の1人は優柔不断で、何をするにも他人の意見を気にしてしまい、1人では何も出来ないかった。
ある日、3人の男は狩りに出かけた。
各自猟銃を手に、森の奥まで獲物を探してた。
草の茂みから1匹の狐が姿を現して、嘘つきの男が猟銃を放ったが当たらず、狐は逃げてしまった。
嘘つき男は優柔不断な男に向かってこう言った。
「お前はあの狐を追いかけて、もう一度俺たちの所まで連れて来い。そうすればお前に仕留めた狐の皮をやる」
優柔不断な男は渋々と狐を追いかけた。
嘘つき男は狐の皮を優柔不断な男に与えるつもりは毛頭なかったが、人間が損得感情で動くことを知っていた。
正直者の男と嘘つきの男は、彼が戻ってくるのを待ったが、いつまで経っても優柔不断な男は帰ってこない。
正直者の男は言った。
「彼は道に迷ったのかも知れない。探しに行こう」
しかし、嘘つきな男は聞き入れず、正直者の男は1人で優柔不断な男を探しに行った。
その頃、優柔不断な男は狐を追いかけてとうとう狐の巣に辿りついたのだが、そこには狐の耳と狐の尻尾をはやした人間の女が立っていた。
狐耳の女は言った。
「あなたが私の命を助けてくれるなら、私はあなたの妻になりましょう」
狐耳の女はスリットの入ったチャイナドレスを身にまとい、誰が見ても銀座のホステスのように美しかった。
優柔不断な男は狐耳の女の願いを叶え、彼女を妻にすることに決めた。
一方、2人の帰りを待ちわびていた嘘つきの男は、心細さに耐えられず、森を出た。
家に帰り観賞用の小さなサボテンに向かって、一緒に狩りに行った男2人は死んだと告げた。
するとサボテンは、
「それは仕方のないことよ。あなたが気に病む必要はないわ」
と言い、棘だらけの身体て男をそっとなでた。
そして正直者の男は携帯電話の電源が切れてしまい、マップを見るすべを失ったため、その場に留まることに決めた。
嘘つきな男と優柔不断な男が、自分を迎えに来てくれることを信じていつまでも待った。
食べ物も飲み物も持っていなかったが、彼は平気だった。暇つぶしになるような本もぷちぷちも持っていなかったが、彼は平気だった。
彼はロボットだから。