部活と謎の放送
「さて、じゃあ適当に楽しんでおいでー」
御坂先生の一言でみんなが動き出す。
泉は既に料理研究部へ向かっている。
桐野達は四人集まって適当に楽しむつもりらしい。
さて、俺はどうしようか。と思い悩んでいると桐野達から一緒に来ないかと誘われた。
断る理由はなかった。
「じゃあどうしようかー。音楽系を制覇してみる?」
「俺は何でもいい」
「芹沢がこう言ってるし、自由にさせてもらおう。芹沢も行きたいとこ出来たら言いなよ?」
桃山に気を使われた感がある。
何でもいいとは特に興味がないから、という理由ではないのだが…。
まずは合唱部。
ここでは桐野が誘われて少し参加していった。
合唱部はみんながパート毎の音に分かれて、一つの曲を作り上げる。
その中で桐野の声は楽しく歌うことを心掛けており、それは一人だけの目標である。
よって桐野の声は目立ち、合唱には向かないことがわかった。
合唱部の人も何とも言えない顔をしている。笑顔ではあったが、どこかぎこちない。
桐野も何かを感じたらしく、お邪魔しました、といってさっさと退散することにした。
つぎに、向かったのは吹奏楽。
ここでは聴くだけではあったが、緊張で包まれている雰囲気を感じた。
一人失敗すると壊れていくものである。
失敗は出来ないと、硬くなってしまっている。
見ていられなかった。
と、あちらこちら音楽系を覗いては立ち去り、中には軽音楽部などもあった。
しかし、拙く、聴けるほどのものではなかった。
「うーん、なんかあんまりだねー。やっぱりバンドっぽいものはないねー」
「ま、それは仕方ないよ。でも好き勝手に活動させてくれるし、いい学校ではあるよね」
桐野と神崎が話してる横で、畑はぼーっとしている。
桃山は俺の横にいる。
「なあ、芹沢。どこか気になるところはあったか?」
「いや、特にはないな。いくつか残念なところはあったけど」
「…よく、見てるね。音楽に興味がないわけではないんだ?」
「興味がないなら、付いてきてないだろ…っと、電話…?泉か」
泉からの着信に出る。
「もしもし?どうした、泉」
「おー、今一人か?」
「いや、桐野達といる」
「そうか!それは助かる!とりあえず部室へ来てくれ!」
と言うだけ言って電話は切れた。
「館山は何て?」
「みんなで部室へ来いとのことだ」
桐野達に説明して、料理研究部へと向かうことにした。
「失礼します。館山くんは居ますか?」
料理研究部の扉を開けて、泉を探す。
「おおー、来てくれたか!いやー、助かる助かる!」
すると、満面の笑みの泉を見つけた。
ものすごく、嫌な予感がした。
目の前にあるのは並べられた料理。それも盛り沢山。
横に見えるのは、死屍累々の桐野達。
そして泉。
俺は、これまでにない恐怖を覚えた。
そもそもこうなったのは一時間前…。
「いやー、良かった!桐野達と居てくれて!」
という泉の言葉で始まった。
「どしたのー?ってか、良い匂いだねっ!」
「確かにね。で、用は何なんだい?館山」
俺は嫌な予感がこの時点でしている。
いや、最早第六感がてんやわんやの騒ぎを起こしている。
「実はな、部長が生徒会のメンバーでさ。呼ばれて、俺だけになってしまってな?料理を作ったのはいいんだが、人が来なくてさ!料理、余りまくってるんだわ。だから昼飯がてら、食べないか?って」
という話だ。
「わっ、いいの?やったー!」
桐野達は四人共、食費が浮いて嬉しそうであるが…。
「とりあえず、持って来てみろ」
俺がそういうと
「あいよー」
と軽い返事で奥へ向かう泉。
それから五分程して料理が全て並んだ。
並べられてしまった。
「さっ、食べていいぜっ!」
「…泉。座れ。お前も食うんだ」
「…いや、あのほら俺は味はもう知ってるし、食べてく「座れ」…あ、はい」
この量を女子四人と俺で食べれるわけがない。泉を足したって無理だ。
そして暫く…時間が過ぎ…。
「この状況でまだ食べようとは思えないな」
泉すらダウンしてしまった。
しかし、まだ半分くらい残ってしまっている。
美味しいのは美味しいのだ。
…仕方ない。
なんとかするしかないな。
食べない方向で。
ーーーーーーーー
…ざわざわ。
なんか、騒がしい。
あと、お腹辺りが苦しい。
そういえば、私、ご飯食べすぎて…。
「うっ、気持ち悪い…」
目を開くと天井が見えた。
状況が、把握できない。
周りを見るとみんな寝てる…。
あれ、でも昴くんと泉くんが居ない。
…ざわざわ、ざわざわ。
隣の部屋が少し騒がしい。
隣に居るのかな?
私はソファから降りて、隣の部屋を開けてみる。
「えっ?」
そこには沢山の生徒がいた。
どういうことなんだろう。
さっきまで人が来なかったのに。
「よっ、起きたか桐野」
「泉くん!これは一体何があったの?」
「実はわからないんだよなあ…みんなが言うには放送があったらしいぞ?」
放送…?
「どんな?」
「起きたか桐野」
昴くんがこっちへ来た。
「それは昴に聞いてくれ。昴はずっと起きてたからな」
な?と泉くんが確認すると昴くんは頷いた。
「実はな…」
と昴くんは教えてくれた。
この料理を何とかしようと考えていると放送があったらしい。
女の子の声で
「皆さん、そろそろお昼です。料理研究部では一口ですが、無料でご飯をお配りしています。いくつか種類もあるので、ぜひ料理研究部へ!料理研究部へ向かう途中にはその他にも屋台が出ていたりと、楽しめるはずです!是非是非お立ち寄りください」
と流れたそうだ。
「女の子…誰なんだろう」
誰にもわからないらしい。
謎だぁーーー!




